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激ロック | ラウドロック ポータルサイト

INTERVIEW

luz

2021.11.09UPDATE

2021年11月号掲載

luz

Interviewer:吉羽 さおり

新たな挑戦を通して、luzの音楽への新しい入口を作りたかった


-その他、楽曲提供をしている作家がバラエティに富んでいますが、いわゆる作曲家陣ばかりでなくTHE ORAL CIGARETTESの山中拓也(Vo/Gt)さんやシドの明希(Ba)さんなど、こうした人選はどのように決まっていったんですか。

僕自身ロックが好きとはいえ、もともとは歌い手というジャンルから始まった、ネット・シーンが出身なので。ネット・シーンのアーティストだけで集めてしまうと、いくら音にこだわっても、イメージとしてそのシーンの中のものとしか見られないんじゃないかっていう。そうではなくて、ロック・シーンで活躍している拓也君やシドの明希さんなど、ちゃんと自分と繋がりや関係性がある人に曲をお願いすることでluzの音楽への新しい入口ができるんじゃないかと考えたんです。それこそ、こうして激ロックさんでお話しできるのも、そういった入口ゆえのことだと思うので。そこは新しい挑戦としてありました。

-ネット・シーンとロック・シーンでは、何か隔たりのようなものがあるとも感じているんですか。

隔たりというよりも、やはり客層やファン層自体が違うと思うので。もちろんみなさん、ロック・バンドでもネット・シーンのものでも、いろんな音楽を聴いたりするとは思うんですけど、名前は聞いたことがあるけど、そこから実際にライヴに足を運ぶというところまでなかなかいかないのもあると思うし。実際、ネット・シーンはネット・シーンで偏見を持たれやすいところがあると感じていて。素人がやっている、とか。でも僕の友人のアーティストでも、歌がとても上手でライヴもかっこいいアーティストはたくさんいるので。そういった偏見もなくせるようにはしたいなと。今回も、例えばロックやバンドが好きな人が初めて聴いたときに、"めちゃくちゃいいじゃん、これ誰なんだろう。あぁ、歌ってみたとかもやってるんだ"くらいの感じでいいなと思って。

-先入観なしに、いいものはいいと聴いてもらえるのが一番いい形ですね。山中さんとは付き合いは長いんですか。

拓也君と知り合ったきっかけが、元SuGの武瑠(sleepyhead)君経由だったんです。僕の1stワンマンに、武瑠君がアリス九號.のヒロト(Gt)さん経由で観に来てくれて。それをきっかけに武瑠君とは一度、お仕事をさせていただいたんです。で、3~4年前の武瑠君の誕生日会だったかな。そこで拓也君とも知り合って、3人でお寿司食べて(笑)。武瑠君自身気さくでいい人で、且つアーティスティックなこだわりがあるかっこいい人ですけど、その友達なら絶対いい人だろうなっていうのもあったし、実際会ったらすごくいい人で。

-THE ORAL CIGARETTESというバンドの存在については。

もちろん、すごくかっこいいなと思って聴いていました。実際に曲をお願いしたときに、拓也君が"リファレンスとしてはどういう感じ?"っていうので、ライヴハウスでもアリーナでもどちらでも映えるシンガロング系の曲で、スケール感が大きいものだと嬉しいっていう話をしたんです。初めて拓也君とご一緒することもあって、あまり細かいオーダーをしてしまうと、拓也君の良さがなくなってしまうと感じて、ざっくりとしたオーダーでお任せしたいなって思ったんです。それで、拓也君が僕に曲を書くならどういう曲を届けてくれるんだろうって考えていたら、想像以上にめちゃくちゃかっこいい曲が上がってきて。それが「SPIDER」です。

-サウンドがスリリングに展開をしていく濃い曲になりましたよね。luzさんの世界観を大事にしながらも、THE ORAL CIGARETTESらしさも出ていて。

そうなんですよね。しかも面白いのが、拓也君が歌ってるのが想像つくというか(笑)。拓也君ならではのメロディですよね。デモがきた時点でかっこいい! と思って。

-そういう曲をluzとしてどう乗りこなしていくか、ですね。

今思い出したんですけど、レコーディング、めちゃくちゃ苦労したんですよ(笑)。音域も含めて、普段歌わない曲調ではあったので。アクセントのつけ方が難しくて、大変だったのを覚えています。でもこれはライヴで演奏してすごく盛り上がるだろうなというものになりました。

-シドの明希さんの曲が「Void」です。歌詞は明希さんとluzさんの共作になっていますね。

そうですね。これも、明希さんの曲で好きなものをいくつかリファレンスをまとめてお願いをして。わかった、こういう感じねって、めちゃくちゃ明希さんらしいかっこいいサウンドを届けてくれたのは嬉しかったですね。歌詞は、人間の二面性をテーマにしていて。"Void"という言葉自体、虚像とか空虚なものという意味合いがあるんですけど、人間誰しも二面性というのはあると思うので、それをメイン・テーマとして作詞をして。明希さんにいろんなワードのアドバイスを貰いながら共作したものなんです。なんか夢みたいですよね。僕自身、中学生のときにシドをめちゃくちゃ聴いていたので。大好きな曲を作っていた明希さんと一緒にお仕事ができて、こうして一緒に曲を作れて。音楽やっていて良かったなって思いましたね。

-また「Rose」でのタッチとも近いかなっていうのが、すりぃさんの「ダーリン・ブルー」ですね。こういうジャジーな雰囲気、且つダーク・メルヘン的なテイストは、luzさんの好きな感じでもあるんですか。

ファンの方が持っているイメージは、こういうジャジーなものやエレクトロ系のイメージが強いのかなって思います。そういう曲が逆に、今回のロック色の強いアルバムの中でいいアクセントになるかなって。すりぃさんも、yasuさんのことがすごい好きなんですよ。

-共通項がありましたか。

打ち合わせのときに言われました。"っていうか、yasuさん好きですよね?"と(笑)。だったらもう簡単ですね、お互いに好きなものやりましょうっていうことになりまして。ただ普段だったらもっとジャジーにいくところを、今回のアルバムではもうちょっとダークな感じにも寄せてくれたイメージですね。

-そのダークさに惹かれる感じは、自分自身のどんな琴線に触れるものなんでしょう。

ドラマでも映画でもアニメでも、バッド・エンドが好きなんですよね。ただ単にハッピー・エンドよりは、どうしても救われないとか、結ばれないとか。でもその中に美しさがあるものが好きなんです。

-歌や歌詞を書くときも、そういうものが自ずと染み込んでいる感覚ですか。

それはあるかもしれないですね。ただ難しいんですけど、僕の中で線引きがあって、"ザ・中二"みたいなのにはいきたくないんです。その中にもお洒落さとかきれいさが欲しいんですよね。普通の人から見たら、これも中二なのかもしれないですけど(笑)。でもちゃんと自分ではこだわりがあるんです。普通の人が見ても理解できる内容でポップ性があるものとか。そこは意識しているところですね。

-アルバムの最後の曲でも絶望を歌っていますが──

まさにタイトルが"Despair"、絶望ですからね。

-でも、この「Despair」は決して絶望だけではない、とても大きなもの、愛や幸福感も感じる着地をしていますね。

これは、堀江さんと最後の最後までどうしようかと話し合った曲でした。最後は堀江さん自身が、"アルバムに足りないパーツとしてひとつやりたいことがあるから、任せてもらってもいい?"っていうことだったので、お任せしたんです。僕が伝えたのはライヴで、アンコールやラストで締まるような曲っていうことで。そしたら、堀江さんがじゃあ僕の中でイメージがあるからっていうので、できあがったのがこの曲だったんです。めちゃくちゃいい曲だなって思って。

-重厚なコーラスや、メロディの高揚感もそういったイメージなんでしょうね。

そうですね。最初にデモを聴いた瞬間に心を掴まれて。今まで僕が歌ってきたジャンルではないのに、僕が歌っている想像もできるし。不思議な感覚を覚えて。

-サウンドも、歌詞の世界もそこまでの12曲をまとめ上げるようなアンセム感で、ダークな香りのする曲たちをも美しく昇華する感覚です。

アルバムを通して起承転結ができている感じがありますね。

-いろんなタイプの曲がありましたが、制作をしていてこれは特に印象的だったなという曲はありますか。

全部の曲が印象深いんですけど......「棘」は、僕が人生で2曲目に作曲をした曲で。シングル『Rose』のカップリングに収録したバージョンは、ケンカイヨシさんがアレンジしてくれて、歌謡曲っぽいアレンジだったんです。中森明菜さんとか、90年代をイメージした感じで、その世代の方が聴いたらめちゃくちゃグッとくるようなアレンジで。今回、アルバムに収録するに当たって、これをロック・アレンジにしてみたらどうだろうって言って。

-アルバム・バージョンは、ど派手なロックですね。

アレンジってこんなにも印象を変えるものなんだなって思いました。メロディも歌も変わっていないのに。ふたつ並べて聴いたら、全然別の曲だなっていうくらいで面白かったですね。

-このアルバムの制作を通して、表現するという面でもより鍛えられた感がありそうですがいかがですか。

まだ実際にライヴで演奏してないんですけど、ライヴでやるのムズいだろうなっていう(笑)。そういう楽曲が多いですね。でも、完成した達成感はすごくありました。

-ネット・シーン、ロック・シーンの話じゃないですが、このアルバムができたからこそ、よりいろんな人に見てもらいたいという欲が出てきますね。対バンなどもさらに可能性が広がりそうですし。

それこそ、THE ORAL CIGARETTESとかと何かでご一緒できたら嬉しいし、シドと一緒にやれたら泣きながら歌うかもしれない(笑)。対バン自体、あまり機会がないのでやってみたいですね。あとは、今までとは違った演出もできるだろうから。そういったものも含めて注目していただけたら嬉しいなと思います。

-12月にはアルバムを引っ提げた全国7都市のツアー"luz 6th TOUR -FAITH-"の開催が発表になりましたが、どんなライヴになりそうですか。

楽曲自体は全部やるつもりですけど、ステージにもさらにこだわりたいなと思っているので。今回の世界観を重視したステージにしたいなと思っています。

-ここからのluzの活動として思い描いていることはありますか。

新しい展開でいろんなチャレンジをしているので、この新しいチャレンジからいろんなものに繋げていって、もっとたくさんの人にluzを知ってもらうきっかけを多く作れたらなと思います。もちろんずっと聴いてくれている人にも感謝を込めて、でも応援してもらっているところだけでは終わらせたくないっていうか。この人を応援していて良かったって思えるような舞台にも連れていってあげたい。