FEATURE
DEATHSTARS
2012.01.10UPDATE
2012年01月号掲載
Writer 米沢 彰
2000年結成、スウェーデン出身のゴシック・インダストリアル・バンド、DEATHSTARS。そのルーツは1993年に結成されたブラック・メタル・バンドSWORDMASTERに遡る。SWORDMASTERとして活動を続けていた彼らはヴォーカルにAndreas Bergh、ギターにErik Halvorsenを迎えつつ、『SWORDMASTERが変態した後の姿』というコンセプトを掲げDEATHSTARSへと転生を図った。(注:変態とは蝶の蛹から成体への変化のように完全に姿形を変える過程を指す)SWORDMASTER、DEATHSTARSという響きから映画『STAR WARS』との関わりが連想されるが、あくまで偶然であり特に意識はしておらずDEATH STARSはあくまで“DEATH METAL”+“STARS”の造語としている。変態を成し遂げた彼らは白塗りでステージに上がるようになり、サウンド面でも北欧的な壮大で物語性をもったゴシックなサウンドに、機械的なサウンドが融合し、独特の音楽性を展開し始めた。
デビュー作『Synthetic Children』は2002年、スウェーデン国内でリリースされたが、早速Nuclear Blast Recordsの目に止まった結果、その翌年、インターナショナル・リリースが実現。2004年に2ndアルバムをリリースする予定だったものの、機材盗難のために制作を延期するというトラブルに見舞われるが、2005年には2ndアルバムの制作を開始。更にはバンドとしてイタリアのインダストリアル・ロック・バンド、DOPE STARS INC, のデビュー・アルバムにリミックスで参加するなど、活動を徐々に広げながら、翌2006年に遂に2nd アルバム『Termination Bliss』のリリースを果たした。同年、CRADLE OF FILTH、2008年にはKORNのツアー・サポートとしてヨーロッパをツアーし、ファン・ベースを拡大していった彼らは2009年、3rdアルバム『Night Electric Night』をリリース。リリースに伴うツアーでヨーロッパ、南米など各地を回り更に各地にファン層を広げていった。2011年にはRAMMSTEINのサポートに指名されるなど、ヨーロッパでは高い評価を確立してきている。
そんな彼らが、結成12年、音源デビューから10年の節目にリリースするベスト盤は彼らの自信を表すように『The Greatest Hits On Earth』(地球上最高のヒット集)と名付けられた。“地球上”とまで風呂敷を広げるだけあって、彼らの代表的なトラックが並び、良盤を形成している。1、2曲目には未公開トラックを収録。3曲目以降は1stアルバムから3曲、2nd、3rdアルバムから4曲ずつとバランス良く収録され、DEATHSTARSの12年をしっかりと楽しめる構成となっている。トラックを聴き比べると、ミドル・テンポで低音重視のバンド・サウンドの上に打ち込み系のサウンドがゴシックで耽美な表情を加えるというDEATHSTARSサウンドは終始一貫しながらも、どの曲も展開に富み、さながら1つの曲を通して妖しく暗い物語が展開していくかのようだ。曲毎の個性も繰り返し聴く度に浮き彫りになっていく。ややアップ・テンポ気味の新曲Track.2「Metal」、最新のPV曲でもあり壮大な雰囲気を持ったTrack3.「Death Dies Hard」、華々しさを持ったTrack.5「Mother Zone」など、トラックそれぞれに表情が与えられ、サウンドに深みが生まれている。
既にヨーロッパ・アメリカでは評価を確立したDEATHSTARS。直近でベスト盤のリリースを果たしたばかりのRAMMSTEINや来日予定のMARILYN MANSONなどが好きな方がドップリ嵌ってしまう要素があることは間違いない。ここ日本でも同じレベルでの評価を獲得してもおかしくないという事実を胸に置いた上で、このベスト盤を期待して聴いてみてもらいたい。
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