INTERVIEW
kein
2025.07.08UPDATE
2025年07月号掲載
Member:眞呼(Vo) 玲央(Gt) aie(Gt)
Interviewer:サイトウ マサヒロ
真実や事実を無視した勝手なイメージが先行している世の中だけど、それが間違っていた場合、炎症を起こす
-そういったなかで、約6分半もの「波状」をリード曲に据えた狙いは?
玲央:今説明した通りの、まさにkeinが得意とする楽曲を前面に押し出そうかなという。こういった楽曲を若い世代のバンドが同じテイストで作ろうとしたって、真似できないと思うんですよ。メンバーの経験値があって初めて完成した曲なので。差別化じゃないですけど、それをアピールしたらどうかなっていうことで、これをリード曲にしましょうと提案しました。
aie:もともとLUNA SEAの「TRUE BLUE」みたいな曲ができたら、それがリード曲になると思ってたんだけど、曲が揃ってみたら"あぁ、「波状」っすね"と意見が一致しましたね。
-「波状」の歌詞はどのような思いで書かれたんですか?
眞呼:これも"妄想による炎症"を描いていて。例えば、大事な人が病に倒れたときに、自分が良いと思った治療法を試してみたら、それが上手くいかなかった。そうして肉体が消えてしまったら、その治療法を行った人にもその原因があるのかなと思う。ストレートに言ってしまうとそういう内容です。
-素朴な疑問ですが、眞呼さんの作詞はどこから出発するのでしょう? 音を聴いたイメージで湧き出るものなのか、それとも普段から綴ってある言葉なのか。
眞呼:普段から感じている物事を、音に飲まれた状況で書き起こすっていうやり方です。暗い音楽に飲まれればより暗い歌詞が書けるし、明るい音楽に飲まれればより明るい歌詞が書ける。だからやっぱり音が重要。そのなかで一度物語を構成してから、言葉をピックアップしていきます。
-音に包まれるなかで、内にあった感情や欲求に気付くこともあるのでしょうか?
眞呼:もちろんあります。歌詞を書いてみて、"あ、こういうことが言いたかったんだ"って気付いたり。
-他の収録曲についても聞かせてください。オープニング・トラックの「斧と初恋」はリフも歌メロも音の運び方が独特で、一筋縄ではいかないkeinらしさを感じます。
aie:半分ぐらいのサイズのデモがあって、ダメもとで音を合わせてみて、何かを感じたら変えていこうっていう形で制作しました。そうしてテンポを上げたり、物足りないからサビを追加してみたり。そのうち徐々に1曲目っぽいっていうのが見えてきましたね。
-病的な思いに囚われた女性目線の歌詞もインパクト抜群です。ここでは"妄想による炎症"がパーソナルで分かりやすい物語として描かれている。ドキッとするようなフレーズもあって。
眞呼:やっぱりみんなこういうものを求めてるじゃないですか。コンプライアンスもありますけど、私も世間を騒がせるような表現のほうが好きだし。本当にある感情を隠してて何になるんだっていうことで、書いてみました。
-「晴レノチアメ」も、歌詞の世界観には通ずるものがありますね。
眞呼:分かりやすく言うと、「斧と初恋」の続編ではなく、エピソード0が「晴レノチアメ」です。
-サウンド的には今作の中で特にアグレッシヴな楽曲ですが、やはりライヴを意識して制作されたのでしょうか?
aie:そうですね。ライヴでやりたいビート感だし、かつて好きだったバンドたちはこんな曲をやってたよなっていう感覚もある。で、普段の俺だったら一気に突き抜けて終わりのほうがカッコいいだろうと思ってたけど、今回はちゃんとサビを付けようとか、そういうルールを意識しました。
-そういう意味では、前作と今作を繋ぐような楽曲なのかもしれません。
aie:前作の「spiral」は"あれで終わるのがカッコいいでしょ"っていう最たる例。でも、今作ではサビがあったほうがいいでしょっていう。
-グルーヴィに展開しつつサビで一気に開放感が満ちる「幾何学模様」も今作らしい曲です。
aie:玲央さんのくれたテーマがなかったら生まれてないですね。というか、たまたまその日にkeinの曲を作ろうと思ったからこうなっただけで、例えば今日もう一度作り直したらまた違うだろうし。ただのその日の記録っていうか。でも音楽ってそれでいいんじゃないかなと思う。"今"の我々が常にアップデートされていけば。
-改めて、今作はkeinにとってどんな作品になりましたか?
玲央:皆さんからの、そして自分たちの期待が凝縮された、来年以降の展開に向けての起点になる作品だと思います。すごくいいものができたなって。
aie:3年後くらいに、この作品のことを振り返りたいですね。
玲央:"あれが起点だったよね"って言われる作品になるんじゃないかな。
-ここまで積み上げてきたものの集大成ではなく、むしろここから新たな動きが広がっていくと。
aie:"やっぱり違ったな"って言ってるかも(笑)。
眞呼:あと、歌メロには、大滝詠一さんや山下達郎さんのニュアンスがちょっと出てきたというか。
aie:「波状」も初めはシティ・ポップのアプローチで行こうかと思ったんだよね。ジャッジャッ、ジャジャッジャッ!(大滝詠一「君は天然色」のイントロ)って。攸紀(Ba)君に"違う。ダメ"って言われた(笑)。
玲央:この見た目、このタイトル、この歌詞でもやっぱり僕たちはあくまで邦楽なんだなって。
-リリース後にはツアー("kein TOUR 2025 「delusional inflammation」")も決定していますが、意気込みはいかがでしょうか?
玲央:再結成後の書き下ろしが前作と合わせて計10曲あるので、今のkeinを投影した内容のライヴになるかと思います。"伝説的バンド"って言われるのも嬉しい反面、過去の人じゃないんだけどっていう思いもあるので、現在進行形のkeinを観に来てください。
眞呼:ぜひ、音源を聴いてくださった上で足を運んでくれると嬉しいです。やることは全力でやりますので、どうぞよろしくお願いします。
aie:単純に、やるのが楽しみですね。曲を作ったりレコーディングをしたり取材を受けたりと5人で集まる機会が増えてきたから、今はkeinモードに入ってる。で、このツアーが終わったらまた玲央さんから次の発表があると思うんですけど......俺等に対してね(笑)。またいい作品を作るには、まずいいライヴをするしかないから。存分に楽しもうと思ってます。
-実は、玲央さんの脳内にはすでに次のプランが?
玲央:その質問には一切答えないようにしています。
aie:メンバーにも教えてくれないからね。"スケジュールだけは押さえておいてくださいよ"って、どういうことだよ(笑)。