LIVE REPORT
DEZERT
2024.12.27 @日本武道館
Writer : 山口 哲生 Photographer:西槇 太一
"僕が思うに、未来なんてものはこの場所にはない。確実にあるのは、今と過去だけだと思うんです"(千秋/Vo)
2024年12月27日、結成13年目にして初の日本武道館単独公演を行ったDEZERT。その1曲目を飾ったのは、「心臓に吠える」だった。炎が燃え盛るステージの上で、4人は重音を日本武道館に轟かせると、続く「君の脊髄が踊る頃に」では、千秋の咆哮と共に凄まじい音量の音玉が炸裂。壮絶な勢いで疾走していく4人の気迫がとにかく凄まじい。それでいて、肩に力が入りすぎて空回りすることも、念願の場所に感極まりすぎることもなく、その興奮を全て音に宿し、放ち、客席と共に今この瞬間を楽しんでいた。
これまでフロアを熱くさせてきた新旧代表曲を畳み掛けていく4人。Sacchanの強烈なスラップ・ベースから始まった「匿名の神様」や、猥雑なワードでコール&レスポンスを繰り広げた「ストロベリー・シンドローム」等、客席を沸かせるアッパーな楽曲はもちろん、青く薄暗い闇の中で力強くも柔らかく音を奏でた「私の詩」から、「ミザリィレインボウ」ではスケール感のあるアンサンブルを繰り広げるなか、少しずつ日本武道館が青白い光に包まれていき、最後には七色に輝くライティングも美しく、ハイライトをひたすら更新し続けていくドラマチックなステージになっていた。そんな熱演はもちろんのこと、千秋がこれまでの活動で感じてきた喜怒哀楽とナイーヴな感情を客席に話し掛けていく姿も、心に強く残った。
"正直に言うと、救われたかったんですよ。たったその8文字を伝えるために、長い歌詞にしてみたり、尖ってみたり、納得いかないことを突っぱねてみたりしたんだけど、答えは出ませんでした。救いの声なんてどこにも落ちてなくて。あるとしたら、それは絶対に自分の中にあると信じてます"(千秋)
彼の言葉を受け、一撃一撃が凄まじく重たいドラムをSORAが打ち鳴らすと、千秋が膝をつき、声を振り絞るように歌い始めた「Call of Rescue」から、Miyakoがひんやりしたアルペジオを奏でて、「さぁミルクを飲みましょう。」へ。結成間もないころの状況を赤裸々に綴った言葉たちを届けた後、アウトロで千秋が"一緒に綺麗事を 君と歌いたいな"とアカペラで歌うと、背負ったギターをかき鳴らし、強烈なノイズを放つ。そこへ3人も加わってセッションを繰り広げた後、ヘヴィ・ナンバーの「神経と重力」へ沈み込むようになだれ込んでいくという繋げ方は、ここまで積み上げてきた経験をまじまじと感じさせる凄みに満ちていた。
"成長はしてねぇんだ。考えは基本変わってない。けど、ぶつけるだけの音楽じゃつまんないわけ。こんなこと俺が言うのもあれだけど、人生には希望が、光が欲しいわけで。俺はせっかくバンドやってるんだから、最後はこのバンドで光を見たいと思いたいし、あなたたちにもそう思ってほしい"(千秋)
決して華やかなスター街道を邁進してきたわけではなく、理想と現実の差に打ちひしがれながら、それでも一歩一歩前へと進み続けてきた4人。前後不覚な闇の中で、時には周りに中指を突き立てながら、それでも音楽には真摯に向き合い続けてきた結果、今がある。中でもこの1年は、目の前にいる"君たち"ではなく、"君"に向けて歌っていたと話す千秋。そうしてきたことによって自分は変わったし、そんな自分を気に入っているし、そうなれたのはメンバーとスタッフのおかげであり、間違いなく"君"の存在が大きかったと、客席をまっすぐに見つめながら話していた。
"「君がいてくれて良かった」、そう思って歌っていると、まだまだ君と生きていける気がする。未来はここにはないと言ったけど、今日は少しだけ未来に触れたい。特別な日に君と会えて良かった"(千秋)
そう告げて高鳴らされた「TODAY」は、とてつもなく強く、まばゆい光に満ち溢れていた。
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