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INTERVIEW

YOU(足立祐二)

2019.03.12UPDATE

2019年03月号掲載

YOU(足立祐二)

Member:YOU

Interviewer:杉江 由紀

僕はギター以上に好きになったものがひとつもない


-ここであえてうかがいたいのですが、それだけ散々ギターを弾かれていて、ギターに飽きてしまったことはございませんか。

幸い、僕はギター以上に好きになったものがひとつもないのでそれはないです(笑)。

-名言をありがとうございます(笑)。ところで、今作『ANDROMEDIA』には「MAGICAL ARMS EPISODE 1」から始まる3曲で構成されている組曲が収録されておりますが、こちらはどんなところから想起されたものだったのでしょうか。

これはどの曲にも言えることなんですが、僕はいつもタイトルから先に決めていくんですよ。タイトルを決めたら、絵は下手ですけど4コマ漫画のような絵コンテをつけて、それに対して音楽をつけていくんです。この"MAGICAL ARMS"シリーズの場合は、MAGICAL ARMS号という乗り物に乗って人体の中を探検するというイメージが最初に浮かんだので、そこから曲を作っていきました。

-まるで映画や小説を作っていくような感じなのですね。

そうやって作っていくと、どんどん物語が湧き出てきて止まらないことがあるんですよ。組曲になったのはそのためで、"3曲作ろう!"ではなくて気がついたら3曲できちゃっていただけなんです(笑)。このアルバムには入っていないですけど、ずっとライヴでやっている"京都殺人旅行"というシリーズに至っては、すでにEPISODE 6までいってます。

-"MAGICAL ARMS"についても、1から3では曲中から窺える表情がいろいろと違っている点が実に興味深いです。これは場面展開によって曲のトーンが変わっているということなのでしょうね。

そういうことです。物語が進んでいくのに合わせて音も変わっていくんですよ。本当に曲作りをしているときは楽しくてしょうがないです。

-タイトルから作っていくとなると、「見えない女」という楽曲も背景にいかなるストーリーがあるのかとても気になってきます。なんともミステリアスです。

この「見えない女」は、心身が弱っているときに自分にしか見えない女が現れるという話ですね。1曲目に入っている「GREEN GREEN」はとある森を守る主が主人公のお話ですし、今回のアルバムではすべての曲たちに対しての解説文を僕がつけているので、ぜひそちらに目を通しながら聴いていただけると嬉しいです。そうすると、このアルバムの聴こえ方がまた変わってくると思います。

-それから、今作には「HELL APPLE」という楽曲も最後に入っておりますけれど、こちらに限ってはサックス奏者のYUKARIEさん、ギタリストのKelly SIMONZさん、チェロ奏者の村中俊之さん、Janne Da Arcのキーボーディスト kiyoさん、YOUさんにとっては弟子にあたるLa'cryma Christiや、Creature CreatureのサポートをされているHIRO(Gt)さんなど、多彩な方々がゲスト参加されていらっしゃいます。この豪華なコラボレーションが実現することになった経緯についても、ぜひ教えてください。

僕、コラボとかって今まではそんなに好きじゃなかったんですよ。でも、この「HELL APPLE」に限っては曲を作っていくなかで"お友達に弾いてほしいな"という気持ちに初めてなったんです。それも、最低16小節ずつはそれぞれにやってもらおうと思って、僕も含めて計6人がソロを弾いてくれることになりました。のっけからYUKARIEさんのサックスがあって、Kelly SIMONZの速弾きがあって、村中君のチェロが来るみたいな流れも、曲ができたときから自分の頭の中ですでに描けてました。師弟関係にあるHIRO、絶対に斬新な空気を吹き込んでくれるやろうなと予想していたkiyoにも参加してもらうことで、すごく面白い曲に仕上がったと思います。

-かくして、今作には"ANDROMEDIA"というタイトルが付きました。先ほどのお話からいきますと、これはマザー・シップ"Maniac Love Station"が長旅の末に惑星"ANDROMEDIA"に辿り着いたことを意味するそうですが、この3部作をもって本当に旅は終わってしまうのでしょうか?

それがですね、このジャケットの色合いを見てもらうと、少し暗い感じがしませんか? 実はこれは"自分が思っていた星と、現実のANDROMEDIAは違った"ということを意味しているんですよ。楽園を探し求めていたはずだったのに、そこは荒廃していたということ。つまり、ハッピーエンドではないんです。

-ということは、もしや?

本当だったら3部作としてここで終わるはずだったんですけどね。"この先どうなるのかな?"と、僕自身が"この先"を楽しみにしているところなんです。まだアルバムの発売前なのに、次を作りたくて作りたくてしょうがなくなってます(笑)。

-なお、このアルバムと同時にYOUさんがDEAD END以前に在籍していらした伝説のバンド JESUSの、秘蔵音源が待望のCD化を果たしたという『LE DERNIER SLOW』がリリースされます。こちらもYOUさんのファンにとってはたまらぬ1枚ですね。

これは僕が19歳のときの音源なんですよ。初めてレコーディングをした作品で、僕自身は持っていなかったのでこれを作るのには本当に苦労しました。当時のベーシスト(LEO)に連絡をして、彼が保管していた音源をCD化したんです。ジャケットも、オリジナルのデータはなかったので、カセットで作ったデモ・テープのジャケット写真に限りなく近いものを探していただいて、できるだけ復元しました。バンドのロゴは残っていた当時のステッカーから起こしてます。

-34年ぶりの復刻とは、つくづく貴重です。

いやいや、僕としてはもうお恥ずかしい限りです(笑)。ただ、これが奇跡に近いのも事実なんですよ。これは僕がまだ世に出る前の、極めてアンダーグラウンド時代のカセットテープのみで発表していた作品ですから。ただし、そのまま出すのだけは絶対に嫌だったので今回の『LE DERNIER SLOW』には新たに入れた曲もあるんです。

-1曲目の「SAHARA」のことですね。

僕は19歳のときにJESUSをやめて、後にTERRA ROSAというバンドに入ったんですけど、JESUS時代に書きかけてそのままになっていたインストゥルメンタルの曲がその「SAHARA」なんです。それを改めて完成させて、今回はLEOさんと旧知の仲であるドラマー、下田武男さんの力を借りてレコーディングし直しました。まぁ、最初これを出すとなったときにファンの方々は喜んでくれるにしても、自分にとってはプロ・デビュー前の黒歴史を公開するみたいで、ちょっと嫌だなぁと思っていたところがあったんですが(笑)、インディーズで、なおかつカセットではあっても1回は世に出たことがあるものなわけなので、それをまったくなかったことにするのもおかしな話やなと思い直して、今回は思い切って当時のライヴ音源と併せてCD化しました。

-最新作である『ANDROMEDIA』と、最も古い音源たちを同時に聴けるというのがまた乙ですよ。

みなさんが喜んでくれるんだったら、僕としてはそれが何よりです。今回、そういう意味では同時発売になって良かったなと思ってます。お宝感みたいなものはたしかにあると思うので(笑)。『ANDROMEDIA』と一緒にぜひ楽しんでください。