FEATURE
ALKALINE TRIO
2010.02.08UPDATE
2010年02月号掲載
Writer MAY-E
メロディック・パンクの雄、ALKALINE TRIO。GREEN DAYやBLINK-182らと肩を並べ、シーンの第一線で活動を続ける3ピース・バンドだ。
ALKALINE TRIOは97年にシカゴで結成。インディペンデント・レーベルからファースト・アルバム『Goddamnit』(98年)、セカンド・アルバム『Maybe I'll Catch Fire』(00年)、その間にリリースされていたEP・シングルを集めたセルフ・タイトル・アルバム『The Alkaline Trio』(00年)をリリース。VAGRANTへ移籍後、4thアルバム『From Here To Infirmaly』(01年)、5thアルバム『Crimson』(05 年)をリリースしている。デビューから幾多のメンバー・チェンジやレーベル移籍を繰り返してきたバンドだが、いつの時代もALKALINE TRIOの要となっていたのが、しなやかなメロディを生かした哀愁味の強いパンク・サウンドだ。GREEN DAYやBLINK-182らをはじめ同じ時代に活躍していたメロディック~ポップ・パンク・バンドらとは一線を画するこの‘ALKALINE TRIOらしさ’。それが遺憾なく発揮されたアルバム『Agony & Irony』(08年)をメジャー・レーベルからリリースすると、全米チャートの13位を獲得するなどキャリア史上最大のヒットとなり、バンドは不動の人気を獲得する。
その大ヒット作『Agony & Irony』から3年。通算7枚目となるニュー・アルバム『The Addiction』が届けられた。本作は、全米最強のパンク・レーベルEpitaph Recordsへの移籍第一弾となる重要作品でもある。
リード・シングルTrack.1「This Addiction」で勢い良くアルバムはスタート。陽気さを纏ったリズミックなTrack.2「Dine, Dine My Darling」へと続き、夏空が似合うアップビートなTrack.3「Lead Poisoning」へ。スーっとチルアウトさせるバラード曲Track.4「Dead On the Floor」を挟み、再びアグレッシヴなTrack.5「The American Scream」へ。ALKALINE TRIOらしさが濃厚なTrack.6「Off the Map」、Track.7「Draculina」はエモーショナルなメロディが胸にぐっと迫る仕上がりだ。一転してTrack.8「Eating Me Alive」では新たにシンセ・サウンドを用いて柔らかさと透明感をプラス(これが意外にも良くマッチしている)。Tarck.9「Piss and Vinegar」はメロディが特に秀逸であるので是非じっくりと耳を傾けてほしい。爽やかな空気感が漂うTrack.10「Dorothy」へと流れ、優しく壮大なナンバーTrack.11「Fine」でアルバムを締める。
日本盤ボーナス・トラックにはカナダのプログレッシヴ・パンク・バンドNOMEANSNOのカヴァー曲「Two Lips, Two Lungs And One Tongue」が追加収録された。
サウンドの構築は至ってシンプルながら、メロディの力強さと、アルバム後半の柔軟性が優秀だ。この伸び伸びとした作風に、バンドの現在の充実ぶりが窺える。『Agony & Irony』から更なる成熟を感じさせる快作である。近年のポップ・パンク・シーンが忘れてかけているパンク・バンド本来の姿がここにある。
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