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INTERVIEW

Tom Morello

2018.11.15UPDATE

2018年11月号掲載

Tom Morello

Interviewer:山本 真由

-楽曲制作のプロセスについて教えてください。楽曲によっても違うと思うのですが、それぞれの楽曲はまずゲスト・アーティストを選んでから、彼らに合う楽曲を制作したのでしょうか? それとも楽曲のアイディアが先にあってそれに合うアーティストを選んだのでしょうか?

それぞれの曲はフィーチャーしたアーティストとコラボして書き上げたので、ソングライティングのプロセスは必然的に毎回違った。Steve AokiとKNIFE PARTYの場合、様々なギター案が詰まったリフのテープをそれぞれに送ったし、K.Flay、Vic Mensa、WU-TANG CLANとGary Clark Jr.の場合は、彼らにスタジオに来てもらってソングライティングを始めたんだ。それぞれのサウンドがそれぞれの進むべき道を自然と見つけて。例えばGary Clark Jr.とは、3時間ジャム・セッションを行った内容をそのあと俺が3分間の曲にまとめた、とかね。

-レコーディングはどのような環境で行われたのですか? それぞれの楽曲で環境が違ったりするのでしょうか?

リモートでレコーディングした曲もあれば、全員同じ部屋に集まってレコーディングした場合もある。BASSNECTAR、BIG BOI、KILLER MIKEの曲では、ギターを俺のスタジオでレコーディングしてからBASSNECTARがあのイケてるトラックを作り、それをBIG BOIに送って彼のスタジオで歌入れをしてもらった。「Vigilante Nocturno」みたいな曲は、最初から最後まで俺のスタジオでプロデュースしたよ。Marcus MumfordとPHANTOGRAMとの「Find Another Way」はロサンゼルス、ロンドン、そしてサンティアゴと3大陸でレコーディングした。

-今作でも、ワウやワーミーを使ったリフやスクラッチなど、あなたらしいギター・プレイを聴くことができますが、それが前面に出るような感じではなく、さりげなく楽曲に調和している印象を受けました。今回のギター・プレイに関して、特に意識したことはありますか?

それぞれの曲が求める要素によって俺のギター演奏を発展させていくことが今回の目的だったんだ。過去には俺のエレキがコンピューターやDJのスクラッチング音に聞こえることがあったので、今作ではアナログ的な血肉化したギター・サウンドにコンピューターで繰り出したビートを合わせ、神聖とは程遠いフランケンシュタイン・モンスターを生み出したよ。

-個性的なあなたのギター・プレイに憧れて、ギターを始めるプレイヤーも多いかと思いますが、ギター・キッズやこれからバンドを始める子供たちに何かアドバイスをお願いします。

アドバイスはとにかく実践のみ! ギタリストとして上達するには他のミュージシャンと演奏するのがベストだ。メンバー同士の才能を合わせ、ソングライティングや練習を通して他のメンバーの演奏を見て聴くことによって学ぶことはすごく多い。さらなる上達に向けて、その次はライヴ演奏だ。ライヴ時に起こる予測不可能なハプニング、そしてお客さんの前での演奏は間違いなく君の演奏に影響を与えるし、上達させてくれると思うよ。

-日本盤の仕様について、ボーナス・トラックの収録が予定されているようですが、まだ内容は発表されていません(※取材時は未発表)。今作のレコーディングにあたって、収録曲以外にも制作された楽曲はいくつもあったのでしょうか?

(アルバムに含まれていない曲のレコーディングも)あったし、実は現在『The Atlas Underground』のVol.2の制作が半分ぐらい終わったところなんだよ。日本盤のボーナス・トラックはSerj Tankianとのコラボ曲だ。素晴らしい仲間のSerjと仕事ができるのはいつだって楽しいよ。

-たくさんのゲストを招いた作品となりましたが、今作の楽曲はライヴではどのようなかたちで披露される予定なのでしょうか?

ちょうどそれに取り掛かっているところだ。2019年に開催する、アルバム『The Atlas Underground』のツアーは従来のものとはかなり異なるスタイルになる。Roger Watersの"The Wall"、"Us + Them"ツアーのアーティスティック・ディレクターを務めたSean Evansと共に音楽を引き立たせながらも、従来のロック・ショーとは違う環境によって観客を考えさせるような没入型体験の構想を練っているんだ。

-今作は、メッセージ性のある内容ではありつつ、全体的に怒りを感じる攻撃的なサウンドというよりは、エンターテイメント性の高い作品という印象を受けました。伝えたいことや気持ちは変わらなくても、ご自身の伝える姿勢に変化を感じることはありますか?

今までリリースしてきたアルバムすべてには共通のテーマがある。それが何かというと人間には自分、そして社会を変化させる力を持っているということだ。歴史とは読むだけのものではなく、自分たちで作っていくもの。世界を変えた歴史上の人物たちは何もこの記事を読んでいる君より力、勇気、クリエイティヴィティや知性があるわけではない。単純に自分が置かれている場所と時代の中で立ち上がり、変化を起こせるかどうかの問題なんだ。

-これまでも、メッセージ性の強い楽曲はもちろん、いろいろなかたちで政治的な意見を表明する活動を行っていますが、今一番関心のあるイシューについて教えてください。

俺たちの惑星は今、分岐点に立たされている。人種や経済格差問題とはいつだって向き合うべきだけれど、地球温暖化という世界規模の環境災害は今しっかり対策をしておかないと、社会に劇的な変化が訪れることになるだろう。

-公私共に、これからチャレンジしたいことがあれば教えてください。

最初に、俺がやりたいのは君たちをロックさせること! LED ZEPPELINのポスターを見つめながらテニス・ラケットをギターのようにかき鳴らし、ベッドの上でピョンピョン飛び跳ねた最初の瞬間から俺はロックンロール・ミュージックが持つ変革と解放力を信じてきた。俺にとって音楽は仕事ではなく天職なんだ。そこまで言ってしまうからには自分の信念を天職に織り交ぜていく責任もあると考えるし、今までのアルバムとすべてのライヴでもそのように務めてきたよ。

-最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。

RAGE AGAINST THE MACHINE、AUDIOSLAVE、STREET SWEEPER SOCIAL CLUB、THE NIGHTWATCHMAN、そしてPROPHETS OF RAGEと、何度も日本でライヴを行ってきたけれど、そのたびに演奏が楽しくて仕方がなかった。日本の友人とファンのみんなに『The Atlas Underground』の音楽を聴かせられる日が待ち遠しくて仕方がないよ。