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INTERVIEW

NOTHING MORE

2024.07.29UPDATE

2024年07月号掲載

NOTHING MORE

Member:Jonny Hawkins(Vo/Dr)

Interviewer:山本 真由 Translator:安江 幸子

SHINEDOWN、PAPA ROACH、DISTURBEDなど大物バンドとツアーで共演し、グラミー賞で複数部門にノミネートされるなど、これまで順調にキャリアを積み上げ、ヘヴィ・ミュージック・シーンにその存在を示してきたNOTHING MORE。そんな彼らが、コロナ禍で困難な制作過程を経て生み出されたにもかかわらずエネルギッシュなアルバムとなった前作『Spirits』(2022年)を経て、わずか約1年半というスパンで新作『Carnal』を完成させた。今回のインタビューでは、2015年の初来日以降の彼らの近況や、新作にまつわるエピソードなどをフロントマンのJonny Hawkinsに詳しく語ってもらった。


アルバムの骨組みの大半がしっかり見えてくると――アルバムが俺たちに何を語り掛けているのかが分かってくるんだ


-ニュー・アルバム『Carnal』のリリース、おめでとうございます。新作について伺う前に、激ロックでは2015年の来日時に行ったインタビュー(※2015年2月号掲載)以来の取材となりますので、その後のバンドの近況についてお聞きしたいと思います。5thアルバム『The Stories We Tell Ourselves』(2017年リリース)は、メンバーのパーソナルな出来事や、メンバー・チェンジなど様々な苦難を乗り越えて制作されたという重要性に加え、セールス的に成功しただけでなく、グラミー賞の最優秀ロック・アルバム含む3部門でノミネートされるなど、バンドのキャリアにとっても、1つのマイルストーンとなる作品だったのではないでしょうか。

あれは間違いなく俺たちにとってマイルストーン的なアルバムだったね。グラミー賞にノミネートされたのも記念すべき出来事だった。今振り返ると、その前のセルフ・タイトル作(2014年リリースの『Nothing More』)は、世界への俺たちからの自己紹介アルバムみたいな感じだったけど、『The Stories We Tell Ourselves』ではいよいよ世界中に名前が知られるようになって、次の層への壁をぶち破ったような作品だったと思う。いい時期だったと振り返ることができるね。

-また、コロナ禍に制作された前作『Spirits』は、音楽表現にもより自由度が増して、バンドをさらに次のステージに押し上げたという印象を受けました。アルバム制作においてはいろいろな制限もあったかと思いますが、そんななかでパワフルな作品を作り上げられたことには、どんな要因があったと考えていますか?

正直言ってあれは作るのに一番フラストレーションを感じた作品だったよ。同時にとても開放感を味わった作品でもあった。それまでよりずっと幅広く探求することができたし、自分たちにもあまりルールを課さずに作ることができたからね。ただ、コロナ禍が起こったとき、俺たちはバラバラの場所に住んでいたんだ。お互いものすごく遠くてね。俺はベーシスト(Daniel Oliver)とギタリスト(Mark Vollelunga)のところから車で8時間くらいのところに住んでいたんだ。ドラマーのBen(Anderson)の家なんて15~20時間は車を走らせないといけないんじゃないかな。

-うわぁ......。

たしかに幅広く探求することはできたけど、他のアルバムほど集まることができなかったからフラストレーションが溜まったよ。コミュニケーションをテキスト・メッセージやGoogle Chatやメールでやらないといけなかったしね。すると、何千ものヴィジョンを民主的に多数決や話し合いでまとめようにも、プロセスがすごく難しくなるんだ。でも俺はそういう経験ができてある意味感謝している。メンバー一人一人が成長することができたからね。ただ、バンドとしては今回の『Carnal』まであまり成長できなかった。『Carnal』では実際に1つの部屋に集まる機会がうんと増えたから、『Spirits』で個別に作業したことで個人として得たものを持ち寄って、アルバム作りに活かすことができたと思う。

-聴き手としては前作で自由度が高まった気がしていましたが、そのフラストレーションをぶつけた結果、音楽的に自由になったという感じでしょうか。

そうだね。あのアルバムにはいろんな意味でたくさんのフラストレーションが込められている。作り方自体フラストレーションが溜まったからね(苦笑)。それを音楽にぶつけたんだ。もう2度と前回みたいな作り方はしないって決めたから、『Carnal』ではみんなで飛行機に乗って、ロサンゼルスのAirbnbで合宿生活を送ったんだ。

-なんと。そうだったんですね。

1回につき1~2週間くらい。だから今回のほうがずっと楽しく作れたよ。

-ある意味オールド・スクールな作り方だったのですね。一緒に暮らして、1つの部屋に集まって曲を作って。

そうだね。前回よりずっとオールド・スクールだった。食うのも呼吸するのも寝るのも一緒。100パーセント集中できるように、家から離れて2週間くらいずつそんな感じで暮らしたんだ。

-今回の新作『Carnal』は、そんな前作から1年半ちょっとという短いスパンでのリリースとなりましたが、新作の制作はいつ頃開始したのでしょうか?

『Spirits』が出てからそう経っていない頃じゃないかな? たしか2年くらい前。俺がLAに飛んで、最終的に一緒に組んだプロデューサーと作業したんだ。Drew Fulkという人で、WZRD BLDって名前で活動している。あと、Zakk Cerviniという人とも一緒だった。3人で「If It Doesn't Hurt」という曲を書いたんだ。1stシングルになった曲で、最初にできた曲。あれは数時間でできたよ。スタジオの中で、火が出るような勢いで、『Spirits』を作っていたときに溜まっていたものを吐き出したんだ。書く心構えはしっかりできていた。そこに2人が寄り添って、吐き出す手助けをしてくれたんだ。とにかくものすごい速さでできた曲だよ。

-となると、その曲が全体の雰囲気を決定付けた面もあるかもしれませんが、今作のテーマや、作品に込められたメッセージについて教えてください。

たしかにあの曲がアルバム全体の雰囲気を決定付けたとは思う。最初にできた曲だし、ワクワクしたしね。ただ、テーマは、アルバム制作プロセスの最後のほうになってやっと浮かび上がってきたような感じだった。自然に浮かび上がってきたんだよね。作っている間、俺たちは意識して計画していないのに特定のものになびいているような感じだった。全体の4分の3くらい進んだところで、いくつかの曲に共通するものが見えてきたんだ。言葉やフレーズが、特定の方向に向かっているような気がした。それで作り立てのものを熟考しながら、テーマはなんなのか、アルバムの名前はどうするかみたいなことを話し合ってね。そこでタイトルの"Carnal"や、インタールードを入れることが最後のほうで決まったんだ。

-特に青写真があったというわけではなく、自然発生的な流れで進んでいったのですね。最後のほうでようやく全体像が見えてきたと。

そう、その通りだよ。アルバムの骨組みの大半がしっかり見えてくると、後は仕上げや調整だけになる。そうすると、アルバムが俺たちに何を語り掛けているのかがわかってくるんだ。自分たちが何に取り組んでいたのかがね。そこから掘り下げていったり、包まれていたヴェールを開けてみたりしながら、アートワークやコンセプトを考えていくんだ。

-なるほど、ありがとうございます。先ほどあったように今回はオールド・スクールな制作プロセスに戻ったとのことでしたが、アイディアの共有方法やレコードのプロセスで、コロナ禍を経て"この方法は便利だから続けたい"と思ったことや、それ以前と変化したことはありましたか?

俺たちが『Spirits』から学んだのは――離れていることがあまりに多かったから......世界中そうだったとは思うけどね――新しいテクノロジーかな。新しいレコーディング方法。自分で編集作業をやる方法だね。1人で部屋にこもってひたすら自分の音を録ることが多かったから。プロデューサーもいない、外部からの影響もない状態。Markは自分のギターのエフェクターについて深く掘り下げることができたし、俺もヴォーカルの深みにハマることができた。他のメンバーもそんな感じ。今回は、プロセスの75パーセントくらいをオールド・スクールに戻したいというのがあったけど、25パーセントくらいはそれぞれ飛行機で家に帰って――2週間LAで過ごした後は家で1ヶ月過ごして、またLAに行くという感じで、集まったり離れたりを繰り返していたんだ。たまにツアーに出たりもしたけどね。その離れている時間を使って細かいところをそれぞれが調整していった。Markは家に帰ってギターを録り直していたし、俺もヴォーカルを部分的にトラッキングし直したり、ハーモニーや合唱団のヴォーカルを重ね録りしたりしていたよ。それをプロデューサーのDrewに送るんだ。そういうやり方が俺たちにとってはすごくうまくいくことが分かった。部屋に1人でいて何かアイディアを追い掛けていると、他のやつらと部屋にいると気が散ってしまうものにも取り組むことができるからね。部屋に集まっているときは外のやつらにOKを貰わないと次に進めないけど、1人だったらとことん追い掛ける余地ができるんだ。さらにワイルドなアイディアだって追い掛けることができるし、それを形にできるか試してみることもできる。人がいると気が散ったり、さっさと次に行かないといけなかったりするときもあるけどね。

-両方の手法のいいとこどりができましたね。

まさに!