FEATURE
ALL THAT REMAINS
2010.11.14UPDATE
2010年11月号掲載
Writer 米沢 彰
1998年、元SHADOWS FALLのヴォーカル、Philip Labonte(Vo)が中心となり結成されたALL THAT REMAINS(ATR)。実はバンドとしてのキャリアは14年と意外に長く、メタルコア・シーンを創生期から引っ張ってきた中心バンドと言うべきポジションに居る。
そのATRが、満を持して発表した5枚目のアルバム『For We Are Many』は、再びプロデューサーにKILLSWITCH ENGAGEのギタリストにしてメタルコア・シーンの敏腕プロデューサー、Adam Dutkiewiczを迎えて制作された。本国アメリカでは発売されるや否や、いきなりビルボード・チャートのトップ10入りを果たすなどリスナーの間では非常に高い評価を獲得しており、これまでのバンド史上最大のセールスを記録する一枚となることは間違いない。
事実、『For We Are Many』はATRがこの14年の間に築き上げてきた"メタルコア"という一ジャンルの集大成とも言える作品に仕上がっている。一枚通して聴いていると、ゴリッゴリのハードコアなパートあり、クリーン・パートありの緩急が効いた曲の構成の連続に、ぐいぐいと作品の世界の中に引き込まれていく。Philip Labonte(Vo)のヴォーカルは更にレベルアップしており、スクリームやグロウルもよく聴くと複数の歌い方を使い分けているのが分かる。まるで、ギターにエフェクターを通した時のように、その音の持つ雰囲気を活かして使い分けるかのようだ。これまで、Philのヴォーカルはアルバム毎に確実に進化が感じられたが、今回もまた予想を遥かに上回る進化を見せてくれた。
楽曲全体については、緩急が大きくついたATRお得意のドラマチックな展開がこれでもかと繰り広げられている。エネルギーがほとばしっているかのようなパワフルなパートでは、エッジの効いたメタリックなギター・サウンド+重く速いツーバスによるハードなプレイに、鋭く切れ込むPhilのスクリーム・グロウルが冴え渡るアゲアゲの展開が繰り広げられ、聴く者のテンションをぶち上げてくれる一方、サビの部分ではライヴでオーディエンスがシンガロングしてる様が簡単に思い浮かぶような、キャッチーなクリーン・ヴォーカルを全面に押し出してみたり、アゲアゲのままスクリームで歌い上げたり、クリーン・トーンを中心とした静かなパートを挿入してみたり、と緩急自在に展開し、どの曲もAT Rらしさで溢れながらも全ての曲が全く違う構成で出来上がっているのが非常に面白く、一枚通して聴いていて全く飽きがこない。ここまで多彩な楽曲を揃えてきたのは全くもって驚きだ。
本国での好調なセールスが物語っている通り、『For We Are Many』はATRの最高傑作であり、メタルコア・シーンにおいての傑作であることは間違いない。ライヴで間違いなく盛り上がるであろう曲も豊富なことだし、本当に来日が待ち遠しい。
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