FEATURE
RANCID
2009.05.31UPDATE
Writer 山本 真由
フェイバリットPUNKバンドを聞かれて、RANCIDを真っ先に挙げるPUNXやKIDSがどれだけいることだろう。THE CLASH直系のストレートなPUNK ROCKのアティテュードとSKAのスパイス、そして独特のリリックセンス。ルーツロック・レゲエ等の要素を取り入れ、ジャンルレスな楽曲を持ちつつも、結成当初から変わらぬスタンスで「PUNK」であることにこだわり続けた彼らの新作が、前作から6年の時を経て発表される。
「7作目にして俺自身一番好きな作品に仕上がった」と、Tim Armstrong(Vo&Gt)が語る今作は、前作同様、今や世界最大のインディ・レーベルとなったEpitaph RecordsのオーナーでありBAD RELIGIONのギタリストでもあるBrett Gurewitzをプロデューサーに迎え、オリジナル・ドラマーのBrett Reedに代わって2006年に加入した元THE USEDのBranden Steineckertが参加した「新生・RANCID」初のアルバムである。
現在RANCIDのMySpace上で、このアルバムからの1stシングル「Last One To Die」が公開されているが、今までアルバム毎に違った魅力を持ってきた彼らだけに、実に「今まで通りのRANCIDらしい」キャッチーなこのシンガロング・ソングに対して新鮮な感動を抱けなかったファンも多いかと思う。しかし、「Let The Dominoes Fall」と題されたこの最新アルバムを全曲聴くと・・・一曲目「East Bay Night」を聞いた瞬間から、そんなネガティヴな印象は消え去ってしまう。新メンバーのBrandenを含む全員がコーラスに参加し、バンドとしての一体感が増した、RANCID史上最高のポジティヴなパワーに満ち溢れた今作は、「RANCIDがベストを尽くす為に、俺達ファミリーは集結した」というTimの言葉通り、「絆」というテーマが全曲からガツンと伝わってくる熱い作品になっている。
中でも特筆すべきは、7thアルバムにして初めて「3人がリード・ボーカルをとっている曲」が入っているという点だ。2ndアルバムでLars(Vo&Gt)が加入して以来、リード・ボーカルをとることが少なくなったMatt(Ba&Vo)が、今作では相変わらずの渋いダミ声を存分に披露してくれている。そして、イラク派兵というアメリカの暗部を描きつつも、軽やかで南国的なサウンドにTimの甘いボーカルが冴える9曲目「Civilian Ways」など、今までのアルバム収録曲では無かったアコースティック・トラックも今回の新たな試みである。その他、三曲目の軽快なSkaナンバー「Up To No Good」では、今年のフジロックで来日が決定している伝説のソウルマン・Booker T. Jonesがハモンドオルガン”B3”で参加し、楽曲に華を添えていたり、2nd・3rdあたりのストレートなメロディを思わせる14曲目「Dominos Fall」があったりと、一曲一曲が実にワクワクさせてくれるアルバム構成だ。作品全体を通して聴くと、先述の「Last One To Die」が古くて新しいRANCIDをより鮮明に印象付ける名曲であるということがわかる。
これは言い過ぎでも何でもなく、RANCIDの最高傑作であり、ファンをも含むRANCIDファミリーの「絆」を象徴するPUNKアルバムの名盤誕生だ。
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