FEATURE
DOWN
2014.06.19UPDATE
2014年06月号掲載
Writer 荒金 良介
空港が近づくと、飛行機の小窓から興味津々で外を覗いた。うわっ、と思わず声が漏れる。周囲一体に草が生い茂った沼地が広がっていた。南部の泥臭いサウンドを指して"スワンプ・ロック"と言うが、眼前の光景を見て激しく膝を打った。私事で恐縮だが、今年数週間ほどニューオリンズに行ってきた。言わずと知れたジャズ発祥の地、空港名もルイ・アームストロング・ニューオリンズ国際空港である。かつてフランス、スペインの植民地だった名残は今も色濃く、街を歩くと、バルコニーにはヨーロピアン風の綺麗なアイアンレース(鉄細工)が目を楽しませてくれる。ただし、肌にまとわりつく湿気の高さと蒸し暑さはやはり独特で、この風土が人々をある種熱狂的な思考や行動に駆り立てるのだな、と感じた。それとジャズ好事家の方には申し訳ないが、ニューオリンズと言えば、僕の中ではあのPANTERAのPhil Anselmo(Vo)が生まれた土地として強くインプットされている。
そのPhil率いるDOWNがこのたび日本限定仕様で『Down IV Part 1&2』をリリースする。前者『~Part 1』は2012年に発表され、輸入盤のみの扱いだったが、今回は最新作の後者『~Part 2』とカップリングで発売されることになった。前作を買いそびれた方は1粒で2度おいしい内容だ。
DOWNは当時PANTERAと並行する形で、1991年に活動をスタート。CORROSION OF CONFORMITY、EYEHATEGOD、CROWBARなど同郷のニューオリンズ人脈でメンバーを固め、それぞれの本職バンドでは発揮できない趣味嗜好をぶつけ合う音楽を鳴らす。ざっくり言うなら、BLACK SABBATHを始祖にしたダークでブルージーな沼地に片足をずっぽり入れた音色だ。それでもなお、二番煎じのフォロワーとは一線を画す強烈なアイデンティティを叩き付ける力量には恐れ入る。バンドは1995年に1stアルバム『Nola』でデビューを飾り、全米チャート55位をマーク。その後、メンバー交替や活動休止を挟み、1999年にPANTERAのRex Brown(Ba)が加入し、2002年に2ndアルバム『Down Ⅱ:A Bustle In Your Hedgerow』を発表した。"Ozzfest"にも参戦するが、再び活動休止に陥り、2007年にようやく3rdアルバム『DOWN Ⅲ: Over The Under』を完成させた。この間にはDimebag Darrell(Gt)の死やハリケーン・カトリーナと悲劇が重なり、それが作風にも落とし込まれたが、全米チャートでは26位を記録。それから2011年にRexが脱退し、Phil(Vo)、Pepper Keenan(Gt/CORROSION OF CONFORMITY)、Kirk Windstein(Gt/CROWBAR)、Patrick Bruders(Ba)、Jimmy Bower(Dr)というメンツで今回の『~Part 1』は制作されたが、2013年にKirkが抜け、新たにBobby Landgraf(Gt)が加わり、2014年に『~Part 2』を完成。2作品続けて聴くと、続編的とも言えるし、DOWNの根っこにある渋さや粘りは不変で、トグロを巻く鉛色のサウンドは健在だ。特に『~Part 2』はPANTERA時代の殺気立つグルーヴ感が随所で顔を出し、またラスト曲「Bacchanalia」の後半のアコギとエレキが溶け合う美しいメロディは絶品で、そこに重なるPhilの憂いを帯びた優しい歌声はPANTERAでは決して見られなかった素顔を曝け出している。
DOWN
『Down IV Part 1&2』
[WARNER MUSIC JAPAN]
WPCR-15739 ¥2,457(税別)
2014.7.9 ON SALE!!
[amazon] [TOWER RECORDS] [HMV]
1. Levitation
2. Witchtripper
3. Open Coffins
4. The Curse Is A Lie
5. This Work Is Timeless
6. Misfortune Teller
7. Steeple
8. We Knew Him Well
9. Hogshead/Dogshead
10. Conjure
11. Sufferer's Years
12. Bacchanalia
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