INTERVIEW
DEZERT
2025.11.14UPDATE
2025年11月号掲載
Member:千秋(Vo) Miyako(Gt) Sacchan(Ba) SORA(Dr)
Interviewer:山口 哲生
-素敵ですね。
SORA:俺、(日本)武道館ら辺から日記を書いてて。ライヴで思ったこととか、過去の映像を観て、演出含めて研究して感じたことを毎日手書きで書いているんですけど、それを見返しながら過去の自分と対話してるんです。自分はそういうきっかけを探してるんですけど、(千秋が)終わりではなく始まりって言ってくれたから、めちゃくちゃライヴがやりやすくなって。幕張メッセより大きい空間で毎回叩いてる感覚があるっていうか。俺はいろんな人にきっかけをあげたい、そのいろんな人って誰かは先に行かないと分からないから幕張で1回やってみる、そのために今は1本ずつ丁寧にやるという感じだから、ライヴは楽しい。
-ライヴ自体は楽しいけれど――
SORA:それ以外は考えることがやっぱり多くて。セットリストの話も、フロントマンだから毎回変えたい気持ちはすごく分かるんですよ。スキルアップするためにも、その先に向かうためにも試したい。準備に関しては、千秋含め、みーちゃんも俺もSacchanも今まで以上にしてるけど、人間だから準備してきたものを"やっぱりこうしたい"って急に言われたら、なんだよ! と思っちゃうじゃないですか。でも、それには理由があるのも分かっているし、例えば1曲目から20曲目まで全部変えたいとか、今日はミスチル(Mr.Children)歌いたいとか言い出したらどうした? ってなるけど、そんなことではないし。
-(笑)そうですね。
SORA:今はプライベートとかライヴがない期間でも、DEZERTに対して毎日少しでも触れるようにはしていて。運転中に今思い出せないかもっていう曲をちょっと聴いてみるとか。Sacchanも言ってたけど、年も取ってきましたからね。僕は結構曲を覚えてるほうだと思うし、これだけ身体を鍛えたりいろいろ準備したりしているけど、昔よりも急にステージ上で身体が動かなくなったりする瞬間もあるんで。だからステージ上は楽しいんですけど、そういうことが起きないようにいろいろ考える時間が嫌いでウザくて怖くて不安で、そのためにメンタルや身体のコンディションを整えているから、ライヴ以外はもうクソです。 もちろん楽しいだけじゃダメなのは分かってるからその葛藤もあるけど、僕はバンドって楽しそうだしかっこいいから始めたんで、やっぱりやってると笑顔になっちゃうんですよね。俺はそれでいいやって最近は思ってます。
-千秋さんは、終わりじゃなくて始まりだと思ってやろうというお話をされたとのことでしたけど。
千秋:それが20公演目ぐらい。"今日を最後に"っていうのも......これはずっと思ってることなんですけど、やっぱり全部は伝わらない。これはメンバーが悪いわけでも、俺が口足らずなわけでもなく、人間ってそういうもんやなと思っていて。僕の中では、今日死んだとしても、後悔は残るけど、今日ライヴできたから良かったやんっていう意味合いが強いんですけど、"今日を最後にしよう"って言うと、やっぱり悔いのないようにと思っちゃうじゃないですか。だから、"今日を始まりにしよう"って言うことによって、僕もそっちのほうがポジティヴだなと感じた部分はあるんですけど、根底はあんまり変わってないんですよ。言い方を変えただけで。大きな目標がある中で一本一本をどうやるのかっていうのは、終わりだろうが始まりだろうがどっちも一緒だと僕は思ってるんで。
-なるほど。
千秋:よくあるじゃないですか。どれだけ言い方を丁寧にしたところで、聴いた人の頭で変換されて、"いや、そんなこと言ってないけど"なみたいな。例えば今日のMCって誰かが書いてくれてることに対して、たしかに似たり寄ったりなところはあるけど、そういう内容ちゃうで? みたいな。それに対して"おい!"とかは思わないですよ。自分はそういうところもあるって全部責任を持ってマイク持ってるわけだから。でも、こう言うと語弊を招くからこんな言い方をしようかなって、"ちょっと長かったものをある種コンパクトにしよう運動"をしてたんです。 だけど、それこそちょうど先週ですよ。松山で、言いたいことを1回言わせてくれっていうので、今回のツアーの中でMCが一番長かったんですよ。そのときにすっきりして。何が言いたかったのかが僕の中にも残っているし、松山の人にも伝わったと思う。他の場所は伝わってないとかそういうことじゃなくて、毎回毎回僕の中では戦いだから。曲もだし、一個一個放つ言葉もそうだし、責任がある。それは狭いライヴハウスだろうが、これから大きくなろうが変わらない。みんなよく聞いてくれてるしね。そこはメンバーに対してもそうで、(※手を出して)"おー!"みたいなのあるじゃないですか。
-円陣みたいな?
千秋:うん。そういうのはあんまりやってこなくて、やらなきゃなと思ってたんですけど、やっぱこのバンドはやらなくていいかもなって。SORA君も叙情的な男なので、俺はいらんことを言わんほうがいいんちゃうかな、むしろ各々戦ってくれよっていうのを実は途中から思い始めてたんですよ。
SORA:ありがとう!
千秋:各々戦おうがみんなで戦おうが、病むときは病むから。それでいつも変なことしか言ってないんですけど、このバンドはそれでいいんじゃないかなって。俺は結構1つになりたい人ではあるんですよ。俺のこの考えに賛同してくれるよな? みたいな。そういうのももうええかなって。勝手についてきてくれている部分もあるから。そう思ったことをファンに言った日があったんですよ。俺はファンにもそう思っていてほしいって。俺は相手の考えが俺の考えていることと一致しててほしいっていう気持ちがかなり強くて、だから尖ってるとか言われた時期があるんです。"分かれよボケ"みたいな。
-なるほど(笑)。
千秋:そのときと本質は変わってないんですよ。我慢するかしないかだけの話で。だって、俺とお前は本質的に似ているところがあるかもしれないけど、俺じゃないじゃん。お前にはお前の人生があるし、俺はお前の人生は知らんし、そういうことを歌っている曲もあるし。でも、お前の人生は知らんけど、俺は手を伸ばすって歌ってるんだからその通りに生きろよという意味で、"俺はお前の人生の側におられへんけど"って話の、その1点が頭に残ったんでしょうね。"私はずっと側にいると思ってたのに、千秋さんは思ってくれないんだ"みたいな。そこだけピックアップしたかー! みたいな(笑)。
-(笑)まぁ、残る言葉ではありますよね。
千秋:その前後で本当に伝えたいこと言ってるはずなんですけど、まぁそうなるよなみたいな。そういった言葉の難しさだったり、シンプルな言葉の強さだったりを感じて、家に帰って曲を作ったりすると、それがかなり還元されていたり。ここはもっと難しく言ったほうが歌詞としてはいいんじゃないかとか、音楽的にも幅が広がるようなツアーになっているのは感じますね。ただそれを一本一本やっていたらしんどい。思うことを言うってこと程難しいことはないんで。
SORA:大見出しに書いてほしいです。"しんどいです"って。
-それこそ"そこピックアップしたか!"ってことになっちゃいますよ(笑)。
SORA:いや、別に我々は偉そうなことを言いたいわけでは全くないので。激ロックってやっぱりいろんなバンドマンさんも読むと思うんです。僕も結構読むし。"47ツアーめっちゃ楽しいです"って言ってる人、たぶん真剣にやってないですよ。
Sacchan:そんなことはないよ(笑)。いろんな向き合い方があるんじゃない?
SORA:いや、これは結構自信持って言える。楽しい瞬間がいっぱいあるのは素晴らしいと思うけど、やっぱりしんどいですよ。真剣にやってるから。うちの場合は千秋が曲を書いていて、そういう思いを持って回っているので、理想を言えば、MCで"今日はよろしくね"と"ありがとう"だけ言って、それで伝わればいいんですよ。でも、やっぱり思ってることは言いたいっていうフロントマンとして、人として、当たり前の感情があるので。そのためにも俺は説得力があるリズムを叩かなきゃいけない。昔だったらね、前日にもっと飲んでとかできたんですけど、今できないですもんね。
千秋:そこは考えなくてもいいんじゃない? 各々でやろうよ。
SORA:うん。真面目だと言われても、俺はそれしかできないんで。だからこそ"47楽しいー! 最高ー!"みたいなのってないよね?
千秋:ない。それは嘘やと思う(笑)。
-今日のお話に出てきた"今日を始まりにしよう"、"各々頑張ろう"というワードって、先日(2025年6月)リリースされたミニ・アルバムの"yourself: ATTITUDE"というタイトルであったり、作品が持ってる"その次へ"、"その先へ"みたいなメッセージとリンクしてるなと思いました。
千秋:これはね、僕も分かってなかったんですけど、この作品が抽象的すぎて途中で分からなくなったんですよ。"先ってどこ?"っていう。先があるのは分かってるんですけど、典型的な目標ばっかり言ってる俺の嫌いなタイプになりかけてたんですよね。僕等はまだ告知されていない幕張メッセの先のことも話し合ってるし、これからどうするかも毎日のように話し合ってるから、答えは出てはいるんだけど、音楽ってそういうことでもないし。それがどう伝わっているのかは聴いた人の自由ですけど、自分としては、"その向こうへって歌ってるけど、どこ? デカい場所? 違うよな?"みたいな感じで、俺にとって音楽ってなんだろうみたいなところまで行ったんです、3公演目くらいで。
-だいぶ早いタイミングで。
千秋:"俺等どこに向かってんの? 向かってどうすんの? どうせ死ぬけど"みたいな。でも、ここまでやってはっきりしたことがあって。メンバーには太陽みたいな人というか、太陽に引き寄せられるタイプの人もいるけど、僕は影に引き寄せられるタイプだからヴィジュアル系を始めたって感じなんですよ。音楽はつらいときにどう寄り添ってくれるんだ? ってところの一点集中型なんです。きっと今でも俺の本質はそうなんだろうと思うし、俺等のポジティヴなメッセージも、闇の中からの光なんだと。光から光じゃない。
-たしかに。
千秋:でも、武道館をやったことによって"俺、光なんじゃないか?"って勘違いしてた気がするぞと感じたんです。闇からの光だから、みんな絶対影を見せてほしいはずなんですよ。お前はどうなんだ、つらいときに何をしてくれるんだ、何を言ってくれるんだってことを忘れちゃいかんというのは、29公演目にしてわりとはっきりした。つらいときに音楽って必要だと僕は思うんですけど、つらすぎると音楽も聴けなくなるじゃないですか。そのときでも俺は聴いてほしいって思うし、つらいときに聴くからポジティヴにしたいし、そのためにもネガティヴなメッセージを書きたいのが俺だよなっていう。
-再確認というか。
千秋:そう。だからこの47の行く末は、かっこ良く言うと闇なんだろうと。いいことなんてちょっとだけあればいい。"いいことがいっぱいあると思い込んでない? 武道館とかやっちゃって。変わらないぜ? 人生なんていいことのほうが絶対に少ないんだから。だから頑張ろうぜ"ってこと。だから今日が取材でちょうど良かったですよ。やっぱり変わんねぇんだというのを再確認できてる。たぶん47終わった頃に聞いてもらうとまた変わってると思うんですけど、今の答えが見えた。































