INTERVIEW
ALICE IN CHAINS
2013.05.24UPDATE
2013年05月号掲載
Member:William DuVall (Vo/Gt)
Interviewer:伊藤 洋輔
-アルバム・タイトル『The Devil Put Dinosaurs Here』の意味合いにある“外界の問題”とは、もう少し具体的に聞いてもいいですか?
ユーモアたっぷりのジャブをかましているってとこかな。アメリカには過激派右翼のクリスチャンがいる。彼らはかなりの少数派ではあるけど、自分たちの信仰についてものすごく声高に主張している。そして彼らの信仰の大半は、俺たちの国を、政治的にも社会的にも、彼ら自身が居心地良いと思える時代に後退させようとしている。
つまり、他の人種にたいした権利が与えられていなくて、女性に生殖の権利や決定権が与えられていなくて、同性愛者の権利が与えられていなかった時代にアメリカを戻して、より単純で彼らが思うところのモラルある時代にしたいんだろう。彼らはまた、科学にも反対している。彼らが主張していることの1つに、“進化を信じている人々は‘この骨を見てくれ。我々が発見したこの恐竜の骨は何千万年も前のものだ。放射性炭素年代測定を行なえば、この骨や化石がどれくらい前のものかわかる’と言うが、それは違う。その恐竜の骨は、我々を騙すために悪魔が置いたもの(The Devil Put Dinosaurs Here)なんだ。地球が誕生してからまだ6,000年しか経っていないのだから。聖書にそう書いてある”というものがある。
彼らはマジなんだ。本当にそう信じている。何千という人がそれを信じているのも怖いけど、本当に本当に悲惨なのは、彼らがアメリカ政府の代表を選出していることなんだ。アメリカでは、上院議員がテレビで今のようなことを言っている。下院議員もテレビで、真面目くさった顔でそういうことを言っている。そういうことを信じている人々によって選出されたからだ。そして彼らはかなり強引に、学校で子供たちが科学を学んではいけない、学校は進化を教えてはいけないという法案を成立させようとしている。“同性愛者は結婚してはならない。法の下に平等に守られてはいけない”“妊娠中絶は違法でなければならない。どんな状況下においても女性が中絶出来ないようにする。彼女がレイプされようがかまわない。近親相姦だろうがかまわない”といった法案を通そうとしているんだ。
というわけで、アルバム・タイトルを『The Devil Put Dinosaurs Here』にすることによって、そのことを言及しているんだよ。別に説教するつもりはないけど、ちょっとユーモアを交えて、そういう考え方に挑戦してみたんだ。歌詞には、“No problem with faith, just fear”というくだりがある。つまり、俺たちはクリスチャンを糾弾しているわけじゃない。
-よくわかりました。大変興味深いですね。
フフフ、そうだな。
-素晴らしいタイトルですね。次にプロデューサーは前作に引き続きNick Raskulineczが担当していますが、彼との作業はいかがでしたか?
良かったよ。Nickはいつだって実に熱心にスタジオで作業してくれる。彼はとてもエネルギッシュな人で、とても熱心で、細かいところまで気が行き届いていて、ものすごく勤勉なんだ。俺たちみたいなバンドと仕事をするのは決して楽なことじゃない(笑)。長期戦だからね!毎日長時間の生活が何ヶ月も続くわけだし、バンドには強烈な個性の持ち主たちがいるんだから。でも彼は、それをうまくこなしている。それでも笑顔を絶やさずにいるんだ。
もちろん、幸いなことに彼とは以前にも一緒にアルバムを作ったことがあったんで、まったく馴染みのないことではなかった。今回は、前作で定着させた作業プロセスをさらに洗練させたんだ。レコーディング方法やサウンドの特徴が少しだけ洗練されたと思う。相変わらずサウンドはたくさん重なっていて、ギター・トラックもたくさん使われている。膨大な量の情報がリスナーに迫って来る。ただ今回のアルバムでは、サウンドの重なり方がもう少しはっきりしていると思うんだ。
-また、レコーディングでのメンバー間との雰囲気はどうでしたか?それぞれの持ち味が発揮され、良いケミストリーが生まれたと想像しますが?
プロセスがものすごく長いから、ありとあらゆる心境に陥るんだ(笑)。四季を経験するように、ありとあらゆる感情が押し寄せて来る。でも特に最後の2~3ヶ月は良かったよ。ようやくトンネルの向こうが見えて来そうだったからね。みんな“見えて来たぞ!”って感じだったもの。みんなが、トンネルの向こうの光に向かって突進して行ったんだ、良かったよ。
-重みあるドラムに独自のギター・リフ、一聴しただけでもわかるALICE IN CHAINS節が満載ですが、今作で取り入れた新たなアプローチはあったのでしょうか?制作秘話を聞かせてください。
1つは、「Phantom Limb」のギター・ソロを俺が弾いたということ。これは初めてのことだったな(笑)!それと、音楽に感じられるサヴァイヴァル的要素が気に入っているんだ。このバンドの音楽には最初からそれがあったけど、ここ最近の2作ではそれがさらに顕著になったと思う。このバンドは、陰々滅々としていて、死や腐敗についての歌詞を扱うことで知られてきた。それは相変わらず健在だけど、新しい音楽、特に『Black Gives Way To Blue』と『The Devil Put Dinosaurs Here』には、サヴァイヴァルの要素が顕著に出ていると思う。このバンドを復活させ、存続させ、そして前進させるために俺たちがやって来たことがあったおかげで、音楽や歌詞がこういう形で明確になったんじゃないかな。