FEATURE
NICKELBACK
2017.06.13UPDATE
2017年06月号掲載
Writer 井上 光一
NICKELBACK。その名を口にするとき、自称ロック通の面々が浮かべるあの皮肉めいた、憐れむような表情は、10年代も後半を迎える今も、どうやら変わらないらしい。冗談や揶揄の標的になりがちな面も含めて。同時に、世界的に圧倒的なアルバム・セールスを誇り、ここ日本でも2009年に実現した、歓喜に満ちた来日公演以降、着実にその人気を不動のものとしている事実を鑑みるに、音の好き嫌いはともかく、イメージ先行の批判などは実に空虚なものなのだと、この場を借りて断言させてもらおう。
本作は、今年1月にBMGと新たに契約してから初となるアルバムであり、通算9枚目となるスタジオ・アルバムである。前作『No Fixed Address』(2014年)では、ファンク風のアレンジやラッパーをフィーチャーした楽曲に挑戦するなど、新たな一面も見せていたが、本作はアルバム全体を通して、アグレッシヴなNICKELBACK流儀のロック魂が込められた作品となっている。先行シングルのTrack.1「Feed The Machine」は、力強いギター・リフとタイト且つヘヴィなグルーヴのリズム隊で織り成す強力なナンバー。同じくヘヴィなリフで攻めるTrack.2「Coin For The Ferryman」では、一度聴いただけで耳に残るサビが、早くもスタジアムでの盛り上がりを予感させる。Track.4「Must Be Nice」やTrack.6「For The River」などでも導入された、熱いギター・ソロも聴きどころであろう。キャリアを重ねた今も、決して枯れることなく、自分たちのルーツに対する敬愛を忘れることなく、ヘヴィでラウドなロックもきっちりこなしてくる彼らの態度は、実に頼もしい限り。喉の手術を経たChad Kroeger(Vo/Gt)による、ハスキーで艶っぽいヴォーカルも絶好調で、Track.3「Song On Fire」やTrack.5「After The Rain」といった得意のバラード曲においても、圧倒的な説得力で聴き手を引き込んでいく。個人的に気に入ったのはTrack.9「Silent Majority」。新機軸というわけではないが、彼らが過去に作り上げた数ある名曲と比べても、非常にエモーショナルであるし、特にサビのメロディに絡みつくような言い知れぬ悲哀は、胸に迫るものがある。日本人好みのメロディであろう。もちろん、ドラマチックな楽曲展開で魅せるTrack.7「Home」にしても、アコギなどを使った、映画のサウンドトラック風の雰囲気のイントロから、緊張感のあるベースに導かれ、ヘヴィな展開へと雪崩れ込むTrack.8「The Betrayal(Act III)」にしても、常にアンセミックなサビが用意されているのは、彼らの曲作りの上手さを端的に物語っている。産業ロックだなんだと批判するのは簡単だが、その実、容易に楽曲として昇華できるものではない。それは、シンガロング必至のTrack.10「Every Time We're Together」で頂点を迎えるのだ。こういう曲を惜しげもなく披露できるのも、彼らの強みなのである。ラスト曲は、前述した「The Betrayal(Act III)」と呼応するインスト曲、Track.11「The Betrayal(Act I)」。インスト曲でアルバムの幕が閉じるのは、バンド史上初となる試みであろう。
安定のNICKELBACK節を堪能できる作品であり、それはすなわち、代わり映えしないということと同義でもある。それでもなお、己の信じるロック道を邁進し続ける、愚直なまでのスタイルおよび音楽性を、クールじゃないと冷笑する前に、彼らの持つ熱い熱いロック魂に触れてみてほしいと切に願う。本作を引っ提げた日本ツアーの早急な実現にも、ぜひ期待したいところだ。
▼リリース情報
NICKELBACK
9thアルバム
『Feed The Machine』
WPCR-17723/¥2,300(税別)
2017.06.16 ON SALE!!
[WARNER MUSIC JAPAN]
amazon
TOWER RECORDS
HMV
1. Feed the Machine
2. Coin for the Ferryman
3. Song On Fire
4. Must Be Nice
5. After the Rain
6. For the River
7. Home
8. The Betrayal(Act III)
9. Silent Majority
10. Every Time We're Together
11. The Betrayal(Act I)
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