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INTERVIEW

WARGASM

2023.03.08UPDATE

2023年03月号掲載

WARGASM

Member:Milkie Way(Vo/Ba) Sam Matlock(Vo/Gt)

Interviewer:菅谷 透

UKロンドン発の2人組、WARGASMがcoldrain主催フェス"BLARE FEST.2023"出演のため初来日を果たした。スラッシーなメタル・サウンドから強烈なエレクトロニクスまで変幻自在のトラックと、パワフルでキャッチーな男女ツイン・ヴォーカルが生み出すサウンドはシーンで話題を集めており、KORNのJonathan Davisがフェイヴァリットに挙げたことを始めとし、LIMP BIZKITやYUNGBLUDとのライヴ、"Reading and Leeds Festival"や"Download Pilot"といった大型フェスへの出演と、年々そのファン・ベースを急速に拡大し続けている。激ロックでは、そんな破竹の勢いを見せるふたりへ"BLARE FEST."当日にインタビューを実施。バンドの成り立ちから日本初ライヴの感想、さらに現時点の最新作『Explicit: The Mixxxtape』についてまで様々な話を訊いた。


"Angry Songs For Sad People"というのは俺たちのサウンドでもあるし、今の俺たちが生きている状態でもあるんだ


-まずバンドの成り立ちからうかがえればと思います。おふたりはいつごろ、どのようにして出会ったのでしょうか?

Milkie:WARGASMは厳密には2019年に始まったんだ。その1年くらい前からプロジェクトとしては存在していたけどね。Samと私はカムデンでやっていたギグで出会った。そのころSamがやっていたバンドは終わりに近づいていた感じで......と言えば聞こえがいいけど(笑)。私はそのころモデルをやっていたんだけど、セッション・ベーシストもやっていたんだ。

Sam:話がヘタだな(笑)。俺が代わるよ。

Milkie:ええ、どうぞ。

Sam:俺はロンドンでパンク・バンドをやっていたんだ。MilkieはGIRL IN THE PITという名義でフォトグラファーをやっていた。面白い話があって、俺がやっていたパンク・バンドのマネージャーが、GIRL IN THE PITをショーに呼ぼうと言い出してさ。俺は"GIRL IN THE PIT? いったいなんなんだ?"みたいな感じだった。そうしたらマネージャーは"小柄なブロンドの女の子が使い捨てカメラを持って、ファッキンなモッシュ・ピットのど真ん中にいるっていうヘンな話でさ。すごくクールなんだ"って。で、君(Milkie)を呼ぶことにした。そうしたら君の当時のボーイフレンドが俺のバンドを気に入ってくれたけど、俺たちは出会わなかった。だから俺は彼女の存在を知っていたし彼女も俺の存在を知っていたけど、ただそれだけの話だったんだ。その後俺のバンドは解散してさ。音楽をまたやっていく唯一の方法として、もうファッキンな男たちとバンドをやるのはイヤだと思ったんだよね。男って最低だから。それで俺たちは少し喋るようになった。Milkieがモデルの仕事で東京に行っていたころ、俺はすごく落ち込んで飲んだくれて、アコースティック・ギターでクソみたいな曲をいくつか書いて、君にビデオを送ったよね。

Milkie:トイレから。

Sam:トイレの便座に座ってそこから送ったんだ。

Milkie:でも、そこの音響が最高だったんだよね!

Sam:そう! 音が良かったんだ。俺はベロベロに酔っぱらった状態で、"曲をいくつか書いたよ! 君、楽器やるんだよね? やる気ある?"と言ったら"うーん、曲は最低だけど、(帰ったら)会おうよ"って。それでMilkieが日本から戻ってきて、お土産に素敵なパッケージのタバコを買ってきてくれた。

Milkie:フィルターのないやつね。

Sam:そう、クソマズかったけど、あれは嬉しかったな。それからMilkieはロンドンのカムデンにあるフラット(アパート)でよくパーティーをやっていたから俺も行っていたんだけど、だんだん早く行くようになったんだ。"俺が書いたこの曲どう?"なんて言ってね。時には彼女から"そこはちょっと変えようよ"なんて言われることもあった。しばらくすると今度はレコーディング機材を持ってそこに行くようになって、パーティーが始まる前の日中に一緒に曲を書いていた。最終的には"もう君の家にはわざわざ行かない。俺の家にレコーディング機材が揃っているからうちにおいでよ"と言った。それがWARGASMの始まりだった。それで決まりだったんだ。初めは"SADGASM"という名前でポップ・パンクだった。最低だったけどね、ポップ・パンクなんてひどいもんだから。

Milkie:で、私が"この名前は変えるべきだよ"って言ってやったんだ。

Sam:それで、L7の曲名からとってWARGASMにした。初めはN.E.R.Dのカバーから始めたんだ。それがWARGASMの青写真みたいな感じだったな。......俺たちの出会いを美化するとそんな感じだよ。

-WARGASMのサウンドはメタルからエレクトロまで実に幅広いジャンルが取り入れられていますが、それぞれの音楽的なバックグラウンドを教えていただけますか?

Milkie:今あなたが言ったのが、私たちがこのプロジェクトを立ち上げた当時聴いていたタイプの音楽だったんだ。LIMP BIZKITをよく聴いていたし、私は昔からDAFT PUNKとかエレクトロニックものが好きだった。それが曲の書き方にも染み込んでいると思う。

Sam:俺はサウンドトラックや映画のスコアを聴くのが好きだな。どちらも言うまでもなくとてもドラマチックでとても情熱的だよね。もし俺たちがラッキーだったら......きっとありえないと思うけど、俺たちのレコーディング・セッションのファイルを(映画に)使ってほしいね。俺たちの曲には何層にもエレクトロニックな音、シンセサイザーが使われているけど、それだけ単体でよく聴いてみるとあまり音数がないことが多いんだ。たくさんのノイズやインパクト、テンション、緩急がある。それはサウンドトラックの影響によるものが大きいと思う。映画音楽はそういうコンポーザーが手掛けてきたことが多いからね。コンポーザー、DJ......。

Milkie:DJグループじゃない? たぶん。音を層に積み重ねて独特の雰囲気を作っているから。ノイズが音楽的にどんな役割をしているか考えるんじゃなくてね。

Sam:いいバンドはみんなテンションが命だよね。SLIPKNOTもそうだし。上がったり、下がったり、リリース、リリース、リリースで。ウェアハウス(倉庫)で行われているようなDJパーティーに行くと、テンションがどんどんビルド、ビルド、ビルドで積み上がっていく感じなんだ。テンションがドロップするとしても午前5時くらいになってやっとそうなる感じだね。3時に帰ったらドロップを逃してしまう。起こるかな? と思ってもファッキンなくらい起こらない。いつもそんな感じ。

Milkie:だから私たちのサウンドもいつも上昇方向なんだ。Samがいつもそうしているから。

Sam:レコードのサウンドは"メンタル"だからね(笑)。俺が説明するのもなんだから、頼むよ。

-サウンドを作り上げるにあたり、影響を受けたアーティストはいますか?

Milkie:私はLADY GAGAが大好き。彼女は私がやっていることのすべてに影響を与えている。曲を書くときのインスピレーションにもなっていて、彼女みたいないい曲を書きたい! と思ってやってるの。まだ実現していないけど、いつかは辿り着くかもしれないね(笑)!

Sam:Courtney Love(HOLE)、Kurt Cobain(NIRVANA/Vo/Gt)、Dave Mustaine(MEGADETH/Vo/Gt)、Nellee Hooper。

Milkie:そうだね。私はPRINCEも大好き。

Sam:そうだ! PRINCEはファッキンなくらい大好きだよ。あと、彼女はGUNS N' ROSES(の作品)をいっぱい持っているんだよね。GUNS N' FUCKIN' ROSES。Axl Roseは最高だよ。Axl Roseは俺にとって、ファッキンなフロントマンとはこうあるべきというベンチマークみたいな人なんだ。あるいはLAMB OF GODのRandy Blythe(Vo)。Randy BlytheとAxl Roseの間に位置するようなやつになりたいね。

Milkie:あなたもステージでボクサー・パンツを穿くのが好きだもんね。私はWendy O. Williams(PLASMATICS)。ステージ・ギアは彼女のものをベースにして作っているんだ。ステージ上でビキニを着ている人ってみんなカッコよく見えるからね。

Sam:好きなものを挙げれば永遠に語っていられるよ。俺たちはクソたくさん好きなものがあるからね。なんでも大好きだよ。まぁ全部じゃないけどさ。

Milkie:初めてSpotifyをやったとき、曲数に制限があってね。1万曲までだったかな? すぐに上限に達してしまったんだよね。私たち聴く量が多いから。それから、私はフィジカルで音楽を聴くのも好きだね。ヴァイナルやCDやテープが大好き。ふたりともそういうのをたくさん聴くから、そこからたくさん影響を受けているよ。

Sam:今の質問の答えはそのくらいにしておいたほうが(笑)。

Milkie:"音楽的な影響"の答えね。ここで終わりにしておこうか(笑)。

Sam:あっ、最後に......誰だって音楽的な影響はたくさん受けているけど、"静寂"って結構いいインスピレーションになるんだよ。人から与えてもらってばかりでインスピレーションを受けてばかりだと、ときどき"黙りやがれ"って気持ちになって、何も聴きたくなくなるんだ。自分とサウンドが似ているものを聴いても、それがちゃんと自分の中に落ち着くまで待たなかったら意味がない。"静寂"っていうのはいいよ。俺は制作活動をしているときはあまり音楽を聴かないんだ。例えば何時間か飛行機で移動するときに、ただ座って考えるだけの時間を取るのは大事なことだよ。時にはいきなり頭の中にメロディが流れてきたり、耳にした音が文章になったりすることがある。フレーズが頭の中に浮かんでね。"静寂"はいいインスピレーションになる。

-WARGASMの音楽性は"Angry Songs For Sad People"という言葉で評されていますが、こうしたスタイルはどのようにして生まれたのでしょうか?

Milkie:私たちふたりともAngryでSadだから(笑)。

Sam:"Angry Songs For Sad People"というのは、俺たち世代のマントラ(真言)みたいなものなんだよね。世界はファッキンな状態で一向に良くなる気配がないし、Sadでいることは楽しくない。Sadというのはエネルギーじゃなくて状態だけど、Angerはファッキンなエネルギーなんだ。つまり、俺たちが作っているのは俺たちを取り巻く環境の産物であって、"Angry Songs For Sad People"というのは俺たち世代の多くが今思っていることを体現したものなんだ。とことん頑張って達観する人もいるけど、今は生きづらい時代だし、あらゆることに終始不安を抱かなくて済む時代でもないからね(苦笑)。だから"Angry Songs For Sad People"というのは俺たちのサウンドでもあるし、今の俺たちが生きている状態でもあるんだ。人類のタイムラインのこの時点に俺たちが生きているっていうね。

-ファッション面のことも教えてください。クールでセクシーなファッションもWARGASMを特徴づけていますが、こうしたファッションを取り入れていくようになったきっかけはありますか?

Milkie:もともと私はファッション・スタイリングとプロダクションを勉強するためにロンドンに出てきたんだ。でもあまり長続きしなかった。権威のある人たちには私の頭じゃついていけないから。で、ドロップ・アウトした30分後には、日本で3ヶ月暮らすことになっていた。だからドロップ・アウトして本当に良かったわ。LADY GAGAはさっきも言ったけど、私のやることすべてに影響を与えている人だから、もちろんファッションも影響を受けているんだ。子供のころからファッションは大好きだったし、自分の着るものを他人がなんと思おうとファッキンなくらい気にしていなかった。というのも、私は北アイルランドのすごく小さな町で育ったんだよね。地元の人たちは私の服装を気に入っていなかった。ママも私の服装を気に入っていなかった。最終的には黙認してくれるようになったけどね。16歳のときに乳首を出して歩いていたら"そんなことをしてはいけません"って言われたけど(笑)、今はやり過ごしてくれる。基本的には私の服装を支持してくれているから。ティーンエイジャーのときに自分のスタイルを模索する余地を与えてくれる、そういう親がいるのって大事だと思うんだ。

Sam:俺たちのファッション・スタイルは別モノなんだ。だからこっちが"WAR"でそっちが"GASM"なんだ。Milkie、君はオシャレするのも好きだし、セクシーでいるのも好きだよね?

Milkie:私はオシャレするのもセクシーでいるのも好き。

Sam:俺のはもっとメタル・シーンのコミュニティに近いね。ヒエラルキーみたいなものがあって、その中にはルールがあるんだ。"ステージでは迷彩柄の短パンを穿くべし"みたいな。MEGADETHがスニーカーを集めているとしたら自分もスニーカーを履かないといけない。しかもハイカットのやつをね。コンバット・ブーツは履かない。それはパンクだから。ファッキンなOBITUARYのTシャツを着るならオリジナルのやつ、しかも古いやつを着ないといけない。でないとポーザー扱いされるんだ。俺はそういうヒエラルキーのルールの中にいるのが好きだよ。と言っても、誤解されたら困るけどね、俺だってリー・バウリーみたいなのは大好きだから。時にはアンチ・ファッションがファッションになることもあるんだ......と、自分の服装に言い訳をつけているんだけどね。

Milkie:(笑)あなたの服装はいいと思うわ。

Sam:安物の毛皮のコートを着たりしてね。俺たちは安物の毛皮のコートが好きなんだ。

-東京のファッションがお好きだとか。

Milkie:もちろん! 原宿は最高だよね。

Sam:あのカルチャーの発信地みたいなところだよね?

Milkie:そう。大学に行っていたときに学内に素晴らしい図書館があって、まる1冊原宿ファッションを取り上げた本があったんだ。80年代終わりから90年代初めくらいにかけての原宿。見ているだけでも素晴らしいと思ったわ。とてもインスピレーションになったしね。