LIVE REPORT
sukekiyo
2026.02.25 @東京キネマ倶楽部
Writer :サイトウ マサヒロ Photographer:尾形 隆夫
"sukekiyo TOUR2026 嬲兀兀嫐 -開放の儀-"の最終公演。sukekiyoは、"お願い事項"のない"開放の儀"においても隙を見せない構築美を示し、会場を陶酔と熱狂に包んだ。
白いフリルの衣装に身を包んだ京(Voice)が登場し歓声を巻き起こすと、1曲目は「Scarlet」。耽美なサウンドとファルセットが妖艶な世界を静かに押し広げていく。そのサビでハイトーン・ヴォイスが空気を切り裂くと、あたり一面に花が開くように腕が上がり舞った。未架(Dr)のヘヴィなグルーヴ、utA(Gt)のディレイ・フレーズ、匠(Gt/Pf)の流麗なソロ、YUCHI(Ba)のスラップ......5人で時間をかけて空間を染め上げていくような、幕開けに相応しい一曲だ。演奏は鳴り止んだが依然として異様な緊張感が充満していて、物音一つ立たない。
続く「グロス」は中盤でアンサンブルがささくれ立ち加速するが、最終的には歌へと焦点が引き戻される展開が印象的で、世界の残酷さとその中に立ち尽くす孤独を活写するかのよう。ライヴ翌日のリリースが告知されていた新曲「possess」はドロドロとした愛と怨念が蠢くダークなナンバーで、各パートの音色一つ一つが詩の感情を補強するように繊細なバランスで鳴らされていた。
ここで「breeder」の鮮烈なイントロが始まると、オーディエンスはようやく今日が"開放の儀"であることを思い出したかのようにバウンス。京は"how much am I worth?"のフレーズを叫ぶフロアにマイクを向け、彼等をコントロールしてみせる。場を支配していたのは京の存在感だけではない。この日のセットリストは、sukekiyoの多面性を起承転結のシナリオに当てはめることで没入を促していた。
「Candis」から数曲にわたってプレゼンテーションされたのは、sukekiyo流ネオ歌謡としてコンクリートを濡らす情念。煌めくシンセサイザーに合わせてピンクのペンライトがネオン・サインのように揺れ、近未来の繁華街を顕現させる。シュールな振付を交えながらも時折歌声に感情を滲ませる京は、都市の中で仮面を被り生きる誰かと、あるいは私たちと重なり合う。「Valentina」の焦燥と色香が入り混じるようなビートも、人間の本性を暴くようだった。
息を呑むような幻想、皮膚を剥がした先に隠れる欲望を描いた先で、ライヴはいよいよ狂乱の宴に突入。「Creeper」は、ルッキズムを加速させる現代社会をピース・サインと共に皮肉る一曲。京はその疑念に共鳴するオーディエンスを手招きすると、次曲「猥雑」にて、すでにすし詰め状態のフロアに女声で"もっと詰めて"といたずらっぽく投げ掛けた。誰もが我を失い、頭を振り乱している。
そのパフォーマンスは、彼を見上げる人々が求めるものを全て理解しているかのようで、高まり続ける熱量の中でも超然的な佇まいが崩れない。「畏畏」のイントロで手を合わせ祈りを捧げる観衆に"その手を絶対離すなよ。離したら退場だ"と忠告すると、会場に"壱兆円"紙幣の吹雪が舞い上がる。ある者はそれに手を伸ばし、ある者はそれに目もくれず祈りを捧げ続けている。
表層的な現代仕草とその陰に潜む痛切な思いを奏でる「フレームアウトからの」が最小限の色彩と共に鳴らされクライマックスの雰囲気を漂わせると、届けられたのは叙情的で物悲しいアルペジオから始まる「濡羽色」。しとしとと雨が降り注いでいたこの日の鶯谷の景色を思い起こさせ、少しずつ、狂騒から現実へと私たちを送り返していく。本編ラストは生きる意味を問う激情バラード「呼吸」。魂を削るように歌い切った京は、拍手の中で静かにステージを去った。
興奮冷めやらぬアンコールに応えた5人は、不穏且つダンサブルな「愛した心臓」、アグレッシヴに疾走する「mysteryな」で再び非日常/非現実的な世界へとダイブ。フィナーレにサンプリング・パッド(YUCHI)、カオスパッド(京)、シンセサイザー(匠)を操作する「偶像モラトリアム」で、何者も寄せ付けない闇を叩き付けた。己を解き放つことを許しながら、sukekiyo自身もまた何にも縛られずに自らの世界を提示し続ける。そんな"開放の儀"を象徴するようなエンディングだった。
[setlist]
1. Scarlet
2. グロス
3. possess
4. breeder
5. Candis
6. Valentina
7. 艶
8. 口に林檎
9. 接触
10. Creeper
11. 猥雑
12. 沙羅螺
13. 本能お断り
14. 畏畏
15. フレームアウトからの
16. 濡羽色
17. 呼吸
En1. 愛した心臓
En2. mysteryな
En3. 偶像モラトリアム
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