DISC REVIEW
-
実に13年ぶりとなる、正真正銘の最新作である。2010年代の終わりに、我々に届けられたTOOLの最新アルバムは、CD版は7曲入り79分超え、デジタル版は10曲入り86分超えという、とんでもない大作であった。本稿ではCD版をもとに書いていくが、インスト曲である「Chocolate Chip Trip」を除けば、すべての楽曲が10分超えという長尺曲で占められ、本作と向き合うこと自体が、貴重な音楽的体験だと言っても過言ではない。重要なのは、TOOLの核はなんら変わることなく、重厚でありながらも妖しい浮遊感を漂わせ、伝統的なロック・バンドの編成のままで、どこをどう切り取ってもTOOLとしか言いようのない音世界を作り上げている、ということだ。直接的なヘヴィネスは抑え気味ではあるが、幾つもの相克する概念が渦を巻いて、過去最高レベルに美しいメロディが胸を打つ。これぞ、TOOLという名の奇跡である。 井上 光一