INTERVIEW
Sick.
2017.08.21UPDATE
2017年08月号掲載
Member:詩季(Vo) 風輝(Gt) 吏(Pf) Avel(Ba) 豪(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
驚異的なスピードで、彼らは進化を続けているということだろう。今秋に始動から1周年を迎えることになるSick.が、なんと早くも3枚目のミニ・アルバム『PhAntom.』をここに完成させたのだ。1枚目の『Screaming inside can kill.』、前作の2ndミニ・アルバム『II i I vii』から約半年。その次作にあたる今作で、彼らはもともと持っているロック・バンドとしての鋭角的な攻めの姿勢に磨きをかけるだけでなく、ドラマチック且つホラー的なフレーバーを取り入れながら、新境地へ足を踏み入れることにも成功している点が実に興味深い。ここは来たる9月4日に新宿MARZにて開催されるという、1stワンマン・ライヴ"PANDEMIC."にも期待したい。
-前作の2ndミニ・アルバム『II i I vii』から約半年。その次作にあたる今回の3rdミニ・アルバム『PhAntom.』を制作していく際、どういった方向性のものを提示するかという意見交換は、バンド内でどのように行われていったのでしょうか。
詩季:実は、去年の9月にSick.を始動させた時点でここまでの流れはすでに描いていたところがあったんですよ。だから、前回の『II i I vii』のレコーディングが終わった直後にはもう今回のデモ作りを始めていたし、さらに遡ると最初の『Screaming inside can kill.』から今回の『PhAntom.』までは、常に急ピッチで各作品を仕上げてきたことになりますね。
-ここまでハイペースなのは曲が湧き出てきてしょうがない状態ゆえ、なのでしょうか。それとも、あらかじめ決めたプランありきで追われているから?
風輝:両方だと思います。自然と湧き出てくるものと、絞り出しているものが混在している状態というか(笑)。
詩季:ただ、それぞれのアルバムに対してのテーマとかコンセプトも当初から決めてありましたから、何を作りたいのか、何を作るべきかで迷うことは基本的にまずなかったんです。困ったのは時間が足りなかったことくらいですね(苦笑)。
-軽くおさらいをする意味も含め、ここで一応1stから今回の3rdまでの作品について、それぞれのテーマを解説していただけると嬉しいです。
詩季:まず、1枚目の『Screaming inside can kill.』はSick.にとっての始まりやったので、自我の確立というか"自分"というものを表現する必要があったんですよ。そのあとの『II i I vii』で意識していたのは、"闘い"のイメージがわりと強かったですね。そして、今回の『PhAntom.』はホラーの要素やダークな雰囲気、シアトリカルなニュアンスを音と歌詞で伝えていくかたちになっています。
-なるほど。たしかに、表題曲の「PhAntom.」も非常にドラマチックなつくりになっている印象です。
詩季:ある意味、「PhAntom.」は王道なタイプの曲にしたかったんですよ。発想としては、"ギター・ソロから始まったらカッコよくない?"というところから始まり、そのあとにドラムがドコドコやって"あっ、それめっちゃいいやん!"みたいなノリになって、どんどんアレンジが固まっていきました。このAメロがあってBメロへと展開して、サビでドーン! と開けてわかりやすいビート感で攻めていく、みたいなキャッチーさと、そこに独特のゴシックな雰囲気を融合させていくことで、この曲ならではの個性も引き出すことができたんじゃないかと思います。
"まさか、そう来るのか!"というところを狙いたかった
-その一方で、「PhAntom.」の歌詞についてはどのようなプロセスを経てかたちにしていったのでしょうか。
詩季:"PhAntom."は直訳すると、"幻影"とか"幻"という意味なんですね。そして、そのイメージについては今回作ったMVの方でも明確に表しているんですけど、というか正確には映像のプロットの方が先にできて、そこから具体的な歌詞が後追いで生まれていったことになります。
-なるほど、そういうパターンもあるのですね。
詩季:むしろ、MVを作る曲に関しては最初から頭の中に映像が浮かんでくるくらいのポテンシャルを持ってないとダメですね。「PhAntom.」の場合は、映像の中だと白い天使っぽい存在が善良な意識を表していて、黒い色をした悪魔っぽい方の存在は絶望や邪悪なものを象徴しているんですよ。このMVの中では、そのふたりが闘います。
豪:僕は、その闘いの中で派手に背負い投げで飛ばされました(苦笑)。
-なんと。ずいぶんとダイナミックな映像になっているのですね。
詩季:スタントマンの方たちが、壁を走ったり、殺陣(たて)をやったりしてくれているんですよ。おかげさまで、だいぶ迫力のある映像になりましたね。僕自身も、結構アクションしてます(笑)。
-だとすると、このどこか非現実的な世界を「PhAntom.」の中で表現することにより、Sick.が聴き手に対して伝えたかった核心とはどんなことになりますか。
詩季:もちろん、どの作品も重要なことは間違いないんですけど、なかでも僕らとしてはバンドにとっての3作目っていうのが特に重要だと考えているところがあるんですよ。それだけに、今回はちょっとこれまでにはなかった、"まさか、そう来るのか!"というところを狙いたかったんです。だから、音的なところも歌詞の面でも、衣装やヴィジュアルの面でも、これまでより突き抜けたかったという思いは強かったんですよね。それと、結果的にはボツになりましたけど、今回はデモの中に"おばけ"っていう仮タイトルの曲があったくらい(笑)、ホラー要素はかなり意識していました。
風輝:とはいえ、サウンド的なことで言えば、バンドの音自体がしっかりしていることを前提としつつも、バンドとして出す音とはまた別の部分でクラシック的なアプローチを入れていく、というのはSick.としてここまで変わらず重要な部分になっているところがあります。
詩季:そして、その部分がより色濃くなったのがこの3rdですね。ちなみにSick.のレコーディングに関しては、サウンドメイクをしていくうえでのブレーンとしてVXIAという第6のメンバー的な存在が力を貸してくれているんですが、今回の『PhAntom.』の音を煮詰めていくなかでは、彼のおかげで実現できたことが多々ありましたね。僕らのやりたいことと、彼の出してくれたアイディアが見事にマッチしたんですよ。