FEATURE
PROPHETS OF RAGE
2016.10.05UPDATE
Writer 井上 光一
混迷する現代において、体制への怒りに満ちた声が第一線に復活した。2007年の再結成以降、断続的にツアーを続けるも、2011年を最後に沈黙を守っていたRAGE AGAINST THE MACHINE(以下:レイジ)。そのメンバーであるTom Morello(Gt)、Tim Commerford(Ba)、Brad Wilk(Dr)の3人が、Chuck D&DJ Lord(PUBLIC ENEMY)、B-Real(CYPRESS HILL)を迎えて結成したスーパー・グループ、PROPHETS OF RAGEのデビューEPがいよいよリリースの運びとなった。
今年5月31日に行われた初ライヴを始め、7月の共和党全国集会への抗議ライヴ決行など強烈なパフォーマンスでその存在をアピールしてきた彼らにとって、初のオフィシャル音源となる『The Party's Over EP』。今作には、名匠 Brendan O'Brienをプロデューサーに迎えたスタジオ音源が2曲、ライヴ音源が3曲の計5曲が収録されている。Track.1「Prophets Of Rage」は、バンド名の由来にもなっている、ヒップホップ史上の傑作と名高いPUBLIC ENEMYの2ndアルバム『It Takes A Nation Of Millions To Hold Us Back』(1988年リリース)に収録された楽曲の新録バージョンであり、一聴してそれとわかるレイジの面々による鉄壁のサウンドと、Chuck DとB-Realという伝説級のMCによる、互いのリスペクトが感じ取れるラップが絡み合う様は、刺激的のひと言。表題曲のTrack.2「The Party's Over」は純然たる新曲で、Bradのどっしりとしたビートと共に、"これぞTom Morello"と言わんばかりのギター・リフ、ユニゾンで重なり合うTimのぶっといベースが叩きつけられるイントロを聴いた瞬間、否が応でも拳は頭上高く振り上げられることだろう。両MCによる貫録のラップは、痛烈なメッセージを聴く者の心にダイレクトに突きつける。ライヴ音源はTrack.3「Killing In The Name」(レイジのカバー曲)、Track.4「Shut Em Down」(PUBLIC ENEMYのカバー曲)、Track.5「No Sleep Til Cleveland」(BEASTIE BOYS「No Sleep Till Brooklyn」のカバー&リワーク)を収録。音楽史上、必ずしもうまくいったとは言えないスーパー・グループ的なバンドは多くいるが、そのような失敗とは無縁という結果、その証左がこのEP作品には余すところなく収められているのだ。
このプロジェクトは、基本的にはそれぞれが所属するグループの楽曲を取り上げてライヴ演奏するというもので、以前レイジの3人がSOUNDGARDENのChris Cornell(Vo)と共に結成したAUDIOSLAVEとは、まるで違うということは留意しておくべきだろう。私自身もそうであるように、レイジの熱心なファンであれば、レイジのカリスマティックなフロントマンであるZack de la Rochaの存在は常に頭にあるはずだし、ややもすれば"Zack抜きのレイジじゃないか"などと考える人がいるやもしれぬ。Zack自身はPROPHETS OF RAGEに対して好意的に捉えているそうだが、それは彼自身が尊敬してやまないふたりのMCが参加しており、自身の代役などではないと理解しているからであろう。
政治的イデオロギーにせよ権力に対する態度にせよ、彼らは狭量な、偏屈な主張の押しつけなどはせず、あくまで問題提起し、我々に問いかける。"俺たちはこう考える、お前たちはどうだ?"と。まずは2016年という時代において、圧倒的な必然性と共に蘇った名曲群を、爆音で聴いて純粋に楽しんでほしい。そして、来日公演の実現を期待して待とうではないか。
▼リリース情報
PROPHETS OF RAGE
デビューEP
『The Party's Over EP』
NOW ON SALE!!
HSU-10096/¥1,600(税別)
[Hostess]
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1. Prophets Of Rage
2. The Party's Over
3. Killing In The Name (live)
4. Shut Em Down (live)
5. No Sleep Til Cleveland (live)
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