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INTERVIEW

SAISEIGA

2023.03.28UPDATE

2023年03月号掲載

SAISEIGA

Member:Regan(Vo) Wakkun(Gt) Katsuki(Ba) 桐子(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

極端に言えば"化けた"と思うくらいにSAISEIGAはここにきて飛躍的な進化を遂げた、と言えよう。男女混合編成のSAISEIGAは、始動以来ラウドでヘヴィな独自の音を提示してきてはいるが、このたび完成した2ndアルバム『NOSTALGIA』では曲調の幅が広がっただけでなく、それを表現する各メンバーのスキルやメンタリティまでもが、ずいぶんと高次元なものになっていきている感があるのだ。特にReganが聴かせるヴォーカリゼイションの多彩さは、もはや唯一無二の領域に達しているように感じられるが、一方でギタリスト、Wakkunのメタル魂が突如覚醒した点も重要なポイントとなるだろう。再生芽から新種がここに誕生したようだ。

-2022年2月に出た1stアルバム『THE SUN』を経て、このたび約1年ぶりとなる2ndアルバム『NOSTALGIA』が完成したわけですけれど、ライヴで演奏してきた新曲たちも収録されている今作を仕上げていくなかで、完成形のヴィジョンというのは、いつ頃からどのようなかたちで見据えていくことになられたのでしょうか。

桐子:前作『THE SUN』を出したあと、22年4月に初めてのワンマン・ライヴ("SAISEIGA 1st ONE MAN LIVE「LET IT SHINE!」")をやったんですけど、そのときは持ち曲16曲をすべてやった感じだったんですね。そして、チケットはソールド・アウトしていた状態でしたし、来てくださった方たちにも楽しんでいただけたようなんですが、やっぱり"まだちょっと曲数が足りないよね"ということになり、そこから"次のアルバムを早く作りたいね"となったのが、今回のアルバムに向けた最初の動きでした。具体的には"6月くらいから作り始めたいね"という話になっていましたね。今回のアルバムの中で言うと「JUMBLE」は、1stワンマンで新曲として演奏したものなのでその時点でできていました。

-なお、昨年12月には今作『NOSTALGIA』から「SPORTS」を先行配信して、iTunes Store(日本)の"メタルトップソング"2位を記録されたのだとか。

Katsuki:どの曲を先行配信するかにあたっては他にも候補曲があって、例えばアルバムの最後に入ってる「Level5」 もいいんじゃないかっていう話なんかもあったんですけどね。でも、あのときはReganからの、"今回は「SPORTS」がいいと思う"という提案を生かすことにしたんです。ある意味、「SPORTS」は『NOSTALGIA』の中でもちょっと異色な感じがある曲だし、SAISEIGAにありそうでなかった系統のテイストでもあるんですよ。それだけに、最初は"どうなんだろう?"って思ったところもあったんですが、逆にそういうものを出すのも新鮮で面白いかなと感じるようになり、バンド内での意見もまとまったので、結果として先行配信することになりました。

-「SPORTS」は不思議な爽快感の漂う楽曲になっている印象です。重く激しいサウンドを得意とするSAISEIGAのパプリック・イメージとは、たしかにちょっとしたズレがあるせいか、そこに不思議な面白みを感じることができますね。

Regan:私は、この「SPORTS」がすごく好きなんですよ。前作『THE SUN』の最後に入ってた「FEVER」とか好評だったし。いったんあの12月のタイミングで配信するときは、「SPORTS」みたいな元気なのかましたかったんです。

-なるほど。ちなみに、今回のリード・チューン「JUMBLE」については、アルバムのリリースに先駆けて、YouTube公式チャンネルでMVが先行公開されましたけれど、今作『NOSTALGIA』を代表する存在としてこの曲に白羽を立てた理由は、やはりReganさんいわくの"クール"な曲だったからですか?

Katsuki:さっき桐子が言っていた通り、この「JUMBLE」は1stワンマンのときにサプライズ的に披露した新曲だったんですけど、もともとSAISEIGAはコロナ禍で始動したバンドなので、最初からライヴでは"声が出せない"状況だったんですよ。もちろん、みんなが声が出せなくてもライヴはできるし、コール&レスポンスが絶対に必要! とまでは思ってなかったんですけど、EP『芽』(2021年リリース)の1曲目に入れてたインスト「牙(instrumental)」をライヴで流し始めて、場内から自然と手拍子が沸き起こるようになったのに気づいたとき、そのイメージを新曲に当てはめていきながら、SAISEIGAらしいヘヴィなものをかたちにしてみよう、と思いながら作ったのが「JUMBLE」だったんです。

-そして、そのあと「JUMBLE」はライヴで育っていくことにもなったわけですね。

Katsuki:まさにそうなんです。ここまでお客さんたちとライヴの場で共有してきたストーリーがあるので、このアルバムのリード・チューンとしてMVを撮るなら「JUMBLE」だろう、となりました。SAISEIGAは基本コンセプトとしてグルーヴを大事にしているんですが、この「JUMBLE」は特にグルーヴ感の強く出た曲になったと思いますね。

-このアルバムでは「火花-instrumental-」から始まって「HANABI」へと繋がる展開も、オープニングとしてとても秀逸ですね。

Katsuki:この2曲はもともと繋げて考えていたわけではなく、なんなら「火花-instrumental-」は作る予定のなかったものなんです。だけど、これまたReganのひと言で流れが変わったんですよね。遠征中の移動中かなんかに"Katsu君(Katsuki)、そろそろライヴ用に新しいオープニングのSE作ってよ"って言われまして。その段階では、さっきもちょっと話題に出た当時のSE「牙」を、バージョンアップさせてほしい的な話だったと思うんですけど、それからしばらくして今回のアルバムに入ってる「成敗ダ。」ができたあとに、また"ライヴ用のSEをさらに新しくするか"と思って作ったのが「火花-instrumental-」なんです。

-そういうことでしたか。

Katsuki:しかも、さらにネタバラシをすると、「成敗ダ。」は僕とWakkunで作った共同クレジットになってる曲で、当初は別の2曲だったものをひとつにまとめたかたちになってるんですね。で、実は「火花-instrumental-」は、「成敗ダ。」の原曲で使ってたリフをモチーフに作ったSEになってるんです。せっかく完成したんだからアルバムにも入れよう、ということでこの完成形になりました。タイトルは"HANABI"の前に来る曲だし、"火花-instrumental-"でいいんじゃないって決まったよね?

Regan:うん。火花散らしてこうぜ! ってことで(笑)。この「火花-instrumental-」から「HANABI」の流れは、予想外だったけどすごく大満足です。

-「HANABI」はデスボ全開と思いきや、日本語の歌詞がかなり明確に聴こえてくるところがなんともエモいですね。

Regan:このメロ、キャッチーですよね(笑)。実質的なアルバムの1曲目だし、私としては前(『THE SUN』)の「RIDE ON」みたいにもっとガンガン攻撃的に行くつもりだったのに、最初のうちはちょっと拍子抜けしちゃったところがあったんですよ。でも、Katsu君に"そうじゃない。大丈夫だからよく聴いて!"って言われて、いったん冷静になってメロディ以外のバンド・サウンドを聴いたときには、印象がガラッと変わりました。よく聴いたら"なんだ、すげーカッコいいじゃん!"ってなったから、この曲はみんなにもそこのギャップを楽しんでもらえるといいと思います。

-そんな「HANABI」に始まり今作には「SPORTS」、「JUMBLE」、そして配信候補曲だったという「Level5」と、リード・チューンとしての役割を果たせる曲が4曲も入っていることになります。ずいぶんといい役者の揃ったアルバムに仕上がっているのですね。

Katsuki:かなり充実しているといいますか(笑)、どれを推せばいいのか悩むくらいのアルバムになっているのは間違いありません。

-各楽曲のクオリティが高いのに加え、今作については、サウンドメイクが進化している点も前作との大きな違いであると感じられます。特に、ギターの音像はずいぶんと変化したように思うのですが、そこは意図して変えたことになりますか?

Wakkun:自分としてはそんなに大きく変化させた意識はないんですよね。曲ごとにニュアンスは変えてますけど、それはエンジニアのHiroさんと相談していった結果です。

Katsuki:たぶん、今回はドラムのサウンドが特に違うことでギターも違って聴こえるんだと思います。今回はよりメタルっぽくタイトになっています。今回はそこを目指してたっていうのはありました。だから、録り方も変えたんですよ。前作のときは僕がほぼギターもドラムも録っていて、ミックスをHiroさんにお願いしてたんですが、今回はドラム録りをHiroさんに携わってもらってたんです。メタル・ドラム・サウンドのスペシャリストですから。ギターは「HANABI」をHiroさんに録ってもらいました。それ以外は今回も僕が録音して、ミックスとマスタリングがHiroさんという布陣です。

桐子:あと、ドラムは使ってるメーカーが変わりました。今回はイギリスのハンドメイド・ドラムのBritish Drum Co.とエンドースさせていただいたので、それを使って録ってます。シンバルもトルコのハンドメイド Agean Cymbalsで、きらびやかな音が特徴的で、ドラム・セットから出る音そのものが、すごくパワフルでメタル向きなものに変わったと思いますね。