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INTERVIEW

OMNIUM GATHERUM

2021.12.17UPDATE

2021年12月号掲載

OMNIUM GATHERUM

Member:Markus Vanhala(Gt)

Interviewer:菅谷 透

-「Fortitude」はゆったりとしたテンポながら、緻密に練られた展開が壮大なサウンドスケープを見せる楽曲です。『Hysteria』的な雰囲気も少し感じました。壮大なところがいいですね。

ありがとう! 俺はOGのアルバムの中で『Beyond』(2013年リリースの6thアルバム)が特に気に入っているから、この曲ではあのころに戻るようなマインドセットが強かったんだ。それで海の景色が浮かぶような感じになっている。『Beyond』もシーサイド・アルバムだったからね(※『Beyond』はジャケットに海が描かれている)。「Reckoning」や「Paragon」に比べて壮大な曲だね。君の言っているのは正しいよ。映画みたいな展開だしね。

-たしかに音楽的にもストーリー・ラインがあるように感じられます。

そうだね。歌詞はもっと深い意味があって、OGファミリーの一員の少年について書かれた曲なんだ。とても悩んでいる子でね。

-メンバーの息子さんということですか。

うん。それ以上は言えないけどね、個人的な話だから(苦笑)。

-その子を元気づけたり励ましたりするために書いたのでしょうか。

そうだね。名前を出しているわけではないけどね。BON JOVIの曲にはよく人の名前が出てくるけど。"トミーは港湾労働者だった"(※「Livin' On A Prayer」の歌詞)とか(笑)。

-(笑)名前は出ていなくても、その子は自分のことだって知っているんでしょうか。もう聴かせました?

本人が自分のことだと知っているかどうかも俺は知らないんだ。その子の父親は知っているけどね。メッセージ・ソングではあるけど、息子に聴かせているのかどうか。

-ご本人が知らなかったとしても、力は貰えるでしょうね。赤の他人の我々が力を貰える曲になっていますから。

そうだね。少なくともいつかはそうなると思うよ。"Origin"というタイトルの由来が強く出ている曲だね。人間の深層心理に入り込んでいくから。それからあの曲のPVも親密な感じに作ったんだ。

-民家で撮った雰囲気の作品ですね。

そう。小屋みたいな感じのところでね。

-あなたやメンバーの所有している小屋なんでしょうか。

そう、メンバーの家族が所有していて、これまでのアルバムでもリハーサルとかに使わせてもらっているんだ。スタジオ機材もあるしね。森の中の島にある小屋なんだ。周りに何もないから聖域みたいな場所だよ。ボートに乗って行くんだ。とてもパーソナルな場所で、パーソナルな内容の曲だから、PVにぴったりだと思ったんだ。

-「Tempest」は作中随一のファストな展開も見せる、非常に力強い楽曲です。この曲についてもうかがえますか?

今回最初に書いたのがこの曲だったんだ。他とちょっと雰囲気が違うのはそのせいかもしれないな。1年くらい早く書かれているからね。

-コロナ禍より前ということですね。

ああ。だからかブラック・メタル的なスピリットが入った曲になっているんだ。"Tempest(大嵐)"みたいに延々と続く。そういうストーリー・ラインもあるのは間違いないね。心の中に大きな嵐が吹き荒れている。始まりはポジティヴだけどね。

-アルバム本編を締めくくる「Solemn」は先ほどの話だとストーリーの集大成みたいな位置づけとのことでしたが、8分超の長尺曲で、メロウなフレーズや叙情的なギター・ソロなど、聴きどころの多い楽曲です。

OGの過去2作......『The Burning Cold』と『Grey Heavens』(2016年リリースの7thアルバム)のことだけど、あれはアグレッシヴなライヴ・ソングが多かったから、バンドの壮大なスピリットがちょっと薄かったような気がしていたんだ。失っていたわけじゃないけど、他のことに興味が行っていた。「Solemn」はその壮大さに本格的にカムバックしたような曲なんだ。

-わかります。

昔ながらの壮大なOGへの回帰みたいな感じだね。実は2曲目に書いたのがこれだったんだ。

-コロナ禍が始まる前でしょうか。それとも......。

始まった直後だったね。昔ながらの壮大なOGのスピリットを取り戻したいと思ったんだ。それに俺はもともと長い曲が好きだからね。曲が劇だとしたらいろいろな"幕"があるのが好きなんだ。俺は昔からIRON MAIDENの大ファンだから、「Alexander The Great」とか「Rime Of The Ancient Mariner」とかが大好きなんだ。これはそういう曲のOG的解釈だね。それから、俺自身白黒はっきりしているタイプだから曲にもメリハリがあるかもしれないな。イントロのところはラップランドの川の流れみたいなイメージがあるんだ。途中はGary Mooreみたいなスタイルになって(笑)、最後はブラック・メタル色濃く終わる。

-たしかに。

すーっとおとなしくなったかと思えばまた......という感じだね(笑)。

-もしかしてこの曲がアルバム全体の雰囲気を決定づけたのでしょうか。2番目にできた曲ということで。

それは間違いないね。アルバムの中にある様々なフィーリングが凝縮されているんだ。静かなところ、メロディックなところ、ブラック・メタル的なところ、ロックなところ......。

-『Origin』の"Origin(起源)"という感じですね。

そう、"Origin of Origin"だね(笑)。

-ボーナス・トラックはINFECTED MUSHROOMの楽曲「In Front Of Me」のカバーが収録されています。彼らは主にトランスを手掛けるユニットなので、カバーを知ったときは驚きましたが、聴いてみるとその相性の良さに改めてびっくりしました。この曲を選んだ理由を教えていただけますか?

いい曲はどんなジャンルになってもいい曲ということのいい例だね。俺もJukkaもINFECTED MUSHROOMの大ファンなんだ。俺たちはエレクトロニック・トリップ・ポップが大好きでね。MASSIVE ATTACKとかPORTISHEAD、LAMB、DISTANCEとか。中でも「In Front Of Me」は世界をエンドレスでツアーしていたころによく聴いていたんだ。歌詞もいいし、とてもディープな曲だよ。なんとなく合いそうな気がしたんだ。よくあるメタルのカバーはやりたくなかったしね。これまでもヘンなカバーをいろいろやってきたよ。RUSHのカバーをやったこともあるしね(※『Beyond』収録の「Subdivisions」)。あれもオリジナルとはまったく違う内容だった。前作はなんだっけ......SEPULTURAのカバー(「We Who Are Not As Others」)だ。あれはもう少しメタル寄りだったけどね。タイトル通り"他とは違う"ふうに、オリジナルとはまったく違う形にしたよ。カバー曲にはいつもOGらしいアプローチを入れるようにしているんだ。これもそのいい例だね。我ながらとてもいい感じに仕上がったと思うよ。

-バンドのスタイルが確立されていて、なおかつ耳の許容範囲が広いからこそ可能なカバーですよね。

そうだね。耳とハートはいつもオープンにしているよ。冒険するのが好きなんだ。

-ツアーに関してですが、フィンランド国内ツアーが終わったばかりで、パンデミックの状況が大丈夫であれば来年またアメリカに行くようですね。2022年秋にはヨーロッパのツアーも決まっています。その他話に出ている箇所はありますか。

君も言うように"もしも大丈夫であれば"だよね(苦笑)。"If"は世界中の合言葉みたいなものだよ。実際本当にたくさんのショーがキャンセルになってしまっているし、長期的なプランを立てるのが本当に難しい状況なんだ。一方で今週の土曜日(※取材は12月上旬)にフィンランド国内でギグをやることが急に決まった。それがコインの裏側だよね。決まったら急ピッチで物事が進展していくんだ。でもアジア・ツアーの話を始めてはいるよ。この10年日本にはアルバムを出すたびに行っているし、ツアーもいつもいい感じだし、アジア・ツアーは毎回楽しみなんだ。オーストラリアまで足を伸ばせるのもいいよね。ということで各国のレーベルやエージェントに相談し始めてはいる。来年の終わりくらいには実現できる状況になっているといいけどね......。

-最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

元気でいてくれ! 大変な時代だけど負けないで! 一緒に乗り越えよう。そうしたら日本に行くから、みんなでメタル・パーティーをしよう!

-あとカラオケも(笑)

行かないと(笑)! みんな、元気で。(日本語で)アリガトウ。モット酒(笑)!