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INTERVIEW

DIZZY MIZZ LIZZY

2020.03.12UPDATE

2020年03月号掲載

DIZZY MIZZ LIZZY

Member:Tim Christensen(Vo/Gt)

Interviewer:菅谷 透

2015年に再結成を果たしたデンマークのロック・トリオ、DIZZY MIZZ LIZZY。母国では絶大な人気を誇り、ここ日本でも2015年から2016年にかけて約1年の間に3度来日するなど確固たる地位を築いている彼らが、復活作『Forward In Reverse』から約4年ぶりのアルバム『Alter Echo』を完成させた。哀愁のメロディとテクニカルな演奏というバンドの持ち味を遺憾なく発揮しつつ、ドゥーム・メタルやポスト・ロックに影響を受けた重轟音のダイナミクスまで吸収した、新境地と言える作品だ。23分に及ぶ組曲「Amelia」をはじめとした"アルバム"ならではの仕掛けも豊富な今作、そして4月に開催を控えた来日公演について、フロントマンのTim Christensenに話を訊いた。


今までとは何かしら別のものにトライして、少しでも発展させてみたかったんだ


-まず、2016年の復活作『Forward In Reverse』リリース前後のバンドの活動からうかがっていければと思います。同作は実に20年ぶりのリリースとなったわけですが、作品についての反響など、今振り返って同作をどのように捉えていますか?

いい質問だ。――何せ長い間、もうこのバンドは終わりだろうと思っていた時期があったからね(笑)。2010年に再結成ツアーをやったけど、そのときは昔の曲をやっただけだった。でも、そこから何かに火が点いて、数年後にはもう1度やろうという話になったんだ。ただ、やるなら新曲を少しは書かないといけないなと。それでいくつか新曲を書いたらなかなか満足のいく出来だったから、そこから発展していったんだ。12曲くらいできたところで、もしかしたらフル・アルバムをレコーディングした方がいいんじゃないかという話になった。それで作ったアルバムだけど、作って良かったよ。またツアーに出ることができたし、昔懐かしのバンドというよりも現在進行形のものをプレイできて良かった。それがあのアルバムで一番重要なことだな。いい曲が書けたから、アルバム自体のこともとても誇りに思っているよ。古い曲と今の曲をブレンドしてプレイできたのが良かった。と言っても、当時もっと曲を書こうと思っていたかどうかは今となってはわからない。とにかくあの作品を作ることが俺たちにとっては大事だったんだ。でも、まだ飽きてないよ(笑)。むしろもっとやりたいとハングリーな気持ちになっている。だからこそ新作もできて、今こうして君と話しているんだ(笑)。

-(笑)たしかに『Forward In Reverse』が出たことで勢いづきましたね。同作を引っ提げてかなりアクティヴに活動していました。中でも日本にはアルバム発売前の2015年の"LOUD PARK"から、2016年のジャパン・ツアー、同年の"LOUD PARK"と約1年の間に3回の来日を果たしています。このときの感想をうかがえますか?

たぶん、あの時期最高の出来事に入ると思うね。日本に行くのはいつも楽しいし。90年代に2回行ったけど、そのあとは長い間行けなかったから、久しぶりに行って昔からのファンや旧友たちに再会できたのが嬉しかった。マサ・イトー(伊藤政則氏/音楽評論家)とも再会できたしね。クルーもレコード会社のスタッフも素晴らしかったし、とにかくファンに会えただけでも良かったよ。日本向けのインタビューだから言うわけじゃないけど(笑)、日本のオーディエンスはすごく熱心なところが大好きなんだ。日本に行く機会が増えれば増えるほど行きたくなるのは自然の流れだよ。

-嬉しいお言葉、ありがとうございます。日本以外でも、2017年夏には母国デンマークの"Roskilde Festival"のメイン・ステージでライヴを行い、その模様がライヴ・アルバム(『Livegasm!』)としてリリースされています。こうした活発なライヴ活動が新作へ与えた影響はありましたか?

うーん、すごくいい質問だね。活発にライヴ活動をしたことによって、メンバーがお互い前より親しくなったのが大きいな。一体感が強まった気がする。長い間ツアーを共にして、言うまでもなくたくさんのショーをやっただけじゃなく、友人同士として過ごした時間も長かったんだ。つるんで出かけたりしながら、お互いに再び繋がり合っていった。一緒にいるときは主に音楽の話をするんだ。あれは聴いたか、これは聴いたか、みたいにね。その中で新しいバンドをたくさん発見して、今の動向に大きな興味を持った。特にハード・ロックやメタルのシーンでね。それにインスパイアされて新作ができたようなものだよ。一緒にいないときもそれぞれが音楽を聴いていて、情報をシェアしていたんだ。"これ聴いてみなよ、すごくいいから"ってね。実際にステージに上がったことが新作のインスピレーションになったかどうかはわからない。もしかしたらなったかもしれないけど。

-みんなで一緒にいるだけで刺激になったということですね。

そうだね。

-そして、ようやく4年ぶりとなるニュー・アルバム『Alter Echo』が完成しました。今の心境をうかがえますか? またアルバム全体のコンセプトや、テーマについても教えていただけますか?

特定のコンセプトがあったかどうかはわからないな。ただ、今までとは何かしら別のものにトライして、少しでも発展させてみたかったんだ。"3ピースのバンドが12曲作った"だけの作品というよりは進化していると思う。さっきも話したけど、俺たちが聴いてきたものがインスピレーションになっているしね。長いプロセスだったし、生みの苦しみも味わった。自分たちにとって興味深いものにするために、ちょっと変わった方向に行こうとしたけど、その方向を見いだすのに苦心したしね。1年くらい自前のリハーサル・スタジオで過ごして、なんとか新しいものを生み出そうとしたんだ。でも、最終的にできあがったものの、ひとつも気に入らなくてね。全部捨てて最初からやり直したよ。

-なんと。

最終的に俺たちは――というか俺が決めてSøren(Friis/Dr)とMartin(Nielsen/Ba)に話したんだけど、"あのさ、これを発展させるために、俺がプロデューサーをやって全体をリードしたいんだ"って言ったんだ。"良かった、やっと道案内をしてくれるやつが出てくれた"と言われたよ。どういう方向に進めばいいのかわからなくて、みんなフラストレーションが溜まっていたからね。それで俺がプロデューサー役を務めるようになって、そこから今の作品の形が見えてくるようになった。

-なるほど。それで前作から4年もかかったんですね。

ああ、長かったよ。でも面白いのが、実際のレコーディングは半年以上かからなかったんだよね。そこに辿り着くまでは紆余曲折あったけど。

-それで音楽的にも広がりがあったんですね。ところで、今作のジャケット写真は、3rdアルバム『Forward In Reverse』が1st『Dizzy Mizz Lizzy』(1994年リリース)のアートワークを参照したように、今回は2ndアルバム『Rotator』(1996年リリース)のデザインを感じ取ることができますね。また、レコードのスリーブのデザインを模しているようにも思えますが、ジャケットのテーマについてうかがえますか?

たしかにスリーブに似てるね(笑)。『Rotator』に似ているのはまったくの偶然だよ。繋がりはまったくないんだ(笑)。ただ、言いたいことはわかるよ。アートワークは今回初めて俺たちがなんのアイディアも浮かばなかったんだ。それで、これまでもたくさんのジャケットを手掛けている人に全面的に任せた。アルバムの曲を全曲聴かせて、感じたことを形にしてほしいと頼んだんだ。彼はすごく感動していたね。スケールが壮大だと言ってくれた。――それで1週間経ってこのデザインを持ってきたんだ。こういうふうに聞こえると言ってね。すごくしっくりきたし、アートワークと音楽の相性がすごくいいと思ったよ。彼のアイディアとしては、"eclipse(日食、月食)"に近いものを表そうとしたらしい。宇宙的な壮大さがあると同時に、とてもロックなものを表現するというアイディアだったんだ。

-そうだったんですね。アルバムの内容と通じるという意味では、本作はいわゆるA面B面を意識した"アルバム"、特に"レコード"のフォーマットを生かした作品になっていますが、このアイディアはどのように生まれたのでしょうか? また制作過程のいつごろに生まれたのでしょうか?

あはは、いい質問だね。俺は昔から"長すぎない"アルバムが好きなんだ。1時間を超えると、聴いていても集中力が鈍ってきてしまうからね。俺が一度に集中して聴けるリミットが45分前後なんだと思う。だからそのくらいに収めることには気を使ったよ。"片面"が22~3分くらいになるようにね。

-ちょうど昔のLPみたいな長さですね。

そう。俺はアナログやLPが大好きだから、ああいう感じにしたかったんだ。それからふたつのパートに分かれるというのも好きでね。本当にLPじゃなくても構わない。ふたつのパートがあるというのが好きなんだ。サッカーの試合みたいにね。前半と後半があって、その間にブレイクを挟むんだ。

-ハーフタイム・ショーみたいにですね(笑)。

そう(笑)。B面の曲(「Amelia」)は22~3分あってとても長いから、A面とB面のどちらにしようかと思ったけどね。結局B面にしたけど。

-このLP形式は初めからそう決めて取り組んだのでしょうか。それとも作っているうちに"LP形式でやれるかもしれない"と思ったのですか?

そもそも特にルールを設けなかったんだよね。思いつくものすべてに対してオープンでいたかったから。「Amelia」は初めからほぼそのままあんな感じだったね。最初に10分くらいのものができて、そこからどんどん組み立てていったら、23分近くになったんだ。と言っても一気に23分というわけではなくて、いくつかに分かれているけど。パート1、2、3、4、5。そういうのは"suite(組曲)"っていうんだっけ?

-そうだと思います。A面とB面はそれぞれのトラックが繋がった構造で、さらに本編のラスト・トラックとオープニング・トラック自体も繋がっていて、アルバム自体が循環する構造になっていますよね。つい何度もリピートしてしまいましたが、こうした構造を用いた意図はなんでしょうか?

気づいてくれて嬉しいよ。各曲がコネクトしていて、最後の曲も最初の曲とコネクトしているんだ。そうしたらループ状態みたいな感じで聴いてもらえるからね。

-そうですね。ループしています。

最初の曲のイントロと最後の曲の終わりに独特の雰囲気がある。ブックエンドみたいにね。

-ブックエンド! たしかにそうですね。

そう。ゆっくり始まって、徐々にヴァイブに慣れていきながらいろんな曲を通って、最後にスタートしたところに戻るんだ。最初と同じ雰囲気でグッバイ、という感じでね。そういうのが好きなんだ。俺にとってはそれがすごく"album-ish(アルバム的)"な気がするんだよね。俺の好きなアルバムは、どのバンドもそんな感じのことをやっていた70年代のものが多いんだ。これを"コンセプト・アルバム"だとは思わないけど、"1ピース"アルバムではあるね。すごくアルバムっぽい。