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INTERVIEW

YOU(足立祐二)

2019.03.12UPDATE

2019年03月号掲載

YOU(足立祐二)

メンバー:YOU

インタビュアー:杉江 由紀

偉大なるギター・レジェンドの描く壮大なサウンド・ストーリーがここに完成。日本のヘヴィ・シーン黎明期において多大なる功績を挙げたDEAD ENDのギタリスト YOU(足立祐二)は、卓越した技術とセンスを持ったスーパー・ギタリストだ。近年は河村隆一などのツアー・サポートにも参加する傍ら、ソロ・ワークスもコンスタントに行ってきており、このたびは約6年ぶりとなるインストゥルメンタル・アルバム『ANDROMEDIA』が発表されることに。数多くの現役ミュージシャンからも崇拝されているベテラン中のベテランでありながら、常にストイック且つ貪欲な姿勢で音楽と向き合い続けているYOUだからこそ創造し得る、奥深く鮮烈な音世界に心酔すべし。

-このたびは、約6年ぶりとなるギター・インストゥルメンタルによるソロ・アルバム『ANDROMEDIA』がついに完成しましたけれども、YOUさんはこれまで1990年に1stアルバム『Psychical island』、2005年に2ndアルバム『You's Alien』、そして2013年に3rdアルバム『Maniac Love Station』とコンスタントに作品を発表されてきております。今作はそれらからの流れを継承したもの、と考えてもよろしいでしょうか。

実を言うと、楽曲同士の繋がりというのはそんなにないんですけどね。ただ、ジャケットとかアートワークの面では『You's Alien』、『Maniac Love Station』、今回の『ANDROMEDIA』の3枚が3部作になっているんですよ。『You's Alien』のときには、宇宙船がカプセルから飛び出して旅を始めるところがジャケットに描いてあったんです。そこから、前作の『Maniac Love Station』はちょうど旅の途中を描いていたかたちになっていたので、つまりは今回が最終形態ということになります。長い旅を経て、ようやく"ANDROMEDIA"という惑星に到着したということを表しているんです。ちなみに、宇宙船の名前はマザー・シップ"Maniac Love Station"です(笑)。

-壮大な物語が感じられますね。宇宙船"Maniac Love Station"のデザインがギターを思わせるものとなっているあたりが実に象徴的ですが、ギタリスト YOUさんとしては楽曲を作っていく際にもスケール感を重視されていたことになりますか?

それはやはりありました。完全に連動しているのはジャケットのデザインだけで、ひとつひとつの楽曲が関連性を持っているわけではないとはいえ、ひとつひとつの楽曲について考えていくときにはそれぞれにスケール感を持たせていきたい、ということは考えていましたね。今回のアルバムには、ここ4~5年の間に作ってきた曲たちが50曲くらいあった中から選んだものを入れてあります。

-曲作りは常に習慣的なかたちでされている、ということなのですね。

もはや日課みたいなものですね。朝、僕は起きてうがいと歯磨きをしたらまずはコンピュータを起動して曲作りを始めるんですよ。自分の中での取り決めとして、"今日は何も浮かばなかったな"という日はなるべく作らないようにしているんです。毎日、何かしらのアイディアはストックしていくようにしています。

-いやはや、徹底したストイックさに驚きを隠せません。

僕、もうこの20年以上テレビとか観ていないですしね。本も読みませんので、要は視覚の面でも聴覚の面でも外部からの影響を得ようとは思っていないんですよ。世の中のことが全然わからないと言えばわからないんですけど、わからない方が楽だったりもするんです。例えば、仕事が終わってビールでも飲みながらテレビを観てゴロゴロしようかなという時間が、僕の生活の中には一切ないんです。とにかく曲を作っている時間が自分にとっては何より楽しくて。仮に、曲を書いていて疲れたら"じゃあ、違う曲を作ろう"ってなりますし。そうすると気分も変わって、また新鮮な気持ちで曲作りをすることができるんですよ。

-いかなるときも生産的でいられる、というのは理想的ですね。

"生み出す"というのは自分にとって非常に重要ですね。肩書きとしては一応ギター弾きということになるんですが、僕が普段やっていることは作家に近いです。そして、ギターでは曲を書かないというのも僕にとっての取り決めのひとつですね。

-YOUさんといえば凄腕ベテラン・ギタリストというイメージが強くありますので、そのYOUさんがあえて曲作りにギターを使われないというのはなかなか意外です。

ギターってスケールが結構限られた楽器なんですよ。それはピアノにもある程度は言えることですけど、特にギターは閉鎖的な楽器で人によってはプレイしやすい指グセとかもありますし、ロック・ギタリストが使うキーも限定されやすかったりするので、どうしても何曲も作っていると似てきてしまうという事態に陥りやすいんです。自分の発想をギターのスケールの中だけに収めようとすると、無理が出てきてしまうんですよ。

-ギタリストとしての神業を持つYOUさんから、まさかそのようなお言葉が出てくるとは......。とても勉強になります。

曲作りという点に関しては、ギターを使わずに頭の中だけで思い浮かべて作った方が絶対に自由ですよ。キーが限定されないことによって、ギタリストとしての観点に縛られていたら作れない曲を生み出すことができるんです。曲を思いついた時点ですでにドラムとベースは鳴っているので、そこからはアコースティック・ギターの音源と鍵盤を使ってコンピュータでプログラムしていくやり方をしています。だから、その時点では実際にそれをギターで弾けるかどうかというのは、自分でもわかっていないですね(笑)。そして、できあがった曲を十分に聴き直してみて納得がいかない場合は"これは使えない"と判断することも結構あるんです。それはすぐ、墓場という意味の"cemetery"というフォルダに入れてしまいます。その中には今40曲以上が眠ってますね。断片的なアイディアとか、作りかけのものも入れたら150くらいあるかな(笑)。

-今作『ANDROMEDIA』には選抜メンバーだけが詰め込まれていることになるわけですね。なんでも、CD版は全12曲収録とのことですが、配信限定のデラックス・バージョンはさらに「DUEL」と「ROCK 'N' ROLL RAIN」の2曲が追加され全14曲の仕様になっているのだとか。

当初、アルバムとしては10曲ちょっとかなと思っていたんですよ。でも、もともと多めには録っていたのもあって、せっかくの機会ですし配信の方は少し曲を増やすことになったんです。

-そして、今作についてはレコーディングの形式もこだわりを感じるものとなっております。ベースにはGERARDなどで活躍する長谷川 淳さん、またドラマーとしてはTHE YELLOW MONKEYのANNIEこと菊地英二さんが参加されていて、YOUさんも含めていわゆる3ピースで音を奏でていかれたそうで。

トリオで録ることにしたのは、普段この3人でライヴをやっているからです。普通、インストゥルメンタルのアルバムを作るとなるとキーボードが入ってきたり、リズム・ギターを入れたりと、音の厚みを出すためにいろいろなメンバーを入れることもあると思うんですが、僕の作品に関してはそこまで音を詰め込まなくとも、そこに生まれる空間は空間として生かすようにしているんです。ギターが2本いるロック・バンドでも、ひとりがソロを弾いているときに、もう片方がバッキングをしているという例はよくありますよね。たしかに、後ろで鳴っているコードがなくなると薄く感じてしまうケースはあるのかもしれないですけど、僕は逆にその薄い感じが好きなんですよ。

-ラーメンで言えば濃厚豚骨スープではなく、これは鶏系の澄んだ滋味深いスープの如きサウンドということなのかもしれません。そこは達人が揃っているからこそでもあるのでしょうし、音の隙間を自由に使える3ピースはきっと利点が多いのでしょうね。

そうそう、シンプルなのがいいんですよ。この10年くらいDEAD END以外でずっと一緒にやっている3人ですし。結局、歪んだリズム・ギターとか重厚感のあるオルガンが鳴っていると"うるさいねん、そこは空けといてや"となってしまうので(笑)、最初から今回のレコーディングはこの3人でやるって決めてました。

-では、いちギタリストとして今作『ANDROMEDIA』の中でプレイをしていく際にYOUさんが重視されたのはどのようなことでしたか。

一般論で言うと、Eのコードで始まってEで終わると聴く側も安心しやすいというところはあるんですけど、そこも僕は自分の中での取り決めで、Eマイナーで終わる曲ならEマイナーで始めない、というのがひとつのセオリーになっていますね。それと同時に、曲全体に関してはどれもデモの段階ですでに構築してあるので、ソロだけは自由にやるようにしているんですよ。大体アドリブで2、3回くらい弾いて、間違えない限りはそのデモで弾いたフレーズを本番のレコーディングでコピーするんです。あと、ギターに関しては今でもめちゃくちゃ練習をしてます。なんなら、今が一番これまでの自分の人生の中でギターの練習をしている時期に当たるような気がしますね(笑)。

-そこもストイックでいらっしゃるとは......。YOUさんほどのギタリストが今も"めちゃくちゃ"練習をされているとなると、もう誰も追いつけませんよ。

やっぱり僕も得意な運指とか指グセがあるので、これまではそれについ頼っていたところがあったんですよ。そのぶん、苦手なものは敬遠してしまいがちなところがあったんです。というか、ギターを始めたころは、意図的に自分の得意な3つのスタイルをまずはとことん究めようとしていたところもあったかな。結果、未だに苦手だと感じるフレーズがあるので、ここに来てそれも"なんとかしたい"と思ったんですよね。それこそ、曲作りのときには頭の中でギターのフレットにとらわれず自由に発想しているのに、それを実際に弾いてみたら"運指的に難しいなぁ"となって、そのままcemeteryフォルダ行きになってしまった曲も過去にはありましたからね。それはどう考えても馬鹿げたことだなと感じるようになって、それまでは練習ってそんなにしてなかったんですけど、このところの僕は得意/不得意をなくしたいから練習しよう、というふうになったんです。

-なるほど、そういうことでしたか。

ギター自体はこれまでも1日10時間くらい弾いていたんですけどね。その中で意図的に苦手なことを集中的にやって練習する、という姿勢を持つようにしたんです。そうしたら、年齢に関係なく望んでいる方向に近づいていくことができるんだな、ということをちゃんと実感できるようになってきました。

-とても素晴らしいお話ですね。何に対しても"今からじゃ遅いか......"と諦めがちになってしまうことがあるだけに、YOUさんのことを見習いたいです。

しかも、できなかったことができるようになってくると、ギターを弾くのがより楽しくなってきますからね。最近は、練習が楽しくて練習をいっぱいしてます(笑)。それに、練習しないと衰えていってしまうんですよ。

-プロのピアニストの方が"1日練習しないだけでも衰える"とおっしゃっているのを聞いたことがあるのですけれど、ギタリストもそうなのですね。

1日やらない日があったとすると、その次に練習をするときは最初の1時間半って"前までの状態に戻すため"だけの時間になってしまうんですよ。1時間半やってやっと指が動くようになってきて、そこからの2時間以降が、ようやく上積み分のプラス・アルファになっていくことになるんです。だから、毎日やることが必要なんですよ。