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INTERVIEW

NOTHING MORE

2024.07.29UPDATE

2024年07月号掲載

NOTHING MORE

Member:Jonny Hawkins(Vo/Dr)

Interviewer:山本 真由 Translator:安江 幸子

-今作のプロデューサー、WZRD BLDとは初めてタッグを組んだ作品ですが、彼を起用した経緯と決め手を教えてください。

連絡してみたいプロデューサーをリスト化したんだ。電話するか、このインタビューみたいにZoomで会おうと思ってね。外部のプロデューサーを起用したアルバムは今回が初めてだった。他のアルバムはセルフプロデュースか、マネージャーのWill Hoffmanと共同でプロデュースしたものだったからね。Willは今回も全てのプロセスに関与してくれているけど。というわけで外部のプロデューサーを使ったのは本当に久しぶりだったんだ。候補たちとは長いインタビューをしてとことん話し合ってから決めようと思っていたけど、最初にインタビューしたのがDrewでさ。終わる頃にはみんなで顔を見合わせて"もう他の人に当たる必要はないよな?"なんて目配せし合ったよ(笑)。"この人に決まりだ!"って直感で分かったんだ。このバンドも長い間やっているし、自分たちのこともよく分かっているから、彼が正しい選択だってすぐにわかったよ。

-セルフプロデュースの経験がプロデューサー選びにも活きたのかもしれませんね。

それは間違いないね。

-今作はヘヴィな部分はよりヘヴィに、メロディの際立つパートはより感情的に、ダイナミック且つドラマチックなアルバムになっていると思います。サウンド面で最も重視した部分はどんなところですか?

ありがとう! いい質問だなぁ......曲によって、それからその時々によっても全然違ったんだよね。テーマの話をしたときも言ったけど、常に意識的な選択をしているわけではなかったんだ。特に序盤は潜在意識的なプロセスというか。それが、時間が経つうちに特定のものになびいていくようになった。本能に従っていたからね。最終的には緩急があるものを目指していたのかな。ものすごくヘヴィなギター・リフ主導で、メタルの影響を自分たちの音楽に戻し入れた。セルフタイトルのアルバムで言えば「This Is The Time」みたいな、ルーツにまた触れてみたかと思えばエレクトロニックな要素で実験もしたよ。ギタリストのMarkは8弦ギターをよく使っていたから、全体のサウンドに大きな要素を加えることができた。すごく低い音が出せるからね。全体的な傾向としてはそんな感じかな。あとは曲によって全然違った。聴き返してみて"魔法を感じるかどうか"が決め手だったね。ゾクゾクするかどうか。ゾクゾクがやってきたらそれはいい曲だってことだから、先に進むことができるんだ。

-今作はDISTURBEDのDavid Draiman(Vo)、I PREVAILのEric Vanlerberghe(Vo)、シンガー/ラッパーのSINIZTERと、多彩なゲスト・アーティストの参加も話題となっていますね。楽曲ごとの世界観に合うコラボレーターだと思いますが、彼らをゲストに選んだ理由や経緯について教えてください。

DISTURBEDとI PREVAILとはスイスで一緒にショー("Heavy Load Festival")に出たんだ。

-おや。そうだったんですね。

ショーの後で一緒に過ごすことができてね。両方のバンドとつるめて本当に楽しかったんだ。すごく気さくな人たちだったよ。そのヨーロッパ・ツアーの後間もなくアメリカに帰ってきて、またアルバム作りに取り組んでいたときに、内輪で"他のアーティストをフィーチャーするかどうか"という話になったんだ。『Spirits』でもフィーチャリングをたくさんやるつもりだったけど、みんなうまくいかなかったか立ち消えになってしまったからね。前作では叶わなかったけど、本当は前からいろいろやってみたかったんだ。だから今回は"好きな相手とフィーチャリングを実現しよう"という話になった。"もっとアグレッシヴにやりたい。いろんな人に声を掛けよう"ってね。DavidとEricに関しては、あのヨーロッパ・ツアーの後でアプローチしたんだ。すごくオープンで懐が深い人たちだったからね。個人的なコネクションがあったからこそだよ。SINIZTERの場合は偶然もあったんだ。マネージャーのWillの息子がFPS(ファーストパーソン・シューティング・ゲーム)に夢中でさ。SINIZTERの曲でハードなエレクトロニック・スタイルのやつがあるんだけど......フォンクというサブジャンルなんだ。知ってる?

-はい。

彼の曲で「One Shot, One Kill」というのがあって、そのゲームに使われているんだ。マネージャーのWillの息子が彼にその曲を見せて、それをWillが俺たちに見せてくれた。初めて聴いた人だったけど、クールだと思ったね。自分たちのジャンル外から誰か連れて来たいと思っていたんだ。メタルやロックの人じゃなくてね。それはDavidとEricがいるし。彼のハードでフォンクなエレクトロニックが、ジャンルのクロス・オーバーとしてぴったりだと考えたんだ。

-なるほど。そのゲストたちとはDavidが参加した「Angel Song」をはじめ、MVも作りましたね。映像のコンセプトやアイディアについては監督とどのように共有しているのですか?

通常はマネージャーと俺、それからレーベルのプロデューサーとの会話から始まるんだ。たいていは俺たちが興味を持っている監督の名前をいろいろ挙げる。誰と組みたいか、誰を確保したいかに関しては、俺は結構意見がはっきりしているから、それぞれ違う理由で監督を起用したんだ。その監督のアートやアプローチに興味があるというのもあるけど、予算もあるし(笑)、スケジュールも合わないといけない。相手を絞るまでにそれだけのことを考えないといけないんだ。その後は電話やZoomで何回か話して、ブレインストーミングみたいなことをやった。お互いたくさんのアイディアを投げ合って、その中心点みたいなところでコンセプトができたんだ。クリエイティヴなヴィジョンと予算の合うものがね。そこがいつも難しいところだよ(苦笑)。

-また、ヴィジュアル面では、ジャケット・アートワークも非常にアイコニックなものとなっていますが、古典的な芸術と近未来的なイメージを兼ね備えたこのようなこのアートワークには、どんな意図やメッセージがあるのでしょうか?

これは個人的な話になるけど、公私ともどもいろいろ攻撃された時期だったんだよね。それまでの人生では、俺はあまり敵を作ってこなかった。俺は人とうまくやっていけるタイプで、いろんな人間関係やシチュエーションをいい状態で終わらせることができていたんだ。みんなもいいことを言ってくれていたから、攻撃されたのはそのときが生まれて初めてだったよ。辛口になって、怒りや腹立たしさや憎しみを表に出すのがいいのか、それとも、特定の人や自分が間違った方向に行ってしまったことにフォーカスするよりも、これらの苦しみや攻撃を自分の中で価値のあるものに変えたほうがいいのか、俺は選択を迫られた。自分の奥深くにある、誰にもアクセスできない価値のあるものをどうやって引っ張り上げるのか。苦しみが痛みや試練によって否応なしに心の奥深くを掘り下げることになって、その価値のあるものを見つけることになる。というわけでアートワークでは、Clint Englishという人とコラボしたいと思った。俺の仲のいい友達で、これらの曲のもとになった出来事があった頃、俺の家からほんの数軒先に住んでいたんだ(笑)。"古代ギリシャにあるような、壊れて割れてしまった感じの人間の胸像みたいなデザインが欲しい。同時に未来的でヒューマノイドっぽい雰囲気も欲しい"と伝えた。あと、剣を持たせようか矢を持たせようか話し合って......いくつかバージョンを経て辿り着いたのがあれだったんだ。ということで、ちょっと意味が隠れているんだ。

-傷ついた状態からの回復力を表しているような気がします。

そうだ! この前受けたインタビューで、面白いことを言われたな。俺も以前聞いたことがあるから、潜在意識的に影響を受けていたのかもしれないと思ったんだけど、日本には壊れたものを直す芸術があるらしいね。

-あぁ、壊れたお椀とかを直すやつですね。

そうそう! 意識的にやったわけじゃないけど、今回のジャケットに通じるものがあるような気がしたよ。

-分かる気がします。食器のひびや欠けを金で直す金継ぎという技術があるんですよ。

それのことだと思うよ。

-日本のものと共通点があるのは嬉しいですね。他に今作に影響を与えた作品や、インスピレーションを得たものなどについて教えてください。歌詞がいつも深いので気になりまして。

俺はすごく積極的にインスピレーションを求めていて、いろんなアーティストの音を聴いたり映画を観たりしているから、このアルバムを作っていた1年半の間、毎月膨大な量のインスピレーションに出会っていたんだ。その時々でコロコロ変わるんだよ。いつも新しいものを聴いているしね。そういえば、実際にあった犯罪を取り上げた番組をよく観ていたよ。どうして人は、とんでもなく悪いシチュエーションやクレイジーな結果に辿り着いてしまうのか、そのあたりの心理を掘り下げようとしていたんだ。当時受けていた大きな影響の1つだったね。今思い出せるのはそのくらいかな。

-ありがとうございます。前回の来日からかなり間が空いているので、日本のファンはNOTHING MOREの再来日に期待していますよ!

早くまたそっちに行きたいよ! しばらく話には出ているんだけどね。

-では激ロックの読者やファンにメッセージをお願いします。

もちろん! 日本に行く計画はあるよ。まだ何も決まってはいないけど、カレンダーに日程を入れられるようにベストを尽くしているところなんだ。このアルバム・サイクルの間にね。日本に行く気は満々だよ。実現するためにはいろんなことをちゃんと組まないといけないけど、このアルバムを引っ提げている間に行けそうな気がして、俺自身は楽観的なんだ。今まで世界中のいろんな国に行ったけど、思い出話を一番するのが日本だ。本当だよ。日本人のホスピタリティは俺たちが今まで経験した中でも最高だね。ディテールへのこだわりがプロフェッショナルで、パフォーマンスへのプロセスに対してリスペクトがある。ショーを企画している人たち、街中で宣伝してくれている人たち、ステージ・クルー、全てがものすごくポジティヴで印象に残っているんだ。大尊敬だし、日本のみんなに心からの称賛を送るよ。どうしたらそんなにいい仕事ができるのかわからないけど、ぜひ続けてほしいね(笑)。