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INTERVIEW

PIERCE THE VEIL

2023.03.09UPDATE

PIERCE THE VEIL

Member:Jaime Preciado(Ba)

Interviewer:山本 真由 Translator:原口 美穂

現代のロック・アルバムのように洗練されているわけでもなく、 ちょっとノイジーで――嬉しい偶然みたいな感じ(笑)


-「Pass The Nirvana」というタイトルの楽曲もあり、音楽的な方向性としても90年代のグランジやオルタナティヴ・ロックのエッセンスが感じられます。90年代を意識した経緯や、アルバムに取り入れようと思った理由を教えてください。

たしかにこのアルバムには、前作やそれ以前のアルバムではやらなかったような新しいことがたくさん入っている。それは、レコーディングの方法なんかがこれまでの伝統的なやり方と違っていたからだと思う。さっきニューオーリンズの家の話をしたけど、今回はアルバム全体を一軒家でレコーディングした。そしてそれは、僕らにとって初めての試みだったんだ。それがもう、めちゃくちゃ新鮮でさ。キッチンでマイクを使ったり、リビングでギターを弾いたり、今までとは違う経験をしたことで、サウンドも変わっていった。アルバム全体のミックスも新しい人が担当したし、それでさらに明らかにこれまでとは違うサウンドになったんだ。そんな感じでいろいろなことが積み重なって、そういうサウンドが生まれたんだよ。でもそれは、意識的というよりは自然にそうなった。特に今回のアルバムでは、自分たちがどんな音を作り出すかということよりも、自分たちが"今"演奏している音によりフォーカスを置いたからね。前のアルバムはその逆だったと思う。あるものの音色や聴こえ方のほうを気にして、演奏のことはあまり考えてなかったから。でも今回は、とにかくそのときに起こっている"瞬間"を捉えることで、クールなサウンドを作り出すことを意識したんだ。すごくいいアイディアだったと思う。あと、これはPaulがやっていたことなんだけど、彼は本当に優秀だった。Paulは常に録音していたんだ。例えば、僕らがキッチンであるパートについて話をしていたら、彼はその会話にマイクを向けて録音するんだよ。僕がギターで何か弾いていても、"これはクールなエフェクトになる"なんて言いながらそれを録音してた。そしてその録音したものに、いろいろなものをつけ加えていくんだ。それを何百回も繰り返すと、あるとき突然、すごくいい新しいサウンドが生まれたりする。そうすることで、現代のロック・アルバムのように洗練されているわけでもなく、ちょっとノイジーで、90年代のグランジっぽい要素が生まれたのもあるんじゃないかな。嬉しい偶然みたいな感じ(笑)。

-そのPaulのInstagramアカウントには彼がドラムを叩く姿もアップされていましたが、今話したこと以外に、彼はこのアルバムにどのように貢献してくれましたか? また、彼はPIERCE THE VEILにとってどのような存在ですか?

彼の一番の貢献は、僕らを本当にクリエイティヴな方法で後押ししてくれて、過去にやったことがない新しいことに挑戦させたことだと思う。今回のアルバムは5枚目のアルバムで、僕らはこれまで多くのプロデューサーと仕事をし、いろいろなスタジオ・セッションをやってきた。それに僕は自宅にスタジオを持っているから、レコーディングとはこういうもの、みたいな決まったやり方のようなものが染みついているんだよ。"こうやればいいんだ"みたいなね。でもPaulは"ちょっと気分を変えてみようか。別の部屋に行ってみよう"なんて言うんだ。新鮮さを保つためにね。あれはすごくクールだった。異なる視点から自分たちを見ることができたし、僕らはずっとそういう人と一緒に仕事がしたいと思っていたんだ。

-激しさの中にどこか儚さのあるグランジのテイストは、現在の抑圧された雰囲気にも通じるところがあり、若いリスナーにとってはむしろ新鮮に聴こえるかもしれません。新曲に対してはどのようなリアクションがありましたか?

"これまでとは違う。でもそれが好きだ"っていう声をたくさん聞いてるよ。そしてそれこそが、僕たちが目指していたものなんだ。今回のアルバムでは、自分たちの幅を少し広げたかったし、そのためには何ができるかを確認したかった。だいたいアルバム・リリースから1年経てば、自分たちの好きなところ、好きじゃないところを冷静に振り返って、調整することができるようになる。僕たちはいつもそうやって、より良いものを作ろうとしているんだ。これはたくさんのアルバムを作ってきたなかで僕たちが学んできたこと。だから、前に作ったアルバムを振り返って"僕たちはいったい何を考えていたんだろう?"と思うことは絶対にない。だから今回のアルバムにもすごく興奮しているんだ。ファンも喜んでくれているみたいで嬉しいよ。

-新曲はすでにライヴでも披露されているのでしょうか?

してるしてる。去年の9月にツアーを始めたんだけど、そのときに「Emergency Contact」と「Pass the Nirvana」をライヴで演奏したんだ。これまでとは違った感じだから、特に「Pass The Nirvana」を演奏するのは超楽しかった。

-今作はドラマーのMike Fuentesが離脱して初めてのアルバムになりますが、レコーディングや楽曲制作については何か変化がありましたか?

彼はバンドの大きな一員だった。でも、彼は公に出る存在にはなりたくなかったんだよね。僕らはそんな彼の意思を尊重したんだ。それで、彼は彼がやりたいことを、僕らは僕らがこれまで続けてきたことをそのまま続けよう、ということになった。彼が抜けてからも、あまり大きな変化はなかったと思う。今回のレコーディングは自分たちにとって新しい経験だったけど、それは彼の離脱には関係ないしね。

-THIRD EYE BLINDのBrad Hargreavesがドラマーとしてクレジットに記載されていますが、彼が基本的にはドラム・パートを担当しているのでしょうか。

そうそう。僕らは彼の大ファンなんだ。だから彼が参加してくれるのは、すごくエキサイティングな機会だった。同じ部屋で、彼がドラムを叩く姿を観ているのは本当に楽しかったよ。彼はすごく象徴的なドラマーだから。Bradはニューオーリンズに3、4日くらいステイして、アルバム全体のドラムをレコーディングしてくれたんだ。

-「Emergency Contact」は、Mike Herrera(MXPX/Vo/Ba)のホーム・スタジオで制作されたようですが、そのようになった経緯とは? また作曲にも彼は関わっているのですか?

Vicはシアトルでその曲のほとんどの歌詞を書いたんだけど、彼は歌詞を書くときにいろいろな場所へ旅をして、その場所からインスピレーションを得ることが好きなんだ。サンディエゴは素敵な場所だけど、ずーっと晴れていて天候にさえ変化がない。だから同じことの繰り返しになってしまうんだよね。そこで、Vicは彼の友人を通してMikeと繋がり、Mikeに"シアトルで作業させてもらえないか"と頼んだんだ。で、Vicはシアトルに行って刺激を受け、2、3個くらいアイディアを思いついた。シアトルって、グランジについて語るにはとてもいい場所で、Vicはそこにインスパイアされたらしい。そんな感じで、場所を変えると気分転換ができるんだよね。シアトルはサンディエゴと違って日照時間も短いし。Mikeは作曲には関わっていないよ。スペースを貸してくれただけ。

-そうだったんですね。ちなみに「12 Fractures」では、シンガー・ソングライターでYouTuberのChloe Moriondoがゲスト参加していますね。ローファイ・ポップな他にない魅力がある楽曲ですが、これは作曲段階から彼女の参加を意識して作ったものなのでしょうか? また、どのような経緯でこのコラボレーションは実現したのでしょうか。

彼女とはSNSを通じて連絡を取ったんだ。僕らは彼女の作品のファンなんだけど、「12 Fractures」を作ったとき、2番目のヴァースに何か入れたいって思ったんだよね。それで、"もし女性のヴォーカルがあの部分に入ったら、ダイナミックになっていいんじゃないか"と思ってたら、Vicが彼女を勧めてきたんだ。彼女は本当にクールで、素晴らしい活動をしている。だから、彼女に興味がないか聞いてみることにしたんだよ。それで、よく覚えてないけど、DMか何かで、もしくは彼女のマネージャーと連絡を取ったんだと思う。そしたら彼女がOKしてくれたから、彼女に曲を送った。その数日後に彼女のヴォーカルが送られてきたんだけど、それを聴いたときになんと涙が出たんだ。もう信じられなくて。彼女は本当に素晴らしい仕事をしてくれたと思う。あの曲がまさかあんないい曲になるなんて、自分でもまったく予想できなかった。彼女の声が加わったことで、まったく違う曲に姿を変えたんだ。あの曲を新しいレベルにまで引き上げてくれた彼女には本当に感謝してるよ。

-今後コラボレートしてみたいアーティストや、挑戦してみたいことなどあれば教えてください。

うーん、選ぶのが難しいな。僕たちは常に新しいものを探しているけど、Chloe Moriondoもそうだし、CAROLESDAUGHTERもそうだし、若くて素晴らしいバンドや新しいアーティストがたくさん出てきているからね。新しいスタイルの音楽、まだ自分たちが聴いたことのない音楽は、僕らにとっても刺激的なんだ。様々なアーティストが様々なスタイルの音楽を、しかも自分たちのベッドーム作っているなんて、本当にすごい。誰もが自分の部屋にスタジオを持っていて、どこでも音楽を作ることができるわけだからね。キッチンでもいいし、音楽を作りたいなら場所はどこだっていい。でもそうなってくると、競争の場が増えて、人々は群を抜いてクリエイティヴにならなければいけなくなってくる。それもまた素晴らしいことだと僕は思うね。

-リリース後はツアー("The Jaws Of Life Tour")が行われるようですが、日本を含むアジア・ツアーは予定されていますか?

日本にも行けたらいいな。今はツアーの日程を組んでいるところで、ヨーロッパとUK、南米やメキシコの公演を発表したところ。これからまた徐々に、さらに決定していくはずだよ。

-最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。

日本のみんな、元気にしてるかな? みんなに会えなくてすごく寂しいし、また会うのが待ちきれない。前回訪日したときの、ファンのみんなの熱狂ぶりは今でも忘れられないんだ。また日本に戻って、新曲を演奏して、みんなと一緒にこのニュー・アルバムを楽しむ日が来るのを楽しみにしてる。本当にありがとう。