FEATURE
MACHINE GUN KELLY
2022.04.05UPDATE
2022年04月号掲載
Writer 山本 真由
誰も知らない田舎の高校生がちょっとした思いつきでしたことが、一度ネットを通して炎上したら一生の枷になるデジタル・タトゥーとなってしまう、この時代。誰もが無難で清潔で正しいことだけ求めるようなこの世界に、みんな少し息苦しさを感じていないだろうか。それに加えて、パンデミックや不穏な世界情勢......毎日暗いニュースばかり。そんな時代を反映するかのように昨今、2000年前後に盛り上がったポップ・パンクが再び脚光を浴びつつある。
2000年代と言えば、長引く不況による就職氷河期や、アメリカの同時多発テロをはじめとした危機感のある世界情勢の中で、若者たちが自分たちの居場所を求めてポップ・パンクやエモ/スクリーモといった音楽に傾倒していった時代だ。しかしブームは繰り返すというが、これは単なるリヴァイヴァルではなく、新しい火種から生まれた再燃なんじゃないかと思う。
そして、MACHINE GUN KELLYは確実にその火種のひとつ。そもそもラッパーとしてすでに大成し、影響力の大きいアーティストとなっていた彼がポップ・パンクへ転向したことは、世界の音楽シーンに大きな影響を与えた。ポップ・パンクを聴いて育った本人にとっては原点回帰ということになるのかもしれないが、ロックは売れないと言われ、新しいバンドがメイン・ストリームに出てくることが少なくなって久しかった時代において、なぜ彼はギターを握ったのか。もちろんヒップホップ文化やラップ・ミュージックは創造性をかき立てる原動力ではあるが、何しろ型にハマることを嫌うこのMGK(MACHINE GUN KELLY)。彼にとっては、もっと自由な表現が必要だったということだろう。
前々作『Hotel Diablo』(2019年)でもすでにその片鱗を見せ、収録曲「I Think I'm Okay」では、BLINK-182のTravis Barker(Dr)とYUNGBLUDをゲストに迎え、独自のロック・スタイルを披露している。そして、前作『Tickets To My Downfall』(2020年)は、5枚目のアルバムにして、彼にとっては初のロック・アルバムでもある。それは、ロックから遠ざかっていた世間の目を覚まさせるのには十分で、またギター・ミュージックに馴染みのない現代のキッズの目には新鮮に映ったことだろう。クロスオーバーというよりは、完全にロック・サイドに寄った、その振り切った感じがまたMGKらしかった。節回しには独特のクセもあるが、カラッとしているようで少し影のあるメロディなんかは、特にBLINK-182へのリスペクトが感じられ、"あぁ、ホントに好きなんだなぁ"と納得してしまう。
そんな前作を踏まえて、さらに一歩踏み込んだMGK流のポップ・パンク・アルバムが、今回の新作『Mainstream Sellout』だ。タイトルからしても、かなり強めの主張が入るのはラップ文化出身ならではなのかもしれないが、とにかく前作で大きく路線変更したことに対して強い自信と確信があるのだろう。セルアウト上等、売れてるってことは、実際リスナーの評価があるということだ。そんなこんなで、今作も前作に引き続き痛快なポップ・パンク作となっている。しかし、世間ではY2Kブームなんて言われているが、このアルバムはただの2000年代のポップ・パンクの焼き増しではない。BRING ME THE HORIZONが参加した「Maybe」は、エモ/スクリーモ的な懐かしいトラックをベースに、新しいポスト・ハードコアの潮流も加味した意外性もあるナンバーにアップデート。そして、Lil Wayneの参加した「Drug Dealer」は、現代的なポップスにロック・アレンジを入れたような新機軸ナンバーだ。かと思えばアルバム・タイトル・トラックの「Mainstream Sellout」は、これでもかというくらいストレートなポップ・パンクを叩きつける。
今作は、ジャンルへのリスペクト感の強かった前作よりもさらに、今っぽさが強い。WILLOWがゲスト参加した「Emo Girl」が"Rock Girl"でも"Punk Girl"でもないあたりにそれがよく出ている。時代は新しいレベル・ミュージックを必要としているのだ。
MACHINE GUN KELLYヘヴィ・リスナーの国内アーティストから
リリースに寄せてコメントが到着!
N∀OKI (ROTTENGRAFFTY)
全く先入観無しで
初めて聴いた
MACHINE GUN KELLY、
『Mainstream Sellout』。
解放してゆく独創的な潔さと華やかに時に切なく響きわたる歌声。
初めての感覚と懐かしい感覚がマーブルされた多彩すぎる楽曲達!
おっしゃ!ギターかき鳴らして曲創ろッ!
NOBUYA (ROTTENGRAFFTY)
MACHINE GUN KELLYを追っかけるきっかけになった曲が「I Think I'm Okay」。
シンプルな曲構成、シンプルなメロディ、渋い声がとても気持ちが良くカッコいい。
たくさんのアイデアを詰め込んだカッコいい曲を作るのは大変だ。
たくさんのアイデアを削ぎ落としカッコいい曲を作るのはもっと大変だ。
ポップ・パンクをここまで押し上げたMACHINE GUN KELLYの勇気と才能に敬服する。
日本語でいつかポップ・パンクにチャレンジしてみたい。
今回の『Mainstream Sellout』は自由とロックと覚悟を感じた。
もっともっと聴き込んでMACHINE GUN KELLYを感じたいと思う。
神尾晋一郎
・MACHINE GUN KELLYへの想い
ドラマチックでエモーショナル、というとチープな表現になるが、それくらいMGKの人生は濃厚で印象的で強烈。
そして、彼の発する低音域に脳を揺さぶられる感じが堪らなく好き。
『Lace Up』から『Hotel Diablo』を経て、こちらの期待をいい意味で裏切って常に新たな次元を見せてくれるMGK。
ミュージシャンとして進化を続けているよね、いやほんとかっけぇ。
・アルバム楽曲を聴いての感想
『Mainstream Sellout』一曲目からゴリゴリなのにラップで歩んだ世界も内包してるのやばい。
アルバムを通して、まさに積み重ねてきた人生が歌われている。このポップ・パンクは泣けるしノれる、最高。
団長 (NoGoD)
私はヒップホップには全く興味が無いので、恥ずかしい話だが前作『Tickets To My Downfall』がロック・アルバムとして久しぶりに全米1位を取ったニュースで初めてMGKを知った。正直ラッパーが遊びでやってるんだろと思ってた自分を殴ってやりたい。それくらいちゃんと俺たちが愛したポップ・パンクを今作もしている。センスがある人ってなにやってもカッコいいんだなと、只々嫉妬しかない。やっぱり悔しいから自分は殴らない。
有馬えみり (PassCode)
昨年「Daywalker! (Feat. CORPSE)」を聴いて、MACHINE GUN KELLYはトラップ・メタル系のヴォーカルもできるんだ!と表現の幅広さにド肝を抜かれました。
ニューアルバムで特にお気に入りの曲は「Ay! Feat. Lil Wayne」です。落ち着いたグランジチックなギターのループと、3連符系のラップ部のブレンドがとても魅力的でした!
4s4ki
アルバムリリースおめでとうございます!
私は100%感覚で音楽を作るので、あまり理論的なことは言えませんが、素直に収録されているどの曲もかっこいいと思いました。
ファッションもステージパフォーマンスも魅力的で、以前から存じ上げており、このアルバムリリースをきっかけに、より彼のことを知りたいと思いました。
私のピックアップしたSpotifyのプレイリストにも、一曲追加させていただきました。
いつか一緒に曲つくりたいです!
RELEASE INFORMATION
MACHINE GUN KELLY
▼リリース情報
MACHINE GUN KELLY
ニュー・アルバム
『Mainstream Sellout』
NOW ON SALE!!
UICS-1388/¥2,750(税込)
amazon
TOWER RECORDS
HMV
※歌詞・対訳・解説付
※日本盤ボーナス・トラック2曲収録
■デジタル・アルバム
1. Born With Horns
2. God Save Me
3. Maybe Feat. BRING ME THE HORIZON
4. Drug Dealer Feat. LIL WAYNE
5. Wall Of Fame (Interlude)
6. Mainstream Sellout
7. Make Up Sex Feat. BLACKBEAR
8. Emo Girl Feat. WILLOW
9. 5150
10. Paper Cuts (Album Version)
11. WW4
12. Ay! Feat. LIL WAYNE
13. Fake Love Don't Last Feat. IANN DIOR
14. Die In California Feat. GUNNA & YOUNG THUG
15. Sid & Nancy
16. Twin Flame
17. Love Race Feat. Kellin Quinn ※日本盤及び海外限定ストア・ボーナス・トラック
18. Why Are You Here ※日本盤及びオフィシャル・ストア・ボーナス・トラック
配信はこちら
EP
『Lockdown Sessions』
NOW ON SALE!!
1. Roll The Windows Up (Smoke And Drive Part 2)
2. Pretty Toxic Revolver
3. In These Walls (My House)
配信シングル
「Emo Girl Feat. WILLOW」
NOW ON SALE!!
配信はこちら
- 1
T$UYO$HI
(The BONEZ/Pay money To my Pain)
Travis Barkerの影響なのかなんなのか、そこまで俺は詳しくないけどここ数年で完全にロックシンガー的方向に振り切りましたね。
でも良いと思います。全然好きですね俺は。
そして参加する女性シンガーが毎回みんないい!
洋楽も邦楽もパッとしないロックシーンにおいて、彼の存在は今とてもありがたいと思う。
一番好きな曲、というかMVはやはりYUNGBLUDとやった「I Think I'm Okay」。
あれは刺さりました。現代の「The Taste Of Ink」(THE USED)でしょ!