INTERVIEW
SIXX:A.M.
2016.11.15UPDATE
2016年11月号掲載
Member:James Michael(Vo/Gt)
Interviewer:KAORU Translator:安江 幸子
-Track.6「Catacombs」ではDJ Ashbaのソロがとてもかっこよくてアルバムのフックになっていますが、もともとソロをアルバムに入れたいと考えて作ったのですか? それともたまたま弾いたものがそのまま採用されたのでしょうか?
両方かな。俺はこのバンドのプロデューサーで、このアルバムのプロデューサーでもあるわけだけど、俺にとって個人的にもとても重要だったのは、DJが本当に素晴らしいプレイヤーであることをいかに強調するかってことだった。あいつは俺が今まで一緒にやった中でも最高のプレイヤーのひとりだし、あいつの才能がこのバンドにあるというのはものすごくラッキーなことだからね。商品としてのロック・アルバムにすごいギター・ソロが入らなくなってからもう何年も、ヘタしたら何十年も経つ。一番新しい作品で思いつくのがVAN HALENだからね。それも大昔だ。それで、DJの素晴らしいギターを讃えるのに素敵な方法だと思ったし、同時にあの手のジャンルを讃えるのにもいい方法だと思ったんだ。ラジオでかかっているロックにはギター・ソロがほとんどないこの時代にね。俺たちの曲にはギター・ソロがよく入っているけど、それはそういう音楽こそ俺たちが作りたいものだからなんだ。他のバンドがロックにギター・ソロを入れるのをやめたからって、俺たちがそれに合わせることはないからね。ギター・ソロは表現と表現を繋ぐ重要な箇所なんだ。そういう観点があったから、あいつの素晴らしいパフォーマンス能力を見せつけるのに、少なくともちょっとしたソロの場があることが重要だった。その反面、あの曲のでき方は偶然だったんだ。スタジオで別の曲のトラッキングをやっていたときに、あいつがクールなリフをいろいろ弾きながらウォーミング・アップしていた。それを聴いた俺とNikkiが、"おい、今のは何だ?"と止めたら、"今思いついた"って言うんだ。あいつは他の曲をレコーディングする準備でそれを弾いていただけだったけど、俺は思わず録音ボタンを押してしまったよ。俺が録音していたことにも気づいていなかったんじゃないかな(笑)。録音したものをあいつに聴かせて、Nikkiにも聴かせて、全員でもじっくり聴いてみたけど、美しくてエキサイティングだと思うほかなかった。ただ、これをみんなが聴くことができないのはもったいないと思ったんだ。それでアルバムに入れることにしたんだよ。
-入れてくださってありがとうございます。彼の才能が表れていますよね。
本当にそう。音楽というものが使い捨てになってしまっている今の世の中で、SIXX:A.M.がいつまでも生き永らえる音楽を作るためにものすごく力を注いでいることをみんなに知ってもらいたいんだ。大きく言えばこのバンドのミュージシャンシップだね。
-もうひとつ、Track.8「Without You」のカバーもとても興奮しました。この曲はBADFINGERがオリジナルで、有名どころではHarry NilssonやMariah Carey、他にもHEARTやAIR SUPPLYなど様々なアーティストがカバーしていますが、あなたたちはHarry Nilssonのバージョンをカバーしたのでしょうか?
子供のころから知っていたのはHarry Nilssonのバージョンだね。それが俺の大好きなバージョンだ。君が言うようにこの曲にはたくさんのバージョンがある。本当にファンタスティックな曲だよね。それで、SIXX:A.M.にとって自然なバージョンを作ろうと思ったんだ。大胆にロック・ギターを入れて、ややヘヴィなアレンジにした。でもメロディと歌詞はとてもシンプル且つ純粋で美しいから、ヘヴィさと美しさのコントラストがSIXX:A.M.にはとてもしっくりくると思う。俺たちの曲はみんなそうだけど、美しさとダークネスの間にバランスを見いだすのが狙いなんだ。だからあのカバーをやるのは楽しかったよ。いいバージョンができたと思うし、早くみんなに聴いてもらいたくてワクワクしているんだ。
-これまで闇と光の話を中心にお聞きしましたが、Nikki Sixxは誰もが知るロックンロール・ヒーローであり、ベストセラーとなった著書"The Heroin Diaries"にあるように、壮絶な体験をしていることも周知の事実です。"Vol.2"を完成させたことによって、Nikkiの人生に何か大きな意味をもたらしたのではないかと思うのですが、どう思いますか?
うーん......そういう見方をすることも可能だとは思うね。ただ、あいつの人生が反映されているのは、このストーリーの一部にすぎないんだ。さっきもちらっと触れたけど、このアルバムの中にはSIXX:A.M.が存在しないうちに書かれた曲もあるしね。だからNikkiだけじゃなくて、SIXX:A.M.全員のストーリーが語られている。『The Heroin Diaries Soundtrack』(2007年リリースの1stアルバム)のときですら、全員のストーリーが語られていたんだ。このアルバムの中には俺がもともと自分のソロ・アルバムのために書いた曲が4つあって、俺の離婚について語っているんだ。SIXX:A.M.の音楽は結成以来ずっと、3人全員について語ってきたと思うし、俺たち以外の人に対する俺たちなりの見解でもある。もちろんこのアルバムを、闇と光の間で苦悩するNikkiのストーリーとして解釈するのは可能だけど、このストーリーはDJや俺自身にも当てはまるものなんだ。俺が知っている人、ほぼすべてにもね。俺が思う、そして俺たちが願っているのは、誰かが俺たちのどのアルバムでもいいから聴いてくれたとして、そのストーリーの中に入り込めることなんだ。そのパーフェクトな例が、俺たちが初めて出したシングル「Life Is Beautiful」だね。この曲は俺たちにとって大ヒットだった。『The Heroin Diaries Soundtrack』の曲を書いていたときに書いたものだし、たしかにNikkiのストーリーだ。でも、あの曲にどれだけ多くの人が親しみを感じて、共感してくれたかを考えると、実際にヘロインをやっていた人はそのうちの本当にわずかだと思うんだ。
-そうでしょうね(笑)。
それでもみんな、あの曲に何か繋がりを感じて共感してくれた。復活のストーリー、成功や個人的な苦悩のストーリーこそ、みんなが繋がりを感じることができるものだよね。それがSIXX:A.M.をスペシャルなものにしてくれるんだと思う。俺たちはそういう苦悩について書くことを好んで、そこから音楽を生み出すのが好きだってことに気づいた。そしてそういうものこそ人々が人生のなかで言及してほしいものだってことにもね。
-そうですね。そしてそれを超えたところに希望を見いだしたいものです。あなた方の曲は、希望が確実に存在することを教えてくれるのだと思います。腐らず頑張っていれば実際に希望を見いだすことができると。
そういうことだね。よく"あなた方の個人的なストーリーについて書いているのですか"と訊かれるんだけど、俺はいつもこう言うんだ。"この世界にいる人の人生は誰のものであろうと、映画化されるのを待っているようなものなんだ"ってね。どんな人の人生だって大切なものだ。Nikkiの人生も、俺の人生も、オーディエンスの誰よりも重要だなんてことは絶対ない。朝目覚めて生きづらさを感じる――人間関係だったり、仕事絡みだったり、中毒問題だったり、鬱、孤独だったり......そういうのはどんな人の人生にも訪れる日常的な苦悩なんだ。俺は、どんな人の人生も、他の誰の人生とも同じくらい興味深いものだと信じているよ。
-個人的な体験をシェアしていることにもお礼を言いたいです。そこに親しみを感じて、希望を見いだすことができますし。
ありがとう。本当にそうだといいね。自分たちが人々とコミュニケートできる実感があると、とてもワクワクするんだ。俺たちにとってもみんなにとっても、大切なことだと思う。だからそう言ってもらえるととても嬉しいね。
-これからもSIXX:A.M.がロックンロールし続けることを楽しみにしています。最後に日本のファンにメッセージをお願いします。
俺が初めて日本の土を踏んだのはたしか2年前だったと思うけど、それ以来日本の人たちとはとても美しく大切な関係を築けている気がするんだ。俺にとっては本当に人生を変える出来事だった。だから今年"LOUD PARK"でまた日本に行けるとわかったときは、言葉では言い表せないくらい興奮したよ。日本を離れるときは本当に寂しかった。俺個人としても、SIXX:A.M.としても、この関係を続けること、そしてこの関係を礎に成長していく ことがとても重要なんだ。だから早くまた日本に行きたいと思っている。みんな本当に素晴らしい人たちで大好きだから、またみんなの前で演奏するのが今から待ち遠しいんだ。心の底からみんなにありがとう。