INTERVIEW
SAISEIGA
2024.11.06UPDATE
2024年11月号掲載
Member:Regan(Vo) Wakkun(Gt) Katsuki(Ba) 桐子(Dr)
Interviewer:フジジュン
ダークでヘヴィな、混ざり爆ぜて再生する世界。4人組メロディック・グルーヴ・メタル・バンド、SAISEIGAが3rdアルバム『THE BLACK HOLE』を完成。これまで様々な表現を模索し、築き上げてきた自身の音楽を全て塗りつぶし、結合させた今作。"SAISEIGA史上最もダーク&ヘヴィなアルバム"をコンセプトに制作されたアルバムは、これまでの作品とは異なる印象を与えながら、個々が本来持っていた個性や魅力、高いスキルやポテンシャルを惜しみなくバンドに反映。SAISEIGAの新たな代名詞となる意欲作となった。今作の完成に至る経緯や作品に込めた想い、そして今作の制作を通じて導き出した"SAISEIGAとは何か?"の答えをメンバー4人に訊いた。
-3rdアルバム『THE BLACK HOLE』が完成しました! まず、めちゃくちゃカッコ良かったのと、1st(2022年リリースの『THE SUN』)、2nd(2023年リリースの『NOSTALGIA』)と大きく印象が異なる作品になったのに驚いて。作品を重ねるごとにバンドの色や方向性というところで、どんどんピントが合っていってるんじゃないか? と思ったのですが、アルバムが完成しての感想はいかがですか?
Katsuki:まさにその通りだと思います。これまでも"自分たちがやりたかったことはなんなのか?"を模索し続けて、やりたいことと、そのときにできる最大限をやってきたんですけど、やっていくなかで、"もっとこうだったら良いのに"みたいなことも当然生まれてきて。今回はそういうのを全部入れたし、結果、それが今作の色になったと思っています。メンバーとしっかり話し合いながら形になっていったので、なんの迷いもなく。僕の中ではこのアルバムが作れて本当に良かったなと思ってます。
桐子:今回はアルバムを作るにあたって、しっかりコンセプトを決めたところからスタートしたのも大きくて。前作までは生まれ出るままにというか、感性のままに作り進めていって、そこに勢い等を感じていただける作品だったと思うんですよ。私たち、見た目も性別も聴いてきた音楽ややってきたことも、近いところもあるけどバラバラなところも多いので、今回はバンドとしての一体感を打ち出したかったんです。そこで"どんなコンセプトにしようか?"と話してるとき、みんなダークな音楽がもともと好きだったり、そういった素質を持っていたりすることが分かって、"とことんダークなイメージの作品を作ろう"と決めて楽曲を作っていったんですよ。
-結果、ダークという共通のテーマを持ちながら、すごくバラエティに富んだアルバムになったし、全編通して聴いたときの物語性もあるし。あとアルバムを聴きながら思ったのが、ライヴ・セットのようにも聴こえるなということで。このままの曲順で、"ダーク&ヘヴィ"をテーマとしたコンセプト・ライヴもできそうだなと思いました。
Katsuki:ライヴのセットリストを考えるのとアルバムの曲順を考えるのって自分の中ではほぼ一緒で。今回もいろんな曲が入ってるんですけど、すごく並べやすかったし。そうやってライヴを想像しながら聴いてもらえると、すごく嬉しいです。
-Reganさんはアルバムが完成していかがですか?
Regan:大変でした(笑)! このバンドはコロナ禍に生まれたのもあって、暗い雰囲気を吹っ飛ばそうという気持ちがあって、"暗い曲はやらない。決めごとをやらないでアドリブ性を重視する"って方向性でやってきたんです。今回は予期せぬ原点回帰という感じで、"もともと(SAISEIGA結成前に)やっていたダークで構築美系の音楽にSAISEIGAで戻ってくるなんて!? どうなっちゃうんだろう?"と最初は思ったし、自分がブラック・ホールに吸い込まれちゃうような気持ちがありました。
-Reganさんとしては、想像もしてなかった展開だったと。
Regan:はい。でもSAISEIGAで、苦手としてきたアドリブ性や明るいパワー、エネルギーのあるものに取り組んできた先に、自分が得意だったはずのダークな世界観にまた向かうときが来るっていうのに、すごく意味を感じます。真反対のものを磨いて、それなりに気に入って大事にしてきたけど、今回は全く違ったアプローチになって。こっちもみんな間違いなく好きだろうと思うし、ダークな音楽でドカンと穴開けてやろうか? って気持ちもあります。
-制作に至るまでの話も聞きたいのですが、昨年3月に2ndアルバム『NOSTALGIA』をリリースしてから今作に着手するまでの期間って、SAISEIGAにとってどんな期間でした?
Katsuki:いろいろ経験した期間だったし、一番成長できた時間だったと思ってます。『NOSTALGIA』を出して、全国ツアーをして、主催ライヴも数多く打ちながらワンマンもやって、かなり積極的にやってこられたしいろんなイベントも呼んでいただいて、経験値を得た1年だったんですが、経験すればする程悩むこともあって。"俺たちはなんなんだろう?"みたいなこともすごく思ったし、ツアー中はずっとそういう話をしてました。
-経験を積むことが、自分たちと改めて対峙する機会にもなったと。
Katsuki:最初僕たちノー・コンセプトだったんで、ざっくりと"ラウドロックだね"って言ってたんです(笑)。それが、僕自身メタルをずっと聴いて育ってきた人間ではないんですけど、メタルのバンドといっぱい絡むなかで気高さをすごく感じて、"ここに身を置きたい"という考えが生まれてきて。"でも、自分たちってメタルと言っていいのかな?"という気持ちもずっとあったんです。別にジャンルにこだわることが重要とは考えてないんですけど、コンセプトがあったほうがリスナーの皆さんからしたら興味を持ちやすいと思うし、まだ活動歴もそんなに長くないバンドとして、もっとたくさんの人に知ってもらう必要があると思ったとき、必要なのかな? と思って。そこから"メロディック・グルーヴ・メタル"という自分たちを表すワードを導き出して、ダークってコンセプトに繋がったと思うので、"自分たちってなんだ?"というのをすごく考えられた、意義ある1年でした。
-ライヴを重ねることで、自分たちを観に来てくれるお客さんが何を求めてるか? 何に期待してるか? ってことが見えてきたところもありますか?
Regan:私は漠然としてますけど、"もっとやれ!"ってことだと思ってます。ジャンルとか関係なく、圧倒的な盛り上がりを期待されてる気がして。"何も気にせずやっちまえ!"というのは、私たちよりお客さんのほうが思ってるかも知れなくて、結構やってるつもりですけど、"まだやっていいんだ!?"って感じがありますね。性別もジャンルもバラバラな4人が揃ってて、なかなか他にいないバンドだから、うちらがワンマンをやれば何にもとらわれない圧倒的なものを見せられると思ってるので、ライヴに来てもらうためにどうしたらいいか? ばっかり考えています。
-アルバム収録曲は、コンセプトを決めてゼロから作り始めたんですか?
Katsuki:「轟音爆散TORNADO」は、去年の11月にやった無料ワンマン("SAISEIGA 3周年記念無料ワンマンライブ『轟音爆散トルネードSP』")のタイトルで、とにかくブチアゲていこうって意識で、アルバムとか意識せずに作った曲だったんですが、この曲は一旦置いておいて、アルバム曲を作り始めて。アルバム制作って意味では、最初にデモができたのが2曲目「Catharsis」だったんですよ。この曲は僕と桐子がセッションで作っていく、前作までずっとこだわってきた作曲スタイルで作ったんですけど、それ以外の曲はその作り方をしていないんです。
-そうなんですね、面白い!
Katsuki:これまでは"打ち込み禁止。デモ・テープは作っちゃダメ"って決めてて。デモ・テープを作ると、それをなぞることになるからやめようってルールだったんです。でも、それに対して"自分たちの作ったルールに縛られてるな"と思って。もとを正せば、桐子とかはデモを作るほうが得意なんで、自由にやるはずが逆に不自由だなって感じてきて、自分が責任持ってある程度まで作って、それを伝えていくってことをやっていかないとバンドにとって新陳代謝にならないと考えたんです。
-じゃあ、ここまでコツコツ積み上げてきたバンドのやり方やルールも一度ぶっ壊して、新しいことをやろうというタイミングになったんですね。
Katsuki:そうなんです。だから聴いてもらったら分かるんですけど、ギターやベースのアレンジも一番緻密になっていて。それは今までのアルバムとは違った作り方をしたからだと思います。
Wakkun:それが、楽しい苦労だったんです。今までやったことのないこともチャレンジ精神を持ってやって、自分の成長にもバンドの成長にもなっていくだろうと思って。
-話を聞いて、アルバムが、最初にできていた「轟音爆散TORNADO」に着地する形になってるのも面白いと感じたし、2曲目に「Catharsis」があって、"これは今までのSAISEIGAとは違うぞ"と思わせて、そこからもう一つ深いところ、よりダークに、よりヘヴィにってところに誘ってくれる感がある。「Catharsis」がアルバム制作の最初にできたっていうのもすごく面白いなと思いました。
Katsuki:そうですね。アルバム冒頭の「STRANGE RAIN」から「Catharsis」の流れは、僕もすごく気に入ってます。今回「STRANGE RAIN」がリード曲になってて、MVも公開されていて、ラストの「零-instrumental-」と、「STRANGE RAIN」が繋がってるという世界観になっているので、「零-instrumental-」を1曲目に持ってくるって話もあったんですけど。CD屋さんで視聴したとき、"これSEなのかな? 曲なのかな? どっちかな?"って思ってるうちに1分くらいでスンと終わっちゃう曲はあまり好きじゃないので(笑)、シンプルに歌からドンと行きたいと思って、1曲目を「STRANGE RAIN」にしたんです。