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INTERVIEW

YOU(足立祐二)

2020.03.17UPDATE

2020年04月号掲載

YOU(足立祐二)

Interviewer:杉江 由紀

頭の中に最初に浮かんでくるのは映像なんですよ。それありきで音が浮かんできます


-では、1曲の中に、エレクトリック・ギターとアコースティック・ギターの音が共存していくという前提を踏まえたときに、YOUさんが曲作りをしていくうえで大事にされているのはどんなことですか。

そこはこれまでに作ってきたアルバムと同じで、まずは曲そのものを作る前に僕は絵コンテ作りから始めるんですよ。その土台がとても大事です。

-今作『YOUCOUSTIC』でも各曲にはそれぞれストーリーがあるとのことで、そのあらすじはご自身による楽曲解説としていただいた資料に文字化されております。

頭の中に最初に浮かんでくるのは映像なんですよ。それありきで音が浮かんできますし、僕の作る曲は、どれも頭の中に浮かんできた映像イメージから生まれたタイトル先行なんです。僕はそこからひとつずつの物語に対して音楽をつけていく作り方をしてます。そのスタイル自体は、これまでのソロ・アルバムとまったく一緒でした。

-手法としては、どこか映画のサウンドトラックを作っていくような感覚に近いのかもしれません。

あぁ、かなり近いような気がします。まぁ、ストーリーとは言っても、曲によっては最初に浮かぶのが色のイメージだけのこともありますけど、それはソロどころかバンドで曲を作るときにも言えることなので、僕の中ではこれが普通のやり方なんですよ。

-音像についてはいかがでしょう。エレクトリック・ギターとアコースティック・ギターの音を、バランス良く融合させていくにあたり、相互作用などを考慮されたところはありましたか。

僕は弾かないですけど、頭の中で鳴っているアコースティック・ギターのコードは、デモにアコギの音色で鍵盤を使って入れているので、そのデモを"彼がいかに弾きたいと思うものとして作れるか"というのが、自分としての最優先ポイントです。僕以外でそのデモを最初に聴くのは嘉多山君ですから。僕としては"これ、いいね! すぐやろう!"って彼に言わせたいんですよ。

-聴き手以前に演者を惚れさせられるようなものを作ることが、YOUさんにとっての命題なのですね。

いい曲を書くっていうことなんかは、僕にとって全然大事なテーマではないんです。それはプロ野球選手が打席に入ったらヒットを打つっていうのと同じで、当たり前のことですからね。"神様、いいフレーズをください!"みたいに思うこともないんです。ごはん、歯磨き、お風呂、睡眠、曲作り、ライヴ・リハーサルっていうのはどれも僕にとって日常の出来事ですね。と言っても、僕は睡眠をあまりとらないほうなので、寝ても1日マックスで3時間くらいなんですけど。

-すごいですね! いわゆるショート・スリーパー体質なのだとしたら、それだけ時間が有効に使えるということなわけで......なんだかうらやましいです。

僕、3時間以上は寝られないんですよ。たまーに曲作りをしている間に3分くらい意識が飛んでることはありますけど(笑)、基本的に寝たいと感じること自体がなくて。これは昔からそうですね。寝ないように頑張ってるとかではないんです。そして、目が覚めたら"うーん、ムニャムニャ~"ってなることもないので、即動き出せます。

-もしやYOUさんは、音楽特化型のヒューマノイドだったりして!?

なれるならそういう機械になりたいくらいですよ。ほんとにそうやったらもっとたくさん曲が作れるのに(笑)。

-ところで、今作にはひと口にアコースティック+エレキとは言っても、曲調としては様々なものが収録されております。これらを1枚としてまとめていくにあたり、展開や流れについてYOUさんはどのようにお考えだったのでしょうか。

前作の『ANDROMEDIA』までは『You's Alien』(2005年リリースの2ndアルバム)、『Maniac Love Station』(2013年リリースの3rdアルバム)と続いていた3部作という前提があったので、そういった展開や流れを考えながら作っていたところもあったんですよ。でも、今回の『YOUCOUSTIC』に関してはわざと自由にやっていくようにしてましたね。ジャケットのデザインも3部作はSFっぽい感じだったんですが、今回はまったく違うテイストになってます。

-森を背景にしてギターをあしらったような、自然で美しいデザインですね。

このジャケットのアートワークは、僕の頭の中をグラフィック化したものなんです。森の左側には日が当たっていてお花が咲いているでしょ? 対して右側は暗くてコウモリが飛んでる。どちらも同じひとつの森なんだけど、これがまさに僕の脳内なんですよ。

-ジャケットの構図からいけば、配分としてそのふたつの世界はほぼイーヴンなものであるということになるのでしょうか。

 

厳密には違いますね。どちらかといえば身体の調子も良くて、精神的にも余裕があって、という状態で作っていると楽しくなってくるので、日が差す森のほうに似合うような曲ができることが多いです。それは曲調どうこうではなく、気分の部分でね。でも、僕としては暗くてコウモリが飛んでる森のほうに似合うような曲も書きたかったので、今回は真冬の2月の夜中3時とかに近くの森まで行って、1時間くらい毛布を被りながら、意図的に自分を憂鬱な状態に置いてみるっていうこともしてみました。"寒い......暗い......"って震えながら(笑)。そうしたら思った通り、行ったら行ったぶんだけ普段とはまた全然違う曲が生まれましたね。

-行ったら行ったぶんだけということは1度や2度ではなかったということですか?

冬だけじゃなくて、夏も行きましたよ。もっとも夏だと3時に行っても4時くらいには明るくなってきちゃうでしょ? 夜明けと共にワンちゃんの散歩の人が出てくるんですよ。そんななかで僕が森のベンチにじっと座っていると、近くまで来たときに"......あっ!"って驚く人がわりといてちょっとバツが悪くなっちゃうこともありました(笑)。

-夏はともかく、冬は風邪を召されたりはされませんでした?

冷えちゃうから、調子は普通に悪くなりますね。でもね、それはそれで調子が悪くなったときならではの作風があるんじゃないのかな? って思ったりして、そういうことを試すのが楽しいんですよ。何も浮かばないから、むやみに自分に刺激を与えているというわけではなく、欲しいものをよりリアルなものにするために、時には極寒の夜の森に行ったりもしますよというだけの話なんです。

-それにしても、お住まいの近くに森があるだなんて素敵すぎませんか。

今住んでるマンションは森の端っこにあるんですよ。僕はわざわざそこを選んで住むようになったんです。前に大雨の日に傘を差しながら、森の中の遊歩道で、水たまりにバシャバシャッと雨粒が跳ね返る様子を映像でずーっと撮り続けたんですけど、帰ってからその映像を観ながら3曲とか5曲とかを作ったこともありました。

-真冬の森での一件も雨の日の一件も、きっとYOUさんにとっては曲作りのために必要不可欠な取材活動なのでしょうね。

僕、そういう取材が大好きなんです。桜が散ったあと、葉っぱが生えてきた頃の桜の木が風にゆらゆらとしているだけの映像を、2時間くらい撮ったり。周りからしたらきっと謎の人物でしょうね(笑)。