FEATURE
DEADMAU5
2012.09.12UPDATE
2012年09月号掲載
Writer KAORU
巨大なネズミ頭のぬいぐるみを被ってパフォーマンスしている姿が有名な、カナダはトロント出身のアーティストDEADMAU5ことJoel Thomas Zimmerman。彼は15歳というかなり早い時期からデスクトップでの音楽制作を始めてからどんどん独自の製作技術を培っていき、これまでにプログラミング・ソフトやアプリケーションを開発して世に売り出しているという。更にDEADMAU5のパフォーマンスに使用するソフトも自身で手掛けているという本格ぶり。彼の知名度はMySpaceやBeatpoat、またはラジオなどでどんどん拡がっていき、これまでに『For Lack Of A Better Name』、『4×4=12』、『Random Album Title』とコンスタントにアルバムをリリースし、グラミー賞にもノミネートされている。第54回グラミー賞では、至上初となるエレクトリック・ダンス・ミュージック特集のテレビ放送枠内でパフォーマンスも行い、なんと米ロリーリング・ストーン誌ではダンス・ミュージック・アクトとしては初となる表紙も飾っている。因みに激ロック・マガジンでも、ドラムンベースやダブステップではなく、所謂本格派の4つ打ちアーティストを取り上げるのは彼が初めてだ。正に今、飛ぶ鳥を落とす勢いで世界中を席巻しているDEADMAU5。なお、激ロック的には、SKRILLEXの系譜で聴いていただきたい本格的なダンス・ミュージック・アクトである。
彼の最新作『>album title goes here<』(邦題:>ココにタイトルを入力<)が、いよいよ9月26日にリリースとなる。その内容についてレビューさせていただこう。近未来的を彷彿とさせる独特なリズムの「Superliminal」で幕を開け、Wolfgang Gartnerが参加したJUSTICEを髣髴とさせるエレクトリック・チューン「Channel 42」、ウィスパー・ヴォイス的な歌が心地良く、ニュー・ウェーブ的なアプローチの「The Velt feat. Chris James」、一気にキックの音が分厚くなり序々にスペーシーな雰囲気を盛り上げていく「Fn Pig」、そして激ロック的には特に注目して欲しい、あのMY CHEMICAL ROMANCEのGerard Wayがヴォーカルとして参加しているロッキン・エレクトロ・ナンバー「Professional Griefers」。この曲ではGerardの声に少しエフェクトがかかっており、歌唱法的にもGerardの新しい側面が垣間見える。ここからはDEADMAU5仕立ての上音使いが印象的なエレクトリック・チューン・ワンダーランド!DAFT PUNKからの影響を覗かせながら、07年以降のロッキン・エレクトロを始め、プログレッシブ・ハウス、トランス、テクノなど様々なダンス・ミュージックのエレメントをブレンドし、独特の世界観を貫いている。後半ではチル・アウトしていき、CYPRESS HILLとコラボレートした「Failbait」では完全にヒップホップなサウンドを聴かせてくれる。ここも要チェック!
1曲1曲の尺は長いが、エレクトリック・ダンス・ミュージックにおける“必然の長さ”というものをよく研究して理解し、自身のサウンドへと昇華させる手腕はとても見事だ。SKRILLEXから1歩踏み出したダンス・ミュージックに興味のある人や、所謂エレクトロコアが好きなリスナーにも是非聴いていただきたい至極のダンス・アルバムである。
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