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FEATURE

QUEENSRŸCHE

2022.10.07UPDATE

2022年10月号掲載

プログレッシヴ・メタルの重鎮は再びの黄金期へ―― 40年以上のキャリアを誇るQUEENSRŸCHEが放つ強靭な最新作!

Writer 菅谷 透

40年以上のキャリアを誇る重鎮メタル・バンド、QUEENSRŸCHEが16枚目のオリジナル・アルバムとなる新作『Digital Noise Alliance』を完成させた。プログレッシヴ・メタルの草分け的な存在として、80年代後期から90年代初頭にかけて人気を博しながらも、かつての栄光を失っていた時期が続いていた彼らだが、新ヴォーカリストにex-CRIMSON GLORYのTodd La Torreを迎えてからは完全復活を果たし、シーンの最前線へと再躍進。改めてその存在感を増している。本稿では、そんなバンドの歴史を簡潔にではあるが振り返りつつ、新作について迫りたい。

シアトル郊外の街、ベルビューで結成されたQUEENSRŸCHEは、前身バンドでの活動を経て1981年にクラシック・ラインナップが確立。良質なメロディの正統派メタルを基調に、プログレッシヴな要素を加えたサウンドで頭角を現すと、1988年には3rdアルバム『Operation: Mindcrime』をリリースした。まるで映画のような壮大なストーリーを緻密なサウンドで具現化した同作はプラチナ・ディスクを獲得し、メタルにおけるコンセプト・アルバムの代表的な1枚として今もなお高い評価を受けている。続く1990年の4thアルバム『Empire』では、「Silent Lucidity」をはじめとしたシングルがヒットし、バンド史上最大のセールスを記録した。しかし、このころからヴォーカルのGeoff Tateとバンド・メンバーの間に溝が生まれ始め、1997年の6thアルバム『Hear In The Now Frontier』リリース後にはバンドの中心人物だったChris DeGarmo(Gt)が脱退してしまう。さらにこの時期の作品はメタル路線から離れ、オルタナ/グランジを取り入れた音楽性へと変化していたため、徐々に人気が低迷。2006年には『Operation: Mindcrime』の続編として『Operation: Mindcrime II』を発表するも、黄金期ほどの成功を収めるには至らなかった。

時は流れ2012年に入ると、Geoffと他メンバーとの確執がついに表面化。バンドはGeoffに解雇を通告し、Todd La Torreを迎えた新ラインナップで活動していくことを発表した。これにGeoff側も"QUEENSRŸCHE"の名を冠したバンドを立ち上げ応戦するなど、いわゆるお家騒動へと発展したが、裁判を経て2014年には和解とGeoffの脱退が成立。心機一転した新生QUEENSRŸCHEは、2013年のセルフ・タイトル・アルバムに続いて2015年に『Condition Hüman』を発表すると、2019年には『The Verdict』をリリースし、いずれも高い評価を獲得。ライヴ活動も積極的に行っており、2022年の春と秋にはJUDAS PRIESTとの北米ツアーが決定している。

そんな勢いに乗る彼らの最新アルバム『Digital Noise Alliance』は、新生QUEENSRŸCHEが放つ決定打と言うべき傑作だ。前2作に引き続きSOULFLY、HATEBREEDなどを手掛けたChris "Zeuss" Harris がプロデュースを担当しており、黄金期のメロディックでスリリングなテイストに、モダンで強靭な質感をつけ加えたサウンドを展開している。2000年代に在籍したギタリスト Mike Stoneの復帰や、近年ツアー・ドラマーとして活動していたCasey Grillo(ex-KAMELOT)の正式加入も本作のトピックのひとつで、Michael Wiltonと奏でられる流麗なツイン・リードや、パワフルで小気味よいドラミングは作品により鮮烈な印象を与えている。ストレートなメタル・ナンバーの「In Extremis」で幕を開け、雄大な「Lost In Sorrow」ではToddのハイトーン・ヴォーカルが炸裂。「Sicdeth」はオルタナ調の陰鬱なリフにファストなパートが組み合わさり、さながらキャリアを俯瞰したような楽曲だ。オペラチックなサビがインパクト大の「Behind The Walls」に続いて、「Nocturnal Light」ではノイジーなエレクトロニクスも用い、Eddie Jacksonのベース・プレイが光る重厚なサウンドを披露。エモーショナルな空気感を纏ったバラードの「Forest」も彼らならではだ。終盤はさらに緊迫感を増していき、緊張と緩和の対比が見事な「Hold On」に続いて、アルバムを締めくくる7分超の「Tormentum」で大団円を迎える構成はベテランのなせる技だろう。なお、ボーナス・トラックとしてBilly Idol「Rebel Yell」のチャーミングなカバーも収録されており、こちらもぜひチェックしておきたい。

ベテランらしい貫禄にフレッシュさを併せ持ち、黄金期とは別次元の高みへと登りつめた本作は、文字通りに"プログレッシヴ"であろうとするバンドの姿勢を見事に体現している。近年のプログレ・メタル・バンドを愛聴するリスナーにはもちろん、往時を懐かしむファンにもぜひ手にとってもらいたい1枚だ。


▼リリース情報
QUEENSRŸCHE
ニュー・アルバム
『Digital Noise Alliance』
Queensryche_DigitalNoiseAlliance.jpg
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1. In Extremis
2. Chapters
3. Lost In Sorrow
4. Sicdeth
5. Behind The Walls
6. Nocturnal Light
7. Out Of The Black
8. Forest
9. Realms
10. Hold On
11. Tormentum
12. Rebel Yell

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