INTERVIEW
Amiliyah
2021.05.18UPDATE
2021年05月号掲載
Member:kimi(Vo) Wester(Ba) Eschika(Vn) Moel(Vn)
Interviewer:杉江 由紀
光の国の姫であるkimi、4体の音楽的才能を持ったモンスター、そしてヴァイオリンを操る2体のエルフによって構成される集団、それがこのAmiliyahだ。なんでも、Amiliyahは願いごとが叶うという神様からの"徴(しるし)"と呼ばれる何かを探しているそうで、目下その旅は続いているのだとか。なお、2019年よりEschikaとMoelが参加したことでツイン・ヴァイオリンを擁することになったのを受け、このたびは各曲を"adding violins"バージョンとしてリレコーディングし、ベスト盤『Amiliyah Best Your Selection adding violins』としてここに発表することに。寓話と荘厳な音像が交錯する奥深き世界はとても魅惑的だ。
-お久しぶりです。どうやら、しばらくお会いしていなかったうちにAmiliyahではいろいろな変化があったそうですね。
kimi:実は、前回こちらで4thアルバム『Departure』(2018年リリース)のインタビューをしていただいたときに一緒にお話をさせていただいた吸血鬼のギタリスト Ambiiが、そのあとに病気で離脱することになって現在はお休み中なんです。
Wester:だが、我々としてはAmbiiが元気になったときにいつでも戻ってこられる場所というのもちゃんと残しておきたいからな。本来、Amiliyahではツイン・ギターの音を軸として曲を作ってきたわけなんだけれども、ギターが7弦のGacciだけになったぶん、ほかの楽器で上手く補完していきたいというところから、2019年にAmiliyahでは新たにヴァイオリンを弾くエルフを2体迎えることになったのだ。
-それが、EschikaさんとMoelさんなのですね。
Eschika:はじめまして!
Moel:よろしくお願いします!
-それにしてもですよ。バンドにツイン・ヴァイオリンが加わったこの現体制というのは、世界的に見ても相当珍しいのではないでしょうか。
Eschika:バンドにひとりヴァイオリニストがいる、というケースはそこまで珍しくないと思うんだけれども、たしかにツイン・ヴァイオリンというのはあたしが知る限りでは今まで聞いたことがないわね。
-そもそも、EschikaさんとMoelさんがAmiliyahに加入される経緯とはどのようなものだったのでしょう。Amiliyahとエルフの両名はどのように出会われたのです?
Wester:もちろん出会ったのは森の中だ。光の国と闇の国、その間にある森だな。
kimi:そこは"恐ろしの森"と呼ばれていまして、人間界とも通じている場所なのですが、例のごとく私が道に迷ってしまっていたら、罠にかかって足をケガしてしまったんですね。そこにたまたま通りがかってくれたのがMoelだったんですよ。Moelは宝石の谷のエルフで不思議な力があって、その宝石の力で私のケガを治してくれたんです。
Moel:そのとき、姫とはたくさんおしゃべりしたんだよねー。
kimi:ええ、Moelとのお喋りが弾んでしまって、とっぷりと日が暮れてしまっていたんです。そのうち、周りからはカサカサと音が聴こえ、気づいたらオオカミに囲まれていて......。襲われそうになっていたところを、エルフの戦士であるEschikaが矢を射って助けてくれたんです。そして、いきなり怒られました(苦笑)。
Eschika:あたりまえだ。"こんな時間にこんなところで何をやってるんだ!"と怒るに決まっているじゃないか、まったく。
kimi:うふふ、ごめんなさい。あのときはありがとう。あぁ、そうそう! MoelとEschikaはもともと姉妹のように生活をしている間柄なんですよね。
Moel:本当の姉妹ではないんですけど、私も前に"恐ろしの森"で迷っていたことがあってEschika姉さんに見つけてもらったんです。それ以来、一緒に暮らしています。
Wester:Moelは宝石の谷から逃げ出して森で迷ったそうだ。
kimi:そして、Eschika自身も出生した村の男尊女卑が酷くて戦士になりたいという希望を叶えるために村を離れ、追手から逃れたという過去を持っています。
-だとすると。戦士を志し、戦士になられたEschikaさんがヴァイオリンを弾かれるようになったきっかけはなんだったのです?
Eschika:故郷の村にも人間界でいうところのヴァイオリンによく似た楽器があったし、村ではその楽器の音が言語のように交わされていたので、きっかけも何もあたしにとって弦楽器を弾くことは普通のことなのでそのまま続けているだけ。ヴァイオリンの弓というのは武器の弓の原形でもあるので、戦士のあたしからすれば馴染み深いものなんだよ。
-なるほど、そういうことでしたか。では、Moelさんはいつどのように弦楽器を始められたのでしょう。
Moel:私のいた宝石の谷にも、ピロピロ~ってヴァイオリンによく似た楽器を弾いていたエルフがいたので、面白そうだなと思ってちっちゃい頃にちょっとだけ触らせてもらったことがあったけど、きちんと習ったのは姉さんからなんだよ。
Eschika:一緒に棲むようになってからあたしが教えました。というか、仕込んだ(笑)?
Moel:姉さんに教わるのはとっても楽しかったです。"えーっ! こうやって弾くとこんな音が出るの!?"って、驚きや発見がいっぱいあったよー。
Wester:つまり、EschikaとMoelはツイン・ヴァイオリンとしてはまたとない組み合わせのエルフたちなのだよ。姫が"恐ろしの森"で迷ったのが発端となって(笑)、彼女たちがAmiliyahに加わり共に旅をすることになったわけだ。
-結果、Amiliyahはkimi姫、4体のモンスター、2体のエルフで計7名編成の大所帯になられたわけですね。
Wester:にぎやかでいいだろう? ちなみに、我々は2019年に5thアルバム『Beyond the sea』という現体制初のアルバムを発表しているのだが、今回は既存曲たちにツイン・ヴァイオリンの音をプラスしたベスト盤として、『Amiliyah Best Your Selection adding violins』を新たに出すことになったのだ。というのも、ショーでは過去の曲を今の体制で演奏しているわけだからな。そのことを踏まえて、今回は過去4枚のアルバムからショーでよく演奏する曲たちを中心にベストとして構成し、EschikaとMoelの音を加えながらリレコーディングしたというわけなんだ。
kimi:民(※ファン)たちからの要望に応えた、という面もあるんです。過去の曲を今のAmiliyahの音で聴きたいという声は多かったですし、ベスト自体が欲しいという声も以前からあったので、今回はその両方をここで実現しました。
Wester:森の民たちの願いを叶えるという意味では、選曲も徹底しているぞ。今回のベストは民たちから募ったアンケートの順位順に11曲を収録しておる。なぜ11曲かというと、前提としてはベスト10なのだが同票のものもあったのでそれで11曲なのだ。
-なお、前作『Beyond the sea』からAmiliyahはギター、キーボード、ヴァイオリン2本が中音域で密な接戦を繰り広げるようになられたということですが、そうした音作りの変化はAmiliyahにいかなる変化を及ぼしたことになるのでしょうか。
Wester:中音域が厚くなったことで、メロディの洪水が生まれたな(笑)。
-ただし、それでも前作『Beyond the sea』はあくまで現体制としてイチからの曲作りをしていったわけですよね。その点、今回の『Amiliyah Best Your Selection adding violins』はまさにタイトル通り、本来であればヴァイオリンの入っていない状態で完成している楽曲に、さらにヴァイオリンの音を2本も"adding"されていったわけではないですか。これは洪水を凌ぐ、大洪水を生み出していくことになったのかもしれませんね。
Eschika:いやー。もうねぇ。すでに完成されている曲たちに、何を加えたらさらに進化させられるだろうか? っていうことを考えるのが本当に難しくて。単にヴァイオリンの音を足せばいいや、ということではないし。そういう考え方ってあたしはキライなの。あたしたちがヴァイオリンを入れることで、Amiliyahの音がもっと良くなった! と民たちに喜んでもらえなければ意味がないでしょう? "ヴァイオリンが余計なのでは"と民たちから思われないように、という点についてはかなり試行錯誤したね。
Wester:蛇足になってしまってはいかんからなぁ。
Eschika:でも、絶対どこかにはあたしたちの入れる隙間があるはずだと信じていたのでね。戦士として闘いを挑むうえでも、ある一点にしか敵を倒すポイントがないという場面はたまにあるし、逆に言えばその一点さえ射ることができれば必ず勝てるということなので、あたしはそこを見つけていくようなイメージで音を入れていったわけ。それがとにかく大変だった(苦笑)。だけど、やっていくうちにレベルの高いゲームをクリアしていくみたいな感じで楽しくなってきたところもすごくあって。完成させられたときは達成感があったし、これまで民たちの大切にしてきたAmiliyahの歴史にあたしたちも少し加わることができたのかな、という気持ちも持つことができたよ。
-今回のレコーディングでAmiliyahの歴史を追体験することができたのですね。
Eschika:そうそう! みんなしか知らないAmiliyahの歴史を、あたしたちもここで一緒に共感することができた感じがしたの。苦労はしたけど、それがとても嬉しかったし面白かった。たとえるなら、Amiliyahのこれまでを収めた写真アルバムの中の端っこに、あたしたちも載れたかな? っていう感じかな。