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INTERVIEW

QUEENSRŸCHE

2019.02.21UPDATE

2019年02月号掲載

QUEENSRŸCHE

Member:Michael Wilton(Gt)

Interviewer:荒金 良介

QUEENSRŸCHEが、前作『Condition Hüman』から約3年ぶりとなるニュー・アルバム『The Verdict(邦題:評決)』を完成させた。ex-CRIMSON GLORYのTodd La Torreをフロントに据えて3枚目になる今作は、バンドがより一枚岩となり、多くの人が臨むバンド像に応えながらも、プログレッシヴな成長ぶりを刻みつけた会心作と言っていい。バンド内のごたごたをくぐり抜け、歩みを止めることなく、精力的にツアーを行うことでフレッシュな息吹を楽曲に封じ込めることに成功している。歴史が長いバンドこそ"あの時代が良かった"と外野の意見もうるさくなっているが、そんな声を吹き飛ばす、ライヴ感漲る1枚に仕上がっている。Michael Wiltonに話を訊いた。

-少し前の話になりますが、"LOUD PARK 16"に出演し、Todd La Torre(Vo)を含む新体制のQUEENSRŸCHEのライヴを初めて観たという日本のオーディエンスも多かったわけですが、私も実際に生でToddの歌唱力に触れて度肝を抜かれました。バンド的には久々となる日本でのライヴの感触、オーディエンスの反応はいかがでしたか?

あれくらい大きなフェスをやると大勢の観客の前でプレイすることになる。それまで日本に行くときは大きなフェスか、1週間くらいのツアーだったんだ。あのときは"LOUD PARK"初出演で、それまでの道のりが長かったから、俺たちにとっては再建みたいな感じで、このメンバーのQUEENSRŸCHEでライヴをやれることにものすごくワクワクしていたんだ。オーディエンスの反応もものすごく良かったと思う。みんな、もっと聴きたいと思ってくれたんじゃないかな。今度はツアーでちゃんと日本を回りたいね。そのための機は熟したと思う。バンドも再建できたし、世界中でビジネス的にも好調だから、それを日本にも持って行きたいんだ。

-あのライヴが今作を作るモチベーションになったのなら光栄です。新作がようやくできたので、また来日のチャンスにも期待したいところです!

そうだね。前作『Condition Hüman』(2015年リリースのアルバム)では3年半近くもツアーをしていたわけだけど、ツアーのエネルギーっていうのはソングライティングにも深く浸透するものだと思うんだ。レコード会社から"もう1枚アルバムを"と言われたときには、デモの準備が整っていなかった。まとまりもなかったし、アイディアもまだ足りていなかったというのかな。それでプロデューサーのZEUSSを連れてきて、彼に指揮をとってもらった。バンドとして曲が構築できるようにしてくれたんだ。アルバムの流れも作ってくれた。テクノロジーが入ってくる前に俺が自分でやっていたようなことだよ。と言いつつ、自然発生的なものも多かったね。曲が形成されていくにつれて、このアルバムがスペシャルなものになるって確信が俺たちの中で生まれてきた。ただ、自然発生的なものに委ねるものが大きい、というのはかなりの試みでもあったんだ。スケジュールの締め切りもあるしね。俺たちはミュージシャンだから、時間管理があまりうまくないんだ(笑)。今のところ、インタビューやファンとのやりとりを通じて、みんな本当に新作を楽しんでくれている実感はあるけどね。

-QUEENSRŸCHEはとても歴史の長いバンドです。ライヴにおいてもやらなければいけない代表曲も多いと思います。意図的に初期曲を含めて『Empire』(1990年リリースのアルバム)までの楽曲を主軸に据えたセットリストを組んでいるように見えますが、それはファンの期待やニーズに応えたいという気持ちが一番強いのでしょうか? また、Toddは優れたハイトーン・ヴォイスの持ち主です。彼がフロントマンになったことで、初期の曲もやりやすくなった面も強いのでしょうか?

QUEENSRŸCHEが今のメンバーになったとき、ファンの一般的な意見としては"昔の曲も聴きたいのに"ということだった。それで長い時間をかけてツアーをして、昔の曲を中心にやってきたんだ。そうしたらだんだんみんなの関心がシフトしてきて、今度は"Toddが歌うヒット曲を聴きたい"という感じに変わってきたんだ。今はまたそこからシフトして、"新曲と昔の曲両方を聴きたい"って感じになってきたんだよね。俺たちにとってそれは素晴らしいことだし、そうしたら新しい曲をいろいろ織り交ぜることもできる。新しい曲も昔の曲と同じくらいエキサイティングだってことがわかってもらいつつあるんだ。

-スムーズに溶け合いそうな感じですよね。ライヴでもいいミックスが聴けそうな気がします。

そうなんだよ! これから行われるツアーの構成を考え始めたときも、新曲の比率を上げてみようという話になったんだ。これからは新曲でも猛襲するよ(笑)! 『The Verdict』の曲はすごくライヴ映えすると思うんだ。俺たちはツアーを精力的にやっているから、何がオーディエンスのモチベーションになるかを熟知している。QUEENSRŸCHEのショーに行くってことが何を意味するのか、ということもね。ずーっとツアー三昧でさ。アメリカのラジオはもう音楽なんてかけてくれないんだ(苦笑)。だから、もう誰も音楽を買ってくれない。みんなストリーミングで聴いているしね。そうするとそっち系の収入がなくなってしまうから、ツアー三昧にならざるを得ないんだ。年間200回以上のショーをやっているバンドなんてザラにいるよ。最近はあまり楽な稼業じゃないね。ものすごい労力とものすごい距離の旅を要するんだ。


俺たちが書く曲はみんな"QUEENSRŸCHEらしい"音になる


-なるほど。ヘヴィ・メタルというジャンルは"これが俺たちが考えるヘヴィ・メタルだ!"という感じで、聴き手によって受け取り方や解釈は違うものです。あなた方は王道のメタルの良さも継承しつつ、このバンドのアイデンティティとさえ言えるプログレッシヴな面を忘れずに、音楽性をどんどんアップデートしている点が素晴らしいなと感じています。自分たちの音楽的変遷についてはどんな感想をお持ちですか?

うん、進化していると思うよ。メンバー全員がQUEENSRŸCHEとしてより気持ち良く曲作りができるようになっていると思うし、このメンバーでバンドをやっているというのも、彼らのパーソナリティを鑑みるに、今はすごくいい状態なんだ。アイディアが枯渇することもないし、みんなすごく献身的だしね。あれだけのツアーもあるし、ものすごい労力を要することではあるけど、曲を書くときもまとまりができているし、このバンドでいるということ自体が、バンド活動をとても楽しいものにさせてくれるんだ。

-現在はとてもクリエイティヴな状態なんですね。ここ最近聴いているお気に入りのバンドや、自分たちの音楽スタンスと似ている、あるいは共感を覚えるアーティストがいれば教えてください。

昔からいるバンドが自分たちを改革していく姿、自分自身にアドレナリンを打っているような姿には共感できるね。俺たちみたいな状況のバンドが他にもたくさんいるのは明らかだし。俺の友人のJerry Cantrell(Gt/Vo)がいるALICE IN CHAINSも同じような状況にいるよね。あいつともよく話をするけど、最終的には曲ありきなんだよ。QUEENSRŸCHEにとっては今までだってずっとそうだった。俺たちの場合は多くの曲を俺とEddie(Jackson/Ba)が書いている。俺たちのDNAにはいわゆるQUEENSRŸCHEスタイルが刻み込まれているんだ。だから俺たちが書く曲はみんな"QUEENSRŸCHEらしい"音になる。Jerry CantrellがALICE IN CHAINSに曲を書くときと同じだよ。どんな曲を聴いても"WOW! ALICE IN CHAINSらしい!"となるんだ。それはあいつがALICE IN CHAINSそのものだからなんだよ。業界が与える試練とか、旅の多さとか、そういうのを全部ひっくるめて、このバンドは今が本当にいい状態だと思う。

-そういう言葉を聞くと、とても安心します。あなたとEddieが曲の多くを作るという話でしたが、どんなふうに曲作りをしているのでしょうか?

特に決まったルールがあるわけじゃないんだ。アルバムにとってベストなもの、その曲にとってベストな方法を取るようにしているよ。全員作曲も作詞もするから、結構バラエティがあるしね。例えば新作だと「Dark Reverie」はParker Lundgren(Gt)が書いたんだ。全部あいつが書いたんだよ。内容があいつにとってとてもパーソナルなものでね。みんな気に入って、"素晴らしい曲だから、ぜひ完成させてくれ!"と言ったんだ。歌詞も全部あいつが書いたよ。......それからEddieも、あいつの書いた曲はたいてい自分で歌詞を書いているね。だからバンドとして共同制作したって感じかな。全員がアイディアを投げてできうる最高の曲を作ろうとしたんだ。だからルールは特に決まっていない。歌詞を書くのはToddだけじゃないし、その曲にパッションを持っている奴が担当するんだ。その曲にとってベストなことをやる。ギターのパートも同じことだよ。その曲にギター・ソロがあって、そのソロが演奏者の書いたものだったら、ライヴでもそいつが演奏することになる。バックアップ・ヴォーカルが必要で、その登場部分にリズミックなものが必要だったら、その方が歌いやすいしね。

-先ほどDNAの話が出てきましたが、今のバンドの状態がいいからこそ、そのDNAを好きなときに好きな人が好きな形で使うことができているのかもしれませんね。

そうだね。俺たちは自分たちの音楽を信じているし、自分たちのやっていることを信じているんだ。音楽は俺たちのパッションでもあるし、生涯の趣味でもある(笑)。自分に対しても音楽に対しても真摯であれば間違いなくやりがいのあることだ。曲を書き、レコーディング、ツアー、あらゆるメディアでいろいろぶちまけること......ものすごく楽しいよ。それは言わずにいられない。今は本当にいい状態だから、すべてが活発に動いているよ。