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INTERVIEW

YOU(足立祐二)

2020.03.17UPDATE

2020年04月号掲載

YOU(足立祐二)

Interviewer:杉江 由紀

繊細でいて深く芳醇なこの味わいは、実に極上だ。偉大なるギター・レジェンドのYOU(足立祐二)と言えば、DEAD ENDのギタリストしてのキャリアが筆頭に挙がってくることにはなるが、それでいて彼がこのたび完成させたのは、エレクトリック・ギターとアコースティック・ギターの2本で織り上げた、その名も"YOUCOUSTIC"なるインストゥルメンタル・アルバムとなる。激ロック・ユーザーからすれば、アコースティックな音像はあまり馴染み深いものではないのかもしれない。だがしかし、音楽としての完成度とその上質さ、今作の背景としてYOU自身が描いた物語性をそこに感じたときには、誰もが間違いなく驚嘆できることだろう。


前作を出した頃には、次はアコースティックでやるって決めてました


-前作『ANDROMEDIA』以来、このたびはアルバム『YOUCOUSTIC』がちょうど1年ぶりに発表となりました。昨年のインタビュー(※2019年3月号掲載)では、"毎日もはや日課みたいなものとして曲作りしている"とおっしゃっていましたので、おそらく今作にはその成果がたくさん詰め込まれたことになるのでしょうね。

前回のアルバムで取材をしていただいたときには、すでに今作に向けての曲作りは始まってました。今回レコーディングしたのは、特典CD用や配信限定用に録ったものも含めると全16曲ですけど、日々ずっと作り続けてきていたので、トータルでは45曲の中から選んだことになりますね。

-当選確率としては3分の1ですか...!

3分の2は落選しちゃいました(笑)。自分としてはどれを選んでも構わないというクオリティで作っているんですが、大半は墓場フォルダ行きになってしまうんです。

-そこからの敗者復活はあり得るのでしょうか。

いや。一応フォルダには入れているものの、そこからもまたさらに曲作りを続けていくことになるわけなので。仮に引っ張り出してみたとしても、やっぱり新しいもののほうが"より新鮮な今の自分"がよく出ていて、いいなと感じてしまうんですよ。

-今作『YOUCOUSTIC』は、それだけ鮮度の高い音だけで構成されたものであるわけですね。そして、このアルバムはタイトルからしてアコースティック要素が強いことを窺えるものとなっております。こちらは造語ということになりますでしょうか。

完全に造語です(笑)。今回はアコースティックとエレキの両方を使ったアルバムになっていて、これはもともと僕がやってきたライヴから派生した作品でもあるんですよ。僕は10年くらい前から、アコースティック・ギターをバックにエレキで弾くということを始めて、ここまでやってきているんですけど、全曲そういうスタイルでやるパターンっていうのは他になかなかないものだし、それをちゃんとアルバムとして形にしてみたかったんです。

-今作にアコースティック・ギターで参加されている嘉多山 信さんとは、もともとどのように出会われたのですか?

僕はギタリストなので、ドラマーとかベーシスト、キーボーディストに対しては常に目を光らせてきたところがあるんです。やっぱり一緒にやるなら上手い人とやりたいですから。ただ、ギタリストに関しては、友人はたくさんいても、一緒にやろうという視線で見ること自体がまずなかったので、当初はアコースティックとエレキの両方を使った曲をいくつも作ったはいいんですが、"これを誰が一緒に演奏してくれるやろう?"ということまではまったく見えていなかったですね。結局そこから2年間かけて出会ったのが嘉多山君だったんです。彼は河村隆一君の現場でリズム・ギターを弾いていた人で、僕はそこでメロディ主体でギターを弾いていたんですよ。

-なるほど、あの方だったのですか。

嘉多山君はもちろんエレキも上手いんですけど、とにかくアコギを弾いたときの音色が抜群でねぇ。しかも、彼は人柄も素敵な人なので、もう"彼しかいない!"と思って"実は今、アコースティックとエレキでライヴをやってみたいと考えてる"ということをまずは伝えて、その時点で20曲くらいデモがあったので、それを聴いてもらいました。そうしたら彼もやりたいと言ってくれてユニットを組むことになったんです。最初はイベントのゲストとかで2、3曲やるとか、そんな感じから始めていったんですよ。そのうちどんどんやる曲も増えていって、ついにはフル・ステージでやるようになって、気がついたら50曲くらいレパートリーが増えてました。

-プレス向けの資料にはわかりやすいように『YOUCOUSTIC』について、"キャリア初のアコースティック・アルバム"という文言が記されておりますが、YOUさんからすれば今作は、長きにわたる準備と10年かけての構想を具現化されたものになるのですね。

うん、そうなんです。前作の『ANDROMEDIA』を出した頃には、次はアコースティックでやるって決めてました。

-だとすると、YOUさんにとってアコースティック・ギターという楽器の持つ魅力とは、どんなところにあるのかということもぜひ教えていただきたいです。

実を言うと僕自身は全然アコースティック・ギターって弾かないんですよ。なぜかというと、嘉多山君があまりにもすごいから(笑)。そのすごいのをいつも間近で見ているのでね。だから、僕は完全にエレキに専念してるんです。ただ、頭の中ではしょっちゅうアコースティック・ギターの音が鳴ってますね。プレイしているのは嘉多山君で、それと一緒にエレキでメロディを弾いている僕の姿もある感じというか。頭の中では鳴らせても、ほんとアコースティック・ギターの音色を僕が自分で再現するのは難しい(苦笑)。

-そもそも、エレクトリック・ギターとアコースティック・ギターは似て非なるものであるという話は、方々でもよくお聞きします。

アコースティック・ギターは生楽器ですから、本体の出す音がどんなものかというのもあるんでしょうけどね。でも、いい楽器か普通の楽器かというようなことではなく、弾き手の指から紡ぎ出される音の善し悪しというのが、最も聴いたときの印象を左右すると僕は思うんです。そこはある意味エレキでもドラムでもバイオリンでも一緒で、楽器の性能以上に人的なパワーは絶大なんですよ。つまり、嘉多山君が弾くとたとえ1万8千円のギターでもしっかりいい音が鳴るんです。

-弘法筆を選ばずということわざは本当なのですね。

ほんとそうなんですよ。今回のアルバムでも彼はきれいに歌うようなバッキングを丁寧にしてくれてます。