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INTERVIEW

AINSEL

2021.03.24UPDATE

2021年03月号掲載

AINSEL

Member:RiKu.(Vo) Hiro(Gt) Yuji(Ba)

Interviewer:山口 智男

ドラマチックでエモーショナルなロックを奏でる広島の女性Voロック・バンド、AINSEL。圧倒的な歌声を持つRiKu.を擁する彼らがリリースした2ndアルバム『LIBERATION』は、コロナ禍によるライヴ活動の制限を逆手に取り、楽曲制作に時間を費やした意欲作となった。さらなる曲調の広がりをはじめ、数々の挑戦が実り多きものだったことは、解放を意味するアルバム・タイトルからも窺える。その自信のほどを、ここからさらなる挑戦に向かうメンバー3人の言葉から感じ取ってほしい。

-AINSELはどんなふうに始まったのでしょうか?

Yuji:RiKu.と僕とでバンドをやろうということなって、メンバーを集めていくなかでHiroと出会いました。Hiroも僕もRiKu.の歌ってみた動画を観て、一緒にやりたいと思ったんです。Hiroから連絡を貰ったとき、僕はすでに曲を書いていたので、スタジオでいきなりその曲を合わせて、一緒にバンドをやろうということになりました。それが2016年12月です。

-RiKu.さんにとって、YujiさんとHiroさんの第一印象は?

RiKu.:とっつきやすかったです(笑)。Yujiが作った曲が、私自身が歌いたいと思っていたジャンルの曲だったんですよ。そのあと、徐々に打ち解けていくなかで、彼らなら信頼して、一緒にやっていけると思いました。

-歌いたいジャンルというのは?

RiKu.:アニソンっぽい?

Hiro:そうだね。ざっくり言うと、アニソンっぽい。キャッチーなヴォーカル・メロディと、トラック自体は僕らが演奏している楽器だけにこだわらず、ライヴでは同期で出しているんですけど、シンセサイザーとかピアノとかも入ってて。複雑な音色が売りのJ-POP、J-ROCKがベースにありつつ、ちょっとアニソンっぽいところもあるという感じですね。

-今、Hiroさんがおっしゃった音楽が、3人共通のやりたいことだったんでしょうか?

Hiro:いや、僕はもともと全然違ったんです。僕が最後に加わったんですけど、本当は自分のバンドを組むつもりでずっとメンバーを探してたんですよ。想像してたのは男性Voの重ための音楽がやりたくて――今で言ったらサバプロ(Survive Said The Prophet)とか、coldrainみたいな感じが理想だったんですけど、なかなか求めるメンバーに出会えなくて、そんなときあとギターだけ探してますっていう状態のAINSELに出会って、全然ジャンルは違ったんですけどYujiからRiku.のカバー・デモを聴かせてもらって、とにかく歌が上手いなって思ったところから一緒にやってみようと思ったんですよ。

-じゃあ、そのあとアニソンとか複雑な音色とか、やりたいことが徐々に見えてきたと?

Hiro:そうですね。集まった当初は、それぞれに好きな音楽はばらばらだったと思うんです。そのあとそれぞれの感性や、好きなジャンルをミックスしていった感じが今の、ひと言で表せないAINSELの楽曲になっていったんだと思います。

-好きな音楽はばらばらだったそうですが、おひとりずつどんな音楽が好きだったのか教えていただけますか?

Hiro:僕はもともと、洋楽をよく聴いていて激しいロック、ラウドが好きでした。その延長で、日本でバンドをやるなら男メンバーのラウド・バンドとか、そういう感じだろうと思ったんです。

-洋楽のハード・ロックというと?

Hiro:80年代から現代にかけて重ためで、ギターが派手なバンドは片っ端から聴いてましたね。EDMとかヒップホップなどバンド文化と異なる音楽も好きでしたけど。

-5弦ベースを使っているYujiさんも、ラウドロックを聴いてきたんじゃないかと思ったのですが。

Yuji:僕は日本の90年代のロック、例えばラルク(L'Arc~en~Ciel)とかGLAYとか。あと、"ファイナルファンタジー"の大半の楽曲を手掛けていらっしゃる植松伸夫さんをはじめ、ゲーム音楽も好きでした。そこからジブリ音楽のコンサートの映像をすごく観たりもしました。メロディがきれいで、壮大な音楽が好きなんですよ。観たり、聴いたりという意味では、今でもそういう音楽が好きです。

RiKu.:私はもともと、ヴィジュアル系のバンドや、VOCALOIDの歌ってみたをよく聴いていました。

-目標や、理想のヴォーカリストはいらっしゃるんですか?

RiKu.:正直、まだ模索中ではあるんですけど、男性ヴォーカルに負けない迫力と実力を持ったヴォーカリストになりたいとはずっと思っています。

-さて、活動開始からこの4年間、バンドとしてはどんなことを信条に活動してきたのでしょうか?

Hiro:ふたつあります。好きな音楽もばらばらで、それぞれに持ち味を持っている3人なので、楽曲の多彩さを追求するということがひとつ。結成当初は、ほぼほぼYujiが曲を作っていたんですけど、楽曲の幅を広げたいという考えから、今回のアルバムにはRiKu.と僕が書いた曲も収録されているんです。もうひとつは、やっぱりライヴですね。ライヴの熱量は、とにかく意識してやってきました。コンスタントにツアーを回ることも含め、いろいろなシチュエーションでライヴをしながら、自分たちの良さを生で観てもらうことを常に意識してきましたね。

-昨年以来コロナ禍の影響で以前ほどライヴはできなくなったとは思うのですが、その時間を使って、精力的に楽曲制作に取り組めたところもあるのでは?

Hiro:そうですね。今回、リリースするアルバムは去年の夏にリリースする予定で、そのあとのリリース・ツアーも組んでいたんですけど、全公演中止になってしまったんですよ。それはそれでショックでしたけど、すぐに気持ちを切り替えて、時間はいっぱいあるんだからと楽曲を見つめ直したり、曲作りの勉強をさらにしたり、本来だったらできなかったステップアップができたと思います。

-では、『LIBERATION』もこれまで以上に自信作になった、と?

RiKu.:Hiroが言ったとおり、今まで出してきた音源に比べて、いろいろなこだわりに対して、多くの時間を費やせた作品になったので、本当に胸を張って自信作と言えますね。個人的にも初めて自分が作った曲が入っているので、それをとにかく聴いてほしいです(笑)。

Yuji:1stアルバム(2018年リリースの『WILL』)のときは、アルバムを作って、とにかくツアーを回ろうということで、自分たちで期限を決めて、それに向かってかなりのスピード感で作ったので、もちろん納得はしているんですけど、もうちょっと突き詰められたんじゃないかという反省点が残ったんです。でも、今回は、さっきHiroが言ったように時間をかけて、一度作ったものを壊して、また作り直すみたいなこともできたので、全曲メンバーから見ても妥協のない7曲が詰まったアルバムになったと思います。

Hiro:それぞれが作曲した曲がまんべんなく入っているので、曲ごとに表情が違うんですよ。その部分でも、かなり聴き応えは増えたと思います。あと、レコーディングも今までは、録りは広島でやって、ミックスとマスタリングは大阪のスタジオに任せていたんですけど、回数を重ねてやりとりしてきたこともあって、今回"歌を録らせてほしい"とその大阪のスタジオから提案してもらえて。時間もあったので、大阪に行って、ヴォーカル録りをディレクションしてもらいながらやったんです。これまでわからなかったこともレクチャーしてもらいながら、じっくり時間をかけて制作できたので、最初にミックスした音源を貰ったときは、これまで感じていたものを遥かに超える手応えがありました。

-ヴォーカル・レコーディングはいかがでしたか?

RiKu.:スタジオの環境が全然違ったんですよ。歌いながら、エンジニアさんが見ているモニターを私も見ることができて、声の強弱とかを視覚的に意識しながら録れたので、すごく効率的でもあったし。エンジニアさんから、"こういう歌い方も試してみたら"とアドバイスしてもらいつつできたので、いろいろなことに挑戦したことも含め、納得できる歌録りができたと思います。

-リリースを延期したのち、曲を見つめ直したことでがらっと変わった曲とか、新たに増えた曲とかはあるんでしょうか?

Hiro:うちの作曲スタイルとして、原案はそれぞれに持ってくるんですけど、アレンジの段階で僕が手を加えることが多いんです。特に3曲目の「リフレイン」は、メロディとコードはYujiが持ってきたんですけど、リズム・アレンジとか構成とかは僕がかなり口を出しました(笑)。貰ったデータを打ち変えて、"こういうテイスト、どう?"って最初Yujiが想像していたものとは全然違う形で投げてみたら、"意外にいいじゃん"ってなって、デモ段階からかなり化けましたね。ぶっちゃけ僕は自分で作った曲よりも好きです(笑)。

-たしかに「リフレイン」は、リズムを刻んでいるギターとベースが絶妙に跳ねているところが、他の曲にはない魅力になっていて、特に印象的でした。

Hiro:これまでうちらの曲ってBPMが190ぐらいのアップテンポの曲が多かったんですけど、「リフレイン」は130ぐらいで、ちょっと跳ねているんです。そういう曲があってもいいなと思ってたところに、いろいろ挑戦できそうなデモをYujiがくれて。僕がもともと好きだったラウドロックのキレの良さ、どっしりした感じと、Yujiならではと言えるきれいなメロディと壮大さを融合した曲が上手く作れたというか、バンドとして作曲できたという手応えを感じられる1曲になったので、個人的には思い入れがあります。

Yuji:夜中まで作業したことを思い出しますね。一番時間をかけた曲なんですよ。もともとドラマチックなJ-POPのつもりで提案した曲がラウドロックになったという(笑)。僕自身としてもとても納得のできる仕上がりになったと思います。