FEATURE
SICK OF IT ALL
2011.12.07UPDATE
2011年12月号掲載
Writer 山本 真由
このジャケ写、デジャヴ!?
87年リリースのセルフ・タイトルEP『Sick Of It All』のジャケ写をご覧ください……ベースのRich CiprianoがCraig Setariに変わっている以外は、ほぼ完全に一致(笑)!
凄い!何が凄いかって、変わらないというのは物凄くエネルギーがいることだからだ。多くの、いわゆる“レジェンド”とか“ベテラン”とか言われるバンドが、メンバー・チェンジや解散→再結成を繰り返したり、サウンド的にブレてしまったり……とまぁ、何かしらファンを困惑させる要素があるものだが、彼らは全く変わらない。“新しいメンバー”と言われているCraigですら、最初のライヴ出演からもう20年も経っているのだ。
というわけで、祝!SICK OF IT ALL結成25周年!!
先ずは、ニューヨーク・ハードコア・シーンの功労者である彼らの輝かしい歴史を振りかってみよう。80年代といえば、多くの名盤が誕生したハードコア・パンクの黄金期。そんな中、シーンの成熟した86年にPeteとLouのKoller兄弟を中心にSICK OF IT ALL(以下:SOIA)は結成された。結成して間もなく最初のデモを録音した彼らは、かの有名な“CGBG”でニューヨーク・ハードコアの創世記時代のヒーロー達と共演するなど、イースト・コーストを中心に数多くのライヴをこなし、次第に頭角を現してゆく。そして、87年に先述の1st EPをリリースすると、その名は全米中のハードコア・ファンに浸透していった。
ここで話は飛ぶが、今年9月の来日公演に足を運んだ方は、その圧倒的なライヴに全身痺れたんじゃないだろうか?筆者もO-EASTの公演に参戦したが、活動25年のベテラン・バンドといえば、ライヴを見るのは“記念”的な意味で、名曲を脳内で再生させるようなつもりでいたのだが……ハッキリ言ってそんな悠長なことを考えている余裕は無かった。ライヴは終始、全身全霊ギリギリ全開のエネルギーに溢れ、狂気さながらの熱にうなされたモッシュ・ピットは、その瞬間に鳴らされる音を目一杯に享受してバンドに共鳴していたのだ。
そう、SOIAの最大の魅力は“ライヴ”だ。彼らは、そのファストで、ヘヴィで、ソリッドな、まるで筋肉の塊とでもいうような力強いサウンドと、腹の底から自らをぶちまける様なアティテュードで、圧倒的な人気を獲得してきたのである。
シーンに与えた影響という意味では、かつてH2OのヴォーカルのTobyが、ローディーを務めていた事も有名だが、5年前に20周年を記念してリリースされたトリビュート・アルバムに参加した錚々たるバンドを見ても、彼らの存在がシーンに与えた影響の大きさが良く分かる。THE BOUNCING SOULSからNAPALM DEATHまでという幅広い音楽性、キャリアのバンドが揃ったこのアルバムも秀逸なカヴァーが満載なので、まだ聴いていない方は、この際に是非そちらも合わせてチェックして欲しい。
そして、だいぶ前置きが長くなったが、本作『Nonstop』に移ろう。これは、SOIAの名曲の数々を自ら再録したベスト盤的な作品だ。と、簡単に言ってしまえばそれだけなのだが、名盤として名高い彼らの1stアルバム『Blood, Sweat And No Tears』収録曲をはじめとする初期衝動の漲った楽曲を現在の彼らの手によって、より激しさを増して蘇らせるという物凄い作品なのである。プロデュースは前作・前々作に引き続き、近年AUGUST BURNS REDやSUICIDE SILENCEとの仕事でも注目を浴びている人気プロデューサーのTue Madsenが手掛け、その完全なるヘヴィ・サウンドを実現させている。
…という、ファンにとっては必携のアニヴァーサリー・アルバムなのだが、まだSOIAを聴いたことが無い方も、初めてライヴを見てノックアウトされた方も!このアルバムを聴いてハードコアの洗礼を受けて頂きたい!
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