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INTERVIEW

AINSEL

2023.06.01UPDATE

2023年06月号掲載

AINSEL

Member:Riku.(Vo) Hiro(Gt) Yuji(Ba) You(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

メイン・コンポーザーのHiroいわく"全曲をリード曲として作った"という、AINSELにとっての3rdアルバム『EIGHT』は、まさにその言葉に違わぬ充実ぶりを誇る作品へと仕上がったようだ。コロナ禍においても"逢いたい人に逢いに行く、逢いたいと想ってくれる人に逢いに行く。"という信念を貫き通し、広島を拠点にしながら、年間100本ペースでの精力的なライヴ活動を展開してきたAINSELが、ライヴ・バンドとして散々鍛練されてきたことは間違いなく、その成果として今回のアルバム『EIGHT』での彼らは、多彩なタイプの楽曲を多岐にわたるアプローチで聴かせていくことを、ロック・バンドとして見事に達成している。

-AINSELにとって3rdアルバムとなる『EIGHT』がここに完成しましたけれども、今作のレコーディングにあたってバンド内で意識していたテーマや、コンセプトなどがありましたら教えてください。

Hiro:AINSELは、コロナ禍に入ってからずっと、年間100本ペースの大規模ツアーを続けてきているバンドなんですよ。曲は僕がほとんど作っているんですが、今回のアルバムに入れた曲たちに関しては、そういったライヴの現場で感じてきたことを生かしたところがとても多かったです。例えば、"ライヴの規制がなくなったらこういうことをしたいよね"とか、"いずれはみんなで一緒に歌いたいよね"みたいなところから、シンガロングの要素を入れた曲を作ったり、ライヴの光景を想像しながらリズムを作っていったり、という曲の作り方をしていくことようなことがかなりありました。

-それにしても、コロナ禍に入ってからずっと年間100本ペースでライヴ活動を続けてきた、というのは他であまり聞いたことがないパターンです。すごいですね。

Hiro:周りがやってないから始めたんですよ(笑)。

Riku.:お客さんたちはなかなか遠征してくるのが難しいだろうし、だったら私たちのほうから会いに行こうっていう気持ちで、コロナ禍以前よりもライヴの本数を増やしたくらいなんです。

-そのような背景を持って生まれた今作『EIGHT』の中において、いわゆるリード・チューンというのはどちらになるのでしょうか。

Hiro:バンド側の姿勢としては全曲リードという気持ちで作ってますが、あえて挙げるならMVも出してる「うるさい」ですかね。今回のアルバムでは、これまで先行して「アオハル」や「RUNWAY」もMVを公開してたんですけど、この「うるさい」は、AINSELが今まで作ってきた曲の中でも斬新なものになっていると思うんです。方向性的にはライヴハウスで聴いて盛り上がるという以上に、SNSとか動画サイトで観たときに、強く印象に残るような力を持った曲になっていると思いますし、MVも普段みたいな演奏シーンが主体ではなくて、イラスト師さんとコラボしたデザイン性の強い映像作品にしてあるんですよ。逆に、「RUNWAY」はライヴハウスでみんなと盛り上がりたい! という気持ちを強く込めた曲になっているので、それぞれ違った個性を持った曲たちを『EIGHT』の中で楽しんでもらえると嬉しいです。

-ヴォーカリストであるRiku.さんは、今作『EIGHT』の制作にあたり特に留意されていたことはありましたでしょうか。

Riku.:今回のアルバムには"message"って曲も入っていて、全体的にメッセージ・ソングを詰め込んだものになっているという特徴があるんですね。だから、歌詞の意味が伝わるような歌い方といいますか、爆音が鳴っているなかでもわかりやすく聴こえるような歌を届けていきたいな、と思いながらレコーディングをしていくことになりました。

-なるほど。そうした一方、ライヴで映える曲やメッセージ性の強い楽曲が多い作品にしていきたいとなったときに、リズム隊のおふたりが果たすべき役割はどのようなところにあると考えていらしたのかも知りたいです。

Yuji:今年でAINSELは活動開始から7年目になるんですが、初期の頃は意図的に難しいことをやったり、自分のベースのプレイに関して言うと派手に動いたり、ということをよくやっていたんですよね。でも、年々そこは変わってきました。まずは歌を何よりも大事にしたい気持ちが今は大きいですし、今回の『EIGHT』でもベースのフレーズはシンプルにして、どっしりと構えた音を出していこう、という意識で弾きましたね。

You:僕も昔はドラムで細かいことをいろいろやるのが好きだったんですけど、今回の『EIGHT』に入ってる曲たちはデモの段階からしっかり作り込まれていたので、余計なことをやる必要はなかったですね。自分としては曲の方向性に沿いながら、Yujiと同じようにどっしり構えたリズムを作っていった感じでした。

-いずれにしても、今のAINSELの音はRiku.さんの歌がまず軸としてあって、それを取り囲んだり支えたりするようなかたちで楽器隊が音を出していく、という基本構造なのですね。

Hiro:前までは全員ができることを全部やる! という感じの音作りをすることが多くて、とにかく全体的に"忙しい"音になってたと思うんです。もちろん、そんな詰め込みに詰め込んだ音が好きだって言ってくれる方々もいたんですけど、僕らとしてはさっきもRiku.が言っていたように、今回は"言葉と歌を伝えたい"という気持ちが強かったんで、僕のギターも含めてアレンジはかなり整理して引き算をしていくことが多くなりました。

-それでいて、先ほどもお話に出てきた「うるさい」では、スラップ・ベースが印象的に使われている場面があり、ただ"引く"だけではない聴かせ方もされていますよね。

Yuji:はい。今回、スラップはほぼ初挑戦でした。

Hiro:デモを作った段階から、この曲には今までやってないことを入れたくてしょうがなかったんです。だから、ギターも今までよく使ってたズンズンした音や重ための音ではなくて、チャキチャキしたカッティングや単音リフを入れましたし、ベースもバキバキのスラップを入れてほしいということでお願いして、猛練習してもらいました(笑)。

Yuji:たしかに同じフレーズをしばらく引き続けましたけど、新しいことをやるっていうのはすごく楽しかったですね。

-相方のYujiさんが新戦法を導入したとなると、Youさんも「うるさい」ではドラマーとしてのアプローチを変えられたりしたのでしょうか。

You:僕もスラップに合うハイハットの刻み方を研究して練習しました。

Hiro:それぞれに試行錯誤した結果、シンプルだけど印象に残る音というものを「うるさい」では作れたと思います。

-「うるさい」は歌詞も斬新といいますか、メッセージ性と呼ぶには刺激的なくらいの尖った言葉が並んでいる印象ですけれど、作詞者であるHiroさんから完成した詞を受け取られたときのRiku.さんは、これをどのように表現していこうと思われました?

Riku.:まずは面白い曲だな、と思いました。今までのAINSELにはなかった新しい雰囲気を持った曲なので、歌うのが楽しみだなってなったんです。そして、歌い方として他の『EIGHT』に入っている曲はどれもきれいに歌っているんですけど、やっぱり「うるさい」に関してはテンション爆上げのフルテンで行くしかない! って思いました(笑)。

Hiro:曲の最後なんて"うるせえよバカ"って吐き捨てちゃってるもんね(笑)。

-ここまで潔く歌い切ってしまうと、ご本人としても"スカッ"とした爽快感を感じられたのではないですか。

Riku.:それはありました。歌っててすごく気持ち良かったです。

Hiro:この曲については、ライヴでもお客さんたちに思いっ切り普段のストレスを発散して欲しいんですよ。ここでの"うるせえよバカ"はお客さんたちに向けてる言葉じゃなくて、現実社会のあれこれに対する"うるせえよバカ"なので、みんなで盛り上がって一緒にスッキリできたらいいなと思ってます。

-つまり、Hiroさんはこの「うるさい」の詞の中でリアルな体験を存分に生かされているわけですね。

Hiro:まぁ、僕に限らずバイト先の店長に対してそれこそ"うるせぇな"と思ったり、ムカつく上司がいたりすることっていうのは結構あるだろうから(笑)。いろんな人間関係もそうだし、日常の中でフラストレーションを感じることは誰でもあると思うんですよ。で、そもそもみんなライヴハウスに何しに来てるのか? って言ったら、音楽を聴きに来てるのもあるとはいえ、どこかで非日常を味わいに来ているところもあると思うので、こういう「うるさい」みたいに曲でステージ側にいる僕らとフロアにいるみんなで、一緒にその瞬間を共有することができたら面白いんじゃないかと考えてるんです。