FEATURE
RANCID
2014.10.14UPDATE
Writer 山本 真由
RANCIDが、ついに再び動き出した! 昨年からRANCIDニュー・アルバムがそろそろ出るぞ......という噂はあったものの、Lars Frederiksen(Vo/Gt)は自らが主体となって結成したOi!バンド、THE OLD FIRM CASUALS(今年の夏には2ndアルバムをリリース)が上手くいっているようだし、Tim Armstrong(Vo/Gt)は、自分たちのルーツを確認するようなカバーを中心としたバンド編成のソロ活動"TIM TIMEBOMB"を楽しんでいるようだったので、RANCIDの新譜は期待しすぎず待とうと、ファンは大人しく、でも心待ちにしていたのだ。
そもそもニュー・アルバムの計画は、前作がリリースされた翌年の2010年ごろから考えられていたらしく、2011年には制作のために動き始めていたようだ。というのも、2012年はバンドの結成20周年にあたるアニヴァーサリー・イヤーだったので、それに合わせてアルバムを引っ提げ20周年ツアーをやるという構想があったらしい。ところが、これは計画通りにいかず、2011年にはスタジオ入りするものの、結局はTimがTravis Barker(BLINK-182)とやっているサイド・プロジェクト、THE TRANSPLANTSのアルバム(『In A Warzone』2013年リリース)を先に出すことにしたらしい。もちろん、RANCIDファンはそんな"シェフの気まぐれパスタ"並みに日常的なTimの気まぐれには慣れっこだから、そんなことで文句を言ったりはしない。別に記念日に特別なことをしてくれなくたって、RANCIDがRANCIDであり続けてくれればそれでいいと思っている。それだけの信頼と実績があるバンドだからこそ、常に自由なクリエイティヴ活動を許されているのかもしれない。とはいえ、RANCID は20周年に何もしなかったわけではなく、実際彼らはUKの大御所Oi!パンク・バンド、COCK SPARRERの40周年記念と合同アニヴァーサリー・ライヴを行い、いくつかのフェスでヘッドライナーを務めている。そして翌年の2013年、ついに新作のレコーディングを開始したことがSNSにアップされ、RANCIDニュー・アルバムそろそろリリースの噂......という流れになるわけだ。
そんなわけで時間はかかったが、実に5年ぶり8枚目となるニュー・アルバムである今作『...Honor Is All We Know』のリリースが発表された。しかもアルバムのリリースまであと1ヵ月をきったタイミングで情報解禁という、まるで待たせたファンへのサプライズ・プレゼントであるかのような突然の告知だった。
最新のアーティスト写真を見ると、一時期サンタクロースみたいに髭モジャで別人のようになっていたTimもさっぱり元の"らしい"姿に戻って、オリジナル・メンバーのひとりであるMatt Freeman(Ba/Vo)はすっかりバリ渋なロマンス・グレーになって、2006年に加入した最年少のドラマーBranden Steineckert(ex-THE USED)も風格が出てすっかりベテラン・バンドに馴染んだ印象だ。Larsは、これまでに数々のサイド・プロジェクトや別バンドをやっているが、音楽性もフラフラしないし、見た目もほぼ変わらず。昔からオジサンなイメージだったしね(笑)。という、安定したラインナップでの2作目。前作はBrandenが加入し新体制となったバンドがひとつになるための"絆"、そしてバンド=彼らの"人生"そのものがテーマとなった、温かな雰囲気と遊び心が満載のリラックスした作品だった。今作は、そんな前作とはうって変わって一切の小細工なしの1stや2nd、5thあたりのストイックでストレートなRANCIDサウンドを追求した作品となった。Track.1の「Back Where I Belong」が鳴りだした瞬間から、思わずニヤっとしてしまう"これぞRANCID"なコテコテのパンク・ロック。おハコのスカ・ナンバーも含め、衰えることのないアグレッションやストレートな曲調は初期を彷彿とさせるが、前作に引き続き、Tim、Lars、Mattの3人がリード・ヴォーカルをとる楽曲もあり、全体を通してこめられたポジティヴなメッセージやどことなく明るいトーンは、これまでいいバンド人生を歩んできた人たちなんだな、という感じ。また、今作でも結成当初からRANCIDを支え続けている、Epitaph Recordsの社長でBAD RELIGIONのギタリストでもあるBrett Gurewitzが、プロデューサーを務めている。そして、そのBrettを始めとした、信頼のおける仲間たちもコーラスやサポートとして参加(資料によるとSTREET DOGSのフロントマンMike McColganも参加している)。旧知の仲間たちに囲まれて作られたからこそ、それぞれの楽曲の方向性にブレがなく、まとまった楽曲が揃った。
今作を聴いて改めて、RANCIDというのは本当にパンク・ロックしかない人たちだけど、この人たちがパンクであり続けてくれて本当にありがとうという思いで胸がいっぱいになった。まさにファンにとっては待ちに待ったRANCIDの帰還、これぞパンク・ロック!という作品だが、もちろんこれをファンだけでシェアするのは勿体ない。最近、特に洋楽のパンク・シーンがめっきり大人しくなって、パンクとはなんぞや、なんて小うるさいことを言うオジサンたちはめっきり減ったけれど、もしパンクってなんだろうと考えたことのないキッズがいたら、ぜひこのアルバムを手にとって、たまにはオジサンの戯言にも耳を貸してやって欲しい。もしかしたらそこに、素直に音楽を楽しむことや、心の底からわき上がる感情に拳を握り、声を上げることの原点が見つかるかもしれない。
RANCID
『...Honor Is All We Know』
[SONY MUSIC JAPAN]
EICP1617 ¥2,400(税別)
2014.10.22 ON SALE!!
1. Back Where I Belong
2. Raise Your Fist
3. Collision Course
4. Evil's My Friend
5. Honor Is All We Know ※1stシングル
6. A Power Inside
7. In The Streets
8. Face Up
9. Already Dead
10. Diabolical
11. Malfunction
12. Now We're Through With You
13. Everybody's Sufferin'
14. Grave Digger
-JAPANESE BONUS TRACKS-
15. Breakdown
16. Something To Believe In A World Gone Mad
17. Turn In Your Badge
18. Rancid's Barmy Army
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