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INTERVIEW

JUBEE

2024.08.10UPDATE

JUBEE

Interviewer:サイトウ マサヒロ

クリエイティヴ・チーム、CreativeDrugStoreやダンス・ミュージック・プロジェクト、Rave Racersの主宰であり、2022年からはAge Factoryのメンバーと結成したバンド、AFJBのフロントマンとして、全国各地のライヴハウスやロック・フェスも沸かせているラッパー、JUBEE。7月31日にリリースした2ndソロ・アルバム『Liberation』には、上田剛士(AA=)、JESSE(RIZE/The BONEZ)、清水英介(Age Factory)、牛丸ありさ(yonige)らが参加。独自のミクスチャー・サウンドでリスナーの感性を解放する、ロック・ファンも必聴の一作となっている。激ロック初登場の今回は彼のロック・サイドに焦点を当て、そのルーツやロック・シーンでの活動で掴んだ実感、そして最新作に込めた思いに迫った。

-2ndアルバム『Liberation』完成おめでとうございます! リリースを目前に控えた現在の率直な心境を教えてください。

早く聴いてもらいたいっていうのがまず第一で。あとは、アルバムを聴いて終わりじゃなく、ライヴでみんなと共有するまでを1セットだと思って作ったので、早くライヴをやりたいですね。めちゃめちゃワクワクしてます。

-激ロックに初登場ということなので、今回は、JUBEEさんとロックの繋がりにフォーカスしたインタビューにできればと思います。そもそもJUBEEさんとロックの出会いは?

小学校4年生くらいのときに携帯電話のCMでDragon Ashが流れてて、その数日後、親とCD屋に行ったときに"あのCMで流れてた曲を聴きたい!"ってことで『Life goes on』のシングルを買ってもらったのが始まりでした。

-ということは、JUBEEさんにとってミクスチャー・ロックが音楽の原体験なんですか?

親父が結構音楽好きだったんで、レゲエやブラック・ミュージックは聴いてたんですけど、自分から能動的に音楽を聴こうと思ったのは、たしかにDragon Ashが最初かもしれないですね。

-その後、中学、高校ではどのようなロック・アーティストを聴いていたんですか?

中学のときにバンド好きな先輩がいたり、付き合ってた彼女がポップ・パンク好きな子だったりしてGORILLAZ、NOFX、MXPXとかを教えてもらって聴いてました。あとは『Punk-O-Rama』(Epitaph Recordsによるコンピレーション・アルバム・シリーズ)をTSUTAYAで借りたり、当時リリースされたJAY-ZとLINKIN PARKのコラボ・アルバム『Collision Course』やSUM 41『Chuck』を聴いたり。めっちゃ雑食だったんで、ヒップホップも同時に聴きながら広く浅く。

-自分でギターを弾こうとか、バンドを始めようという思いはなかった?

ギターを持ってるやつがカッコいいと感じるか、マイク握ってるやつがカッコいいと感じるのかの分かれ道だったと思うんですけど、当時はファッションも含め、バンドマンよりもB-Boyのほうがカッコいいと考えてたんで。学校の軽音部も、不良っぽいというよりは文化系の雰囲気だったから。そういうやつらとも音楽を共通項に仲良くしてたけど、やっぱりラッパーのほうがカッコいいでしょと。

-その中でも、Dragon AshのKj(Vo/Gt)さんにはアイコンとしての憧れを持ち続けていたり?

そうですそうです。ファッション雑誌とかにもめっちゃ出てたし。ファッションも音楽も、すべてひっくるめてKjさんからの影響が一番大きかったですね。

-同じくJUBEEさんが影響を受けたロック・アーティストとして、THE MAD CAPSULE MARKETSやhideさんの名前をたびたび挙げていますよね。

順番的には、Dragon Ash→THE MAD CAPSULE MARKETS→hideって感じです。MAD(THE MAD CAPSULE MARKETS)は、大学生のときにバイトしてた地元のステーキ屋で、閉店後に店長が有線で流してて。それから店長に(HED) P.E.やWHITE ZOMBIE、THE PRODIGY、SOFT BALLETとかを教えてもらったんですけど、一番ハマったのはMADでしたね。

-hideさんに関してはどうですか?

hideにハマったのはわりと最近、コロナ禍の直前くらいで、もちろん存在は知ってたけどヴィジュアル系のイメージが強くて、俺はストリート系が好きだったから入り込もうとしてなかったんですよ。ただ、たまたまNetflixで"JUNK STORY(hide 50th anniversary FILM『JUNK STORY』)"を観たら、めっちゃお洒落だし考え方もイケてるし、音楽もかなりミクスチャーで衝撃を受けて、一気に好きになりましたね。もっと早く知っときゃ良かったって思うくらい、くらっちゃいました。

-例えばRave Racersの楽曲からも、THE MAD CAPSULE MARKETSのエッセンスが感じられて、彼らとの出会いは、JUBEEさんのクリエイティヴの様々な面に影響を与えているんだろうなと思わされます。

最近気付いたんですけど、打ち込みのサウンドが好きなんですよね。同じミクスチャー・ロックでもRAGE(RAGE AGAINST THE MACHINE)にはそんなにハマってこなかったんですけど、その違いって打ち込みがあるかないかだと思ってて。Dragon Ash、MAD、hideってみんなデジタルな音が入ってるし、そっちのほうが性癖にぶっ刺さるんだなと。

-JUBEEさん自身の楽曲では、2019年1月にリリースしたシングル「NOISE SURFER MIND」から、ミクスチャー・ロックのテイストを前景化させていますね。この方向性に進むきっかけはありましたか?

当時はCreativeDrugStoreのみんなとシェアハウスしながら、クルーをアゲていくための動きをしてたから、自分のためだけのわがままな活動があまりできなくて、それがすごく嫌だったんですよ。やっぱり、デジタル且つミクスチャーなトラックで曲を出したくて。当時そんなことをやってるラッパーは他にいなかったし。だから"俺、ちょっと1人で頑張るから"って言って家を出て、それから一発目のシングルが「NOISE SURFER MIND」でした。ギターが弾ける友達もいないから、サンプリングでトラックを作って。今のJUBEEが始まったのはこの曲からだし、思い入れがある曲ですね。CreativeDrugStoreのシェアハウスから抜け出すための意志表明、"やったんぜ"っていう。

-「NOISE SURFER MIND」をリリースしてみて、それまでと違う手応えは感じましたか?

周りのプレイヤーとかは反応してくれたけど、それが世間に伝わったかと言ったら全然そんなことはなかったですね。その後もめっちゃバイトしてたし。

-では、様々なカルチャーを飲み込んだJUBEEさんのスタイルが、十分にリスナーに伝わったタイミングはいつだったんでしょう?

結構時間がかかったなと思いますけど、本当の意味で伝わったのはAFJBを始めてからかな。それまでの俺って他の誰かがやろうと思えば真似できるポジションだったけど、今俺の代わりになれる者はいないと思うんすよ。バンドやってて、ラッパーやってて、Rave Racersみたいなのもやってて......結構独特な位置にいるじゃないですか。そういう俺のキャラクターが浸透したのは、やっぱりAFJBを組んだからですね。

-ただいろんな曲をやってるラッパーってだけじゃないという。

そうそう。例えば、LIL PEEPが出てきてから、その真似みたいなトラップ・メタルをやるラッパーが増えたんすよ。ヒップホップって最先端な音楽だからこそ、流行に乗っかるやつも多くて。でも、俺にはそれが軽く見えちゃう。中途半端にやっても本気感って伝わらねぇなって。だからバンドを組んだし、シングルやEPじゃなくてしっかりアルバムを作ったんです。それで、本当に俺はロックが好きなんだっていうのを証明できたと思う。

-AFJBで経験したバンドのフロントマンとしての活動は、きっとそれまでの活動と全然違いましたよね。

全っ然違いますね。MCにしても、クラブでやるヒップホップのライヴは"朝まで楽しもうぜ!"みたいな適当なことしか言わないことも多いけど、ロックのライヴでは、俺がいかにロックのシーンをリスペクトしているかってことを、真摯に伝えないと好きになってもらえないだろうなと思って。だから"Dragon Ashが好きで、MADが好きで、今はこういう活動をやってます"ってまっすぐに話していたら、苦手だったMCも上達してきました。成長しましたね。あとは、とにかくライヴというものが好きになりました。

-クラブとライヴハウスではお客さんの雰囲気も違いますしね。それこそMCの間も、クラブではお酒を飲んで喋ってる人も少なくないけれど、ライヴハウスでは熱心に耳を傾けてる人が多いんじゃないかとか。

去年、プロデューサーのYohji Igarashiと『electrohigh』ってEPをリリースしてクラブ・ツアー("JUBEE × Yohji Igarashi electrohigh Tour 2023")をやったんですけど、まぁ俺がMCしてるときに後ろで喋ってるやつがいるんですよ。それが"ウザ!"と思って(笑)。それからはライヴハウスでやろうかなとか、ナイトじゃなくてデイでやろうかなとか、前より喋りたいことや伝えたいことが増えた分、もっとライヴを本気で楽しんで本気で観てくれる人の前でやりたくなりましたね。だから4月のワンマン・ライヴ([JUBEE One Man Live "Playground"])も下北沢SHELTERでやったし。

-バンドでの活動で得たものが他の現場にも波及したということですね。

そうですね。本当に、今の自分があるのはAFJBのおかげです。ヒップホップのライヴよりパワーがあるし、自分もお客さんからエネルギーを貰えるし、それに対して感謝の気持ちを抱いてる。ただクラブでライヴをやり続けていても、こんなことは感じられなかったと思います。

-そのロック特有の"パワー"とは、具体的に言うと?

ヒップホップはラッパーにスポットライトが当たっていて、お客さんが"有名人だ!"ってカメラを向けるみたいな感じ。それに対して、バンドのライヴは会場の全員にスポットライトが当たって、演者だけじゃなくてお客さんも一緒にライヴを作っていくっていう印象があって、そのぶつかり合いに感動するんですよね。叫んでるやつもいれば、泣いてるやつもいて......お客さんの顔を見てて感動するのがロックのライヴの醍醐味ですね。

-では改めて、2ndアルバム『Liberation』について聞かせてください。ロックはAFJB、ヒップホップはCreativeDrugStore、ダンスやレイヴはRave Racersとそれぞれのジャンルで表現のチャンネルを持っているJUBEEさんですが、ソロ・アーティストとして今作ではどのような表現を目指したのでしょう。

最初は前作『Explode』(2022年リリースのアルバム)の進化版を作ろうっていうのがザックリとしたテーマで。完成してみると、この2年間の経験値の結晶みたいな作品になりました。音も進化してるし、あとバンド界隈からのゲストも増えたけど、俺は基本的に仲良くなった人としか曲を作らないんで、そこにも歩んできた歴史を感じますね。たぶん、AFJBを組んでなかったら上田剛士さんともJESSEさんとも一緒にやれてなかったんですよ。でも、向こうもアーティストである以上、俺のことを認めてくれたからやってくれてるってことだと思うんで、『Explode』をリリースしてからここまで頑張ってきた結果が表れたかな。

-ただ今お話にも出た通り、AA=のカバー「PICK UP THE PIECES (Mass Infection Mix)」や新曲「Re-create」には、上田剛士さんがプロデューサーとして参加しています。タッグを組むまでの経緯について教えてください。

JUN INAGAWAが原案のアニメ"魔法少女マジカルデストロイヤーズ"の、オープニング・テーマ(愛美「MAGICAL DESTROYER」)でご一緒させてもらったのが初対面で。2回目に会ったときに、LINEを交換することになり......たぶん剛士さんから言ってくれたのかな、俺からは言えないんで(笑)。大先輩だから気軽に連絡もできなかったんですけど、去年の"REDLINE TOUR 2023"でAFJBのライヴを観てもらったり、俺もAA=のライヴに行ったりしてたんですよ。で、ある日ふと「PICK UP THE PIECES」をカバーしたら面白そうだなと思って、剛士さんにLINEしてみたんです。そしたら"いいよ"って返ってきて、"マジか"って。

-なぜ「PICK UP THE PIECES」をカバー楽曲として選曲したのでしょう?

AA=のライヴで一番パワーを感じる楽曲だし、"Oh Oh"みたいなシンガロング感ってヒップホップにはなかなかないから、それをやってみたいなと思って。

-インタビュー冒頭でも、ライヴを意識した作品だと語っていましたね。

ついこの間、"TMC"でのAFJBのライヴで「Toxic」(2023年配信リリースのシングル)をやったときに、モッシュが自然発生したんですよね。いつもは"真ん中開けろ!"みたいな煽りをするんですけど、そのときは何も指示してないのにバーッと開いて、めっちゃアガったんです。ヒップホップでも、そうやって勝手にアクションが起こるようなライヴをやりたいっていう目標があるので、そのために「PICK UP THE PIECES」を選びました。