INTERVIEW
YA'ABURNEE
2025.10.10UPDATE
2025年10月号掲載
Member:ざらめ 帝々ぽめあ 棗 ぬゐ
Interviewer:山口 哲生
"不謹慎で申し訳ナイです"──そんな挑発的なキャッチフレーズが目を惹く4人組アイドル、YA'ABURNEE。2023年に始動し、アラビア語で"貴方が私を葬る"と解釈されている言葉をその名に掲げたこのグループは、血糊メイクで華美な衣装を身に纏い、異常なまでにバリエーション豊かながらも、ハイクオリティ且つ超個性的な楽曲群を歌い踊るパフォーマンスが注目を集めてきている。激ロック初登場となる今回は、いい意味で癖の強い楽曲たちに4人はどう向き合っているのか、また新EP『かざして / ユガンダ』について、そして11月17日に恵比寿LIQUIDROOMで開催する、[YA'ABURNEE 2周年忌念単独公演 "ABYSS"]を前にした今の心境を訊いた。
-いただいた資料に"メイドインアビス"、"ヤン・シュヴァンクマイエル"、"バスキア(ジャン=ミシェル・バスキア)"、"DIR EN GREY"というワードがあったんですが、どなたがどれを好きなんです?
棗:私は"メイドインアビス"を愛しています。
-どんなところが好きでした?
棗:キャラクターの容姿とかはすごくポップなんですけど、内容は楽しいだけじゃなくグロテスクなところが描かれていて。アイドルとそういうものを組み合わせるのはすごく興味があったしどんな展開になるんだろうって思いました。自分の好きなものと繋がっているのが嬉しかったです。
-ざらめさんがグループに参加することになったとき、最初に挙げたキーワードみたいなものはすでにあったんですか?
ざらめ:私はもともとプロデューサー(O-ant)がやってた前のグループにもいてっていうところからなんですけど、最初は"メイドインアビス"とかってモチーフはなくて、"グロかわいい"が大まかなコンセプトにあることだけ聞いていて。話が進んでいくにつれ"メイドインアビス"を観てほしいっていう提案があって、観ました。
-"グロかわいい"というコンセプトを聞いたときにどう思いました?
ざらめ:前のグループとは真逆の感じですけど、私もどっちかっていうと暗いもの、ダークなものが好きだからこっちのほうが向いてるんじゃないかなって。自分のやりたいものにより近付ける気がして、面白そうだなって。それでアニメも観て。
-実際にそういったものをやってみて、面白いなと思っているのか、やっぱりちょっと不安もあるのか、どんな感覚がありますか?
ざらめ:私は"面白いな"のほうが強いです。楽曲はガラっと変わってたまに"なんだこの曲"みたいな変な曲もあるんですけど。この環境にいるから慣れてしまっただけなのか分からないけど(笑)、聴けば聴く程馴染んできて、"これ面白いじゃん! やーぶる(YA'ABURNEE)だからできるよね!"みたいな感じではいます。でも、結構引いてるメンバーもいるのかも(笑)。
-そのあたりもこの後お聞きできればと思いつつ、ぬゐさんが加入されたときはどんな感じだったんですか?
ぬゐ:私がメンバーの中で最後に面談をして、入るかも? 入らないかも? みたいな時期に"メイドインアビス"っていう言葉を聞いて、そこで初めて観たんですけど、私理解力が乏しくて(苦笑)。アニメモチーフとかそんな感じだよって言われても全然よく分からなかったんです。でも、他のグロかわいいとか、こういう楽曲やりますとかを知って、このグループいいかもって思いました。
-先程ざらめさんが"引いてるメンバーもいるのかも"とおっしゃってましたが、実際どうです?
ぬゐ:最初はまだここまでクセ強じゃない曲から始まっていて。まぁ強いけど、他のキラキラしているアイドルからしたらちょっとパンチあるよねぐらいの感じで、こんな楽曲も世になくはないよねっていうぐらいのレベルだったんですよ。ただ、やっていくにつれてどんどん上に上に要素が乗っかってきちゃって。最近はこのメンバーじゃないと表現できない、YA'ABURNEEじゃないと出しちゃダメじゃない? みたいなレベルの曲がゴロゴロ溢れてるっていう感じで、最初より進化してますね。
-ぽめあさんが参加することになったときはどんな感じだったんです?
ぽめあ:たぶん私が最初に飛びついて面接を受けた人間なんですけど、グロかわいいとかに惹かれたかって言われるとそこでもなくて。ざらめちゃんが前にやってたグループと時々ご一緒する機会があって、そのとき聴いた楽曲とかが好きだったんです。私も今とは全然違う系統のアイドルをしてたんですが、どちらかというともうちょっとロック寄りなものがやりたいなと思って、YA'ABURNEEがオーディションを打っていたので、お願いしたいですって言って。
そこから話が進んでいくなかで、Pが"「メイドインアビス」っていうのが好きで、こないだ面談した子(棗)が持ってたカバンがちょうど「メイドインアビス」だったんだよね"って。それで、ちょっと経ってから"あれ観といて"っていうことになって、映画も全部観て面白いなってなったんですけど......うん。
-今、お茶を一口飲まれましたけども(笑)、当初思っていたものとはだいぶ違う方向になってきたなみたいな感じがあったり?
ぽめあ:そうですね。自分がやりたかったものと、やりますってなったときのものと、今やってるものがそれぞれ違うなって感じていて。それがいいのか悪いのか分かんないんですけど(笑)。今は活動していて、この道に進んできて良かったなと思うけど、全部が全部追いつけているかと言われたらたぶん私が一番追いつけてないと感じます。私は下ネタNGで、下ネタっぽいワードとかがあると"ここは歌割いらないんで!"って言うぐらい苦手なので複雑な気持ちで歌うこともあるんです。逆に下ネタとかが入っていない曲がすごく好きで、そういう曲だとやり甲斐があったり、この曲を歌えて嬉しいなって思う部分が大きいですね。
-たしかに、楽曲の幅がかなり広いですよね。今お話しされていたようなものもあれば、ハードなものもあるし、ポップでかわいらしいものもあるし、ダークなものもあればすごくエモーショナルなロックもあるし。そういういろいろな面があるから、たしかにこの曲は好きだけど、この曲はちょっと......みたいなことはありえますよね。棗さんとしては、それこそ"メイドインアビス"が好きというところで盛り上がったこともあり、実際に今やっている音楽に関しても、まさに楽しみながらやっている感じでしょうか。
棗:私はバリバリ楽しんでやっています(笑)。声優になりたいっていう夢もあったので、やーぶるって声色をすごく変えて歌う曲とか、セリフを多用している曲も多くて。ちょっと道は違うけど自分のやりたかったものをここで叶えられているっていう感覚のほうが強いので、楽しんでますね。
-ざらめさんは、YA'ABURNEEの幅広い楽曲だったり、声色を変えたりセリフを入れたりすることに対して、難しさとか楽しさとか、どういうことを感じますか?
ざらめ:私は難しい派で、結構できない――
棗:できてるよ?
ざらめ:(笑)できないことが多いと思ってて。でも挑戦することは楽しいし、レコーディングで"うん、ハマってないね"みたいなときのほうが多いかもしれないけど、私ってこういう声も出せるんだなとか、意外とこんな表現もできるなって発見が自分の中であるから、難しいと思いつつも楽しんでやってます。
-ちなみに、これまでリリースした曲の中で"私、こういう声出せるんだ"って一番思った曲を挙げるとすると?
ざらめ:『TCHOTCHKE』(2025年7月リリースの1stミニ・アルバム)に入っている「LIFEBUOY」です。Aメロのシャウト寄りのパート。もともとぬゐがデスボを担当することが多くてレコーディングのときに"ここはぬゐか、ざらめかな"みたいな話があって、いやぁやったことないしなぁ......と思いながらいろいろ挑戦していたら、一番カッコいいものが録れたんですよ。"私こんなかっこいいシャウトできるんだ! すご!"って。それは自分の中で新たな発見でしたね。
-曲としては叙情系ハードコアみたいな感じですけども。
ざらめ:そうですね。曲としてめっちゃ好きだったんですけど、自分がやる想像が付かなかったからやれて嬉しかったです。
-ぬゐさんはもともとシャウトとかは得意だったんですか?
ぬゐ:いや、やーぶるに入ってからですね。まだ音源化されてない「CUCCAGNA」って曲ではじめて"デスボみたいな声を使いたい"っていう話があって、ボイトレのときに1人ずつやってみて"ちょっと可能性のあるやつ、頑張って鍛えていこう"みたいな感じになったんです。そのとき私がデスボを担当することになって。でも、「LIFEBUOY」に関してはデスボというよりはシャウト寄りの声が良かったみたいで、私はそっちの声ができなかったので、役割が分かれました。
-なるほど。ぬゐさんはYA'ABURNEEの幅広い楽曲やそれを表現することに対して、どんなことを感じてます?
ぬゐ:めっちゃ戦いだと思ってます(笑)。レコーディングは事前に資料が渡され"各々でこの曲をイメージして、作り上げてきてください"って言われるんですね。それで各々が思う歌い方だったり声質だったりを考えてきて、基本まるっと全部録って、良かったところが使われるっていう感じです。私はYA'ABURNEEが初めてのアイドル・グループで、最初は1つの歌い方しかできなかったんですけど、やっぱりこのクセ強メンバーがいて──
ざらめ:そんなにクセ強いかな......。
ぽめあ:バカにしてる(笑)?
ぬゐ:いや(笑)、"この子ってこんな声を出すんだ。じゃあこういうものもやってみよう"とか、メンバーから学ぶことも多いし、そこから声の使い分けがいろいろできるようになってきたかな。ただ、やっぱり私よりみんな全然歌が上手いので、どうやって歌割をもぎ取るかっていう。
ぽめあ:あ、そっちの戦い? デスボの話かと思ってた。
ぬゐ:いやいや(笑)。みんな歌が上手いから、例えばかわいい声とかデスボとか、自分しかできないような声質の戦いで頑張るしかないなと思って。
ぽめあ:で、勝ち取ったわけや。
ぬゐ:そう。私はデスボを勝ち取った!
-これは私が勝ち取ったぞ! と思った曲って他にもありますか?
ぬゐ:『TCHOTCHKE』に入っている「FEATHERS」っていう曲があるんですけど、リズムが細かくて難しいとかアクセントを付ける部分がちょっと工夫してある曲でみんな苦戦して。そこでいつもよりちょっと多めに歌割を貰えたので、そこは自分が得意としている部分でもぎ取れた! と思います。
-ぽめあさんは、いろいろな声質を使う楽曲をやるなかでどんなことを感じます?
ぽめあ:自分で言うんですけど、たぶん私が一番声を変えられるんです。もともとそういうのが好きだったし、それができて楽しいしかないので、苦戦とかもあまりなくやっていて。それはすごく楽しい部分ですね。
-個人的にこれは上手く決まったなと思う曲を挙げると?
ぽめあ:たぶん1曲の中でいろんな声を使ってるのは「Nolka Solka Polka」(2024年5月リリースの3rd EP『Deads』収録)か「SUKIZOID」(2025年4月リリースのEP『SUKIZOID / 痣恋』収録)の2曲かなって感じです。
-どちらも結構ゴシック色のある曲ですよね。そういった曲が得意とか?
ぽめあ:個人的には「ikiu」(2024年11月リリースの1stアルバム『décadence』収録曲)みたいなバラードが好きなんですけど、どっちも得意ではありますね。