DISC REVIEW
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ボストンの激情/ハードコア・バンドによる約4年ぶり通算5枚目。前作リリース後に創設メンバーが脱退し、ライヴ活動を一時停止せざるを得なかった彼ら。充電期間を経て、セルフ・タイトル・アルバムとしてリリースされた本作は、これまでの作品で見られたファストなビートこそ抑えめ。しかしテクニカルなリズム隊、幽玄なクリーン・トーンのアルペジオから激情迸る轟音までドラマチックに展開する弦楽器陣、そして悲哀を帯びた咆哮が織り成すサウンドスケープはさらに研ぎ澄まされ、バンドの"深化"が窺える1枚に仕上がっている。静と動を巧みに対比させながら物語を構築していく演出力も見事だ。J・D・サリンジャーの"グラース家"をオマージュしたという、過去のアルバムから連なる詞世界にも要注目。 菅谷 透