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INTERVIEW

難波章浩

2012.09.05UPDATE

2012年09月号掲載

難波章浩

Member:難波 章浩

Interviewer:荒金 良介

-そうなんですか?

“みんなで頑張って行こうぜ!”と言った方が変わるんじゃないかと思ってた。“あいつはダメだよ”と言うよりも、“あいつを良くしてやろうぜ”という気持ちの方が強くて。それは若かったからだと思うし、“社会はなんてどうでもいいや”、と思っていたのかもしれない。自分たちの仲間や世代が最高だったら、それでいいじゃないのって。それが大人になって、いろんなことが分かっちゃって。親になると自分のことだけじゃなくなるし、頑張らなきゃいけない存在もできたから、すごく責任感が出てきたんだろうね。もちろん、みんなで頑張ろうという気持ちは持ちつつ、俺はここでもっと直接的に怒ろうと思ったんだよ。

-そこに踏み込めたことも大きな変化ですよね。

もう我慢ならなかった。言わなきゃって。みんなで頑張ろうだけじゃ無理だし、今は強い表現が必要なんじゃないか、怒らなきゃいけない対象は必ずいるんだなって。

-今回は“ただ頑張ろう!”という希望ではなく、怒りや悲しみなどダーク・サイドをしっかり書き切った上での希望を描いているので、重みや説得力が違うんですよね。

いろんな人生のハードルを乗り越えてきたからね。ハイスタが休止して、パソコンを持ってなかった自分がパソコンを始めて、曲を作るのも超大変だったのよ。それと子供ができたときもマジでビビったし(笑)、いろいろ乗り越えてきたから、人間的に幅が広がったんじゃないかな。自分にはそういう経験があるから、上から目線ではなく、その経験をちゃんと若い人に届けるべきだなと思ってね。俺なりのパンク・ロックをちゃんと提示したかったんだよね。

-今作を聴いて、ハイスタの復活抜きにはあり得ない内容だと感じたんですよ。なぜかと言うと、2011年は難波さんにとって、ものすごく劇的な1年だった。2月にパンク・ロック解禁を謳った作品を発表し、3月にそのレコ発(渋谷クアトロ)で“AIRJAM級のフェスをやります!”と告知し、その約1週間後に震災が起き、4月に“9.18 ハイ・スタンダード AIR JAM。届け!!!”とメンバー3人の写真と共にツイッター上で宣言し、9月にAIR JAMとハイスタの両方を11年ぶりに本当に復活させた。おそらく、難波さんの人生の中でも経験しえないようなドラマチックな1年を過ごした。それが今作にも大きく影響を与えているんじゃないかなと……どうですか?

そうだね。間違いなく繋がってるね。ハイスタの復活がなかったら、今回のアルバムはできなかったかもしれない。まあ、分からないけど……それは結果論だからね。

-そうなんですよ。誰も予想できなかったことが昨年起きた。で、振り返ってみると、ものすごく劇的な流れの中でハイスタは復活した。

“自分もこれから行くぞ!”と思って、その1週間後ぐらいに震災が起きたから、俺自身も相当落ち込んだんだよね。世の中を見ても切なくなるし、まあ、俺の悲しみなんて東北の方に比べたら、大したことはないんだけど。でも、そこではっきりしたことがあってね。やっぱり、諦めないってことなんだよね。諦めないって気持ちを表現しなきゃと思って。自分の中でいろんなことがあったけど、それを越えて、諦めないという気持ちを届けることが俺の使命だなと。今回は自分で“最高傑作できました!”とか言ってるけど、そんなに簡単にできるものじゃないし、ほんとに頑張らないとできないんだよ。今回はほんとに頑張ったんだよね。諦めない気持ちを東北に、日本中に、世界中に届けたかったんだよ。それで日本の奴らも頑張ってるんだなと思ってもらいたくて。外国の人の方が日本のシステムや政府のことをちゃんと批判してたりするじゃん。今でこそデモとかやってるけど、当時は何も言えなかった。原発のこともタブーだったし……それも全部言おうよって。“思っていることを言えばいいじゃん、自由に言おうぜ”って。俺は自分の活動、AIR JAMやハイスタを通して、まずはファンの人たちに元気になってもらいたかった。さらにそこから影響が生まれるなら、もっといい世の中になればいいなと願ってるんだよね。“これは違うと思うんだよなあ”と思いながら、日々を過ごす必要はもうないんだよ。こんな時代だからこそ、また若者たちはぶちかませばいいんだよ。この世の中を変えてやろう、楽しくしてやろうぜって。

-絶対諦めるな、絶対不可能はない、それをはっきり言えたのが今作ですよね。

うん、自分が夢を追いかけて、その夢を叶えられているから、諦めないでねって言えるんだよ。それが1番伝えたいことなんだろうな。政治に対する批判とかが目立つかもしれないけど、本当に伝えたいのは心なんだよね。

-またハイスタの話に戻って恐縮ですが、あのメンバー3人が再び同じステージ立つことは、もう不可能だろうなという状況でしたよね。

そこまで行っちゃったもんね。

-その不可能を可能にしたのが昨年だった。震災きっかけとはいえ、メンバー3人がハイスタを復活させようと気持ちを1つにしなければ、絶対にありえなかったわけで。そこは大きなポイントじゃないですか。

そうだね。震災がなかったから、復活はなかったかもしれないよね。ハイスタのファンに寄り添いたい、という気持ちがあったからね。