INTERVIEW
GODSMACK
2023.03.17UPDATE
2023年03月号掲載
Member:Shannon Larkin(Dr)
Interviewer:菅谷 透 Translator:川原 真理子
これまで3作のアルバムがビルボードNo.1を記録し、数々のヒット・シングルをチャートに送り込んできた、USマサチューセッツ出身のハード・ロック・バンド GODSMACKが、8枚目となるスタジオ・アルバム『Lighting Up The Sky』を発表した。バンドは本作をもってレコーディング・キャリアを終え、今後はライヴを中心に活動していくのだという。この重大な決断に至った背景や、輝かしいディスコグラフィを締めくくるアルバムとなった本作について、Shannon Larkinに話を訊いた。
仲のいい友達が恋愛のことで悩んだり失恋したりするのを見ているのはつらい。でもそこからヒット曲が生まれるんだ(笑)
-ニュー・アルバム『Lighting Up The Sky』の完成おめでとうございます。発売を今週末に控えていますが(※取材はリリース前に実施)、今の心境をお聞かせください。
素晴らしい気分だ。本当だよ。どのバンドもそう言うけど、本当にこれは俺たちの最高傑作だと思う。20年以上やってきたんだから、これは意義深い発言だけど、音楽が後押ししてくれる。これは、俺たちにとって最高のアルバムだよ。
-Sully Erna(Vo/Gt)によると、本作はバンドにとって最後のスタジオ・アルバムになるとのことですが、こちらは事実なのでしょうか? 事実であれば、その決断に至った理由を教えていただけますか?
このアルバムの曲作りを始める前に、彼が俺たちにアプローチしてきてそのアイディアを伝えたんだ。なぜこれが正しいと思えたかに対する理由は、人それぞれだよ。バンドとしてだけじゃなくて、人としてね。まず俺は、20年以上にもわたってこの4人で音楽をやってきてこの世界で成功したということは、名誉なことだと思っている。この20年間は、バンドが何よりも先に優先されてきた。家族、友達、ペットといった愛するものたちよりもバンドが優先されてきたんだ。それは自分が歯車の一部で、この世界にいたからだよ。アルバムを出してはツアーをするという生活を20年間行ってきて、ラッキーなことに俺たちはここアメリカで大成功を収めた。ラジオが俺たちをいたく気に入ってくれたから、そのおかげでたくさんのヒット曲が生まれたんだ。今だって、すべてのヒット曲をプレイできないほどヒット曲が多いから、ライヴが終わるたびにファンから"どうしてあの曲をやらなかったんだ!?"って言われるよ(笑)。申し訳ないけど、時間には限りがあるんだ。
理由は他にもあって、年齢も重要な問題だね。俺たちは若者がやるような、とてもアグレッシヴで生き生きとしたリアルなハード・ロック/メタル/パンクをやっている。初期のMETALLICAを観に行ってモッシュしていたんだ。20年の間にメタル色は薄れたかもしれないけど、それでもハイエナジーでアグレッシヴなハード・ロックであることに変わりはない。そんな俺たちも50代半ばだ。まだ元気だし、見栄えもいいし、ちゃんと音も出して、GODSMACKという俺たちのブランドを代表してやるだけの力は残っている。でも、約4年ごとにアルバムを出している俺たちが、俺がほぼ60歳になる4年後にアルバムを出せるのか? というわけで、俺たちはそもそも大好きだったものに戻ることにしたんだ。つまり、ライヴ・バンドになるってことだよ。ラッキーなことに、これまで成功を収めてきた俺たちには、もはや売る商品を必要としないだけのパワーがある。このアルバムのサイクル・ツアーが終わったら、ファンも、俺たちも、コンサートで忙しくなる。俺たちは経済的に安定しているから、もはや商品も金も組織も関係ない。レコーディング・アーティストとしてやってきたけど、これからは俺たちが本当に大好きなコンサートを続けていきたいんだ。今回のアルバムからの「Surrender」がここアメリカでヒットしたから、たとえこれが唯一のヒット曲になるとしても、今回のサイクル・ツアーが終わってからも今後のキャリアで俺たちは素晴らしいセットを組むことができる。これまでの全アルバムからの瞬間があるセットを組むことができるんだ。各ツアーの最高の瞬間を入れたセットにして、やれるところまでずっとやっていけるんだよ。だからこれは、俺たちにとって最もポジティヴなことなんだ。子供のころからロック・スターに憧れて、自分たちのアイドルの真似をしていたけど、今や俺たちはためらわずに"ノスタルジア(懐かしの)・バンドになる"と言える立場になった。意地悪くそう言う連中もいるけど、俺たちはそれを甘んじて受け入れるよ。こういった曲がみんなにとって懐かしいのであればね。前回のツアーでだって、"中学生のときに1stアルバム(1998年リリースの『Godsmack』)を買ったんです"って言うファンもいた。その人たちも今や48歳になって、妻と3人の子供がいたりする。そんな彼らがGODSMACKを観に行けば、当然大いに懐かしいだろう。アルバムを作らないことが懐かしのバンドになることなのだとしたら、そう呼ばれたっていいさ。
俺たちはレコーディング・キャリアを積んできたけど、今後はバンドを最優先事項にせずにやっていきたいんだ。人として自分たちのことに専念したいんだよ。俺たち4人には同じ夢があって、それは叶った。だからといって、別の目標がないわけじゃない。これまでに登って来た山はデカくて、これが俺たちのピークだと思っていた。おそらく俺は今後一生、GODSMACKのドラマーとして知られることになるだろう。でも、俺の値打ちはそれだけなのか? もっと奥深さがあるはずだ。もしかしたら本だって書けるかもしれないし、絵だって描けるかもしれない。みんなそれぞれに目標があるし、生きているうちに達成したいことがある。20年間バンドが最優先されてきた俺たちにとって、これは素晴らしいことなんだ。今回はでき得る限り最高のアルバムを作ったと思う。聴いてみると、俺たちの全キャリアを網羅していることがわかる。Sullyはまとまったストーリーを語っているよ。「Surrender」のような彼が体験した失恋の曲の合間に、彼はこのバンド内で彼の全人生を反映させている。「Best Of Times」は、長年の彼の狂気に忠実に従って来た俺たち(バンド・メンバー)に対する彼からの感謝の手紙なんだ。最後のタイトル曲「Lighting Up The Sky」では、彼はバンドと共に過ごした自分の人生を振り返って語っている。すべてが収まるべきところに収まったことを見つめているんだ。だから俺は、このアルバムは俺たちの全キャリアへのラヴ・レターのようなものだと思っているよ。
-本作を最後の作品にしようという考えは、制作当初からあったんですね。
そうだよ。俺たちはこれを軽々しい気持ちで受け止めはしなかったけど、本当の意味で実感したのはレコーディング・スタジオに行ったときだった。ここ数作をそこでやったんだけど、機材を俺たちが住んでいるフロリダに移したから、全員初めてレコーディングのあとに夜家に帰ることができたんだ。これまでの中で一番楽しく作れたアルバムであることは間違いない。最後であることがわかっていたから、ありとあらゆる瞬間を楽しんだんだ。いつもみたいに、ヒット・アルバムを作らないといけない、ひとりは気に入ってもうひとりは気に入らない、といったプレッシャーはまったくなかった。すべてオーガニック且つナチュラルな曲作りとレコーディングだったから、それが音楽に反映されていると思う。山の頂上にたどり着いて、音楽の世界で成功しようとした俺たちの気持ちがちゃんと捉えられていると思うね。
-本作ではSullyとの共同プロデュースとして、メジャー・デビュー・アルバム『Godsmack』から2ndアルバム『Awake』(2000年リリース)を手掛けたAndrew "Mudrock" Murdockが参加しています。彼を起用した経緯を教えていただけますか? また、彼との作業はいかがでしたか?
俺はすごく嬉しかった。この最初の2枚のドラムはSullyが叩いて、俺がバンドに入ったのは3枚目(2003年リリースの『Faceless』)からだった。それ以前はTommy Stewartがバンドにいたけど、アルバムのドラムはSullyが叩いたんだ。というわけで、俺はMurdockとは仕事をしたことがなかったんだよ。最初の2枚のアルバムは大成功して、合わせて700万枚くらい売れて、それを手掛けたのが彼だったんだ。彼にまつわる話はたくさん聞いていたし、彼とは一度だけ会ったことがあった。とってもクールなヤツで、Sullyは彼のことを完璧にリスペクトしているんで、このアイディアが持ち上がったとき、俺は超エキサイトしたね。MudrockことAndrew Murdockと仕事ができると思ったからだ。それだけじゃなくて、さっきも言ったように、Sullyが意識的にこれまでの全アルバムのエナジーを注ぎ込もうとしていて、どれも4年ほど間隔が空いていたから、スタイル的にもプロダクション的にもそれぞれかなり違っていた。同じ4人だから、同じバンドのようには聞こえるよ。彼の声も特徴的だしね。でも『Faceless』から『IV』(2006年リリースの4thアルバム)と聴いてみると、この2枚はまったく異なるアルバムで、メタル・アルバムからもっとクラシック・ロック風のアルバムになった。そこにMudrockが入ってきたことで、彼と彼を尊敬するSullyは共に協力し合って作業することができたんだ。修羅場もなく、摩擦もなく、すべてがどんなに楽だったかどれだけ主張してもし足りないほどさ。Andrew Murdockがコンソールのところにいて、決定的な意見を言える人がいると、どれだけ作業が早く進むことか。彼と、彼をリスペクトしているメイン・ソングライターのSully Ernaの言うことに俺たちは耳を傾けるんだ。ほとんどのプロデューサーは偉そうにしているから、そこには必ず摩擦や修羅場が生まれるけど、Andrewとはそういったことが一切なかったんで素晴らしかったよ。
-歌詞の面では、Sullyが彼の全人生について語っていると先ほどおっしゃいましたが、パンデミックの最中に書かれたということで、パンデミックが歌詞になんらかの影響を与えたということはありましたか?
それはあったね。アルバムの間隔が4年だとさっき言ったけど、これまた天才 Sully Ernaが計画したことだった。"1年かけてアルバムの曲作りとレコーディングを行う"と彼は言ったけど、これはたっぷりな時間だ。それから2年かけて俺たちの大好きなライヴ・バンドになってツアーに出かける。それから、ほとんどのバンドは経済的理由から1年間休養することなんてできないけど、ラッキーなことに俺たちにはそれができる。その間は家に帰って、自分を見つめ直すことができるんだ。それまで4人はずっと一緒だったわけだから、俺たちはまるで家族のようなんだよ。そんな俺たちが1年間離れることによって、ニュー・アルバム用のリフを個々に作ることができただけでなく、また4人で集まりたいと思うことができたんだ。そのおかげで、ニュー・アルバムを作るためにまた集まったときに、エキサイトして新鮮な気持ちで臨めたよ。前作『When Legends Rise』(2018年リリース)のときは、あのアルバムから4つの全米1位のヒット曲が生まれたんだけど、普通そんなことは起こらない。2曲だってなくて、各アルバムに1曲でもあればラッキーなほうだ。というわけで、2年近くのツアーを終えてヨーロッパから戻って来たのは2019年の秋だったけど、そこでも全米1位になった曲があった。ということはつまり、またツアーに出る機会ができたってことなんだ。俺たちはそれで金を稼いでいるんだから、シングルがまたヒットしてツアーに出られたんだよ。そこで、2020年の秋までツアーをブッキングしたんだ。METALLICAのオープニングといったクールなものもあったし、アルバムも順調だった。なのに、世界はあんなことになってしまった。パンデミックになってしまったから、ツアーの代わりにアルバムを作ることにしたんだ。どのみち1年間の休養の時期になっていたから、2020年はその休養の1年になったんだよ。ただほとんどの人がそう思っていたように、2021年にはすべてがもとに戻ると俺たちも思っていた。ところがそうはならなかったんだ。4年経ってもアルバムを出すことができなかったから、1年見送られることになったよ。そうして2021年に曲作りを始めたけど、その間もパンデミックは続いていた。そうしてアルバムがリリースできないままに2022年を迎えた。そのころには、15、6曲以上できていたかな。俺たちは休養することにしたんだ。音楽ビジネスがシャットダウンしてしまったからだよ。どんなことにもタイミングってものがあって、俺たちはアルバムを作らないといけなかったけど、そんなときSullyが"これを最後のアルバムにしよう"というアイディアを持ちかけたんだ。それで2022年に10~11曲作って、それから3~4ヶ月間休養した。何も変わらなくて、リリース日もまだ決められなかったから。2022年の暮れになると、書いた曲を持ってSullyが戻ってきた。それがすごく良かったから、結局その大半がニュー・アルバムに収録されたんだ。つまり、次のアルバムに収録されていたであろう曲の大半を俺たちはボツにしたんだよ。というわけで俺からすると、パンデミックは変な形で俺たちに手を貸してくれたんだ。すべての歌詞を書くメイン・ソングライターのSullyに手を貸したことは間違いない。それと、あと彼の個人的な失恋がものを言って、「Surrender」や「Truth」といった曲が生まれたんだ。これらは個人的な曲で実話だから、インパクトが強いんだよ。あれはでっち上げられないからね。だから最終的には世界の状況はかなり違っていて、それでこういうアルバムになったんだけど、大きな要因は間違いなくパンデミックだったね。
-「You And I」はドゥーミーなサウンドで厳かに開幕を告げるナンバーです。この曲の歌詞についてや、制作のバックグラウンドを詳しくうかがえますか?
音楽的には、あのビッグなリフだ。俺たちの曲は、ビッグなリフから始まるものがある。あのギターがあって、俺が入って、Robbie(Merrill/Ba)が入ってくる。俺たちはジャム・バンドだから、ビッグなリフでみんながプレイを始めるんだ。そうすると、それがイントロなのか、サビなのか、ヴァースなのか、中間部なのか、といったことがわかってくるから、それが決まると次のパートを始める。この「You And I」は1日でできたんだ。ゴキゲンにすごく早くできたやつなんだよ。今回Sullyは、俺がこのバンドに入ってからの20年間の俺たちのいろんなスタイルを注ぎ込みたかったんだけど、この曲は『IV』のころだね。ビッグで威勢が良くてドゥーミーでヘヴィでダークなサウンドの曲だよ。歌詞はSullyが体験した個人的なことについてなんだ。ネガティヴな曲では決してないけど、彼がしばらくの間結んでいた恋愛関係から生まれたんだよ。俺は1987年からSullyを知っているから、仲のいい友達が恋愛のことで悩んだり失恋したりするのを見ているのはつらい。だからそういうことが起こるたびにTony(Rombola/Gt)とRobbieと俺はつらい思いをするけど、でもそこからヒット曲が生まれるんだ(笑)! 歌詞や曲を書くことは、自分の中からネガティヴなものを吐き出すためのカタルシスになるんだな。スクリームする者もいれば、精神科医のところに行って話をする者もいるけど、俺たちみたいな人間は曲を書いて吐き出すんだ。曲が生まれると、それは蝶が羽ばたく瞬間なんだよ。俺たちが抱えている痛みの一部が解放されるんだ。
-「Red White & Blue」はアンセミックなナンバーですね。タイトルは星条旗のことを指しているのでしょうか?
そうだ。俺たちはアメリカのバンドで、他でもないアメリカでビッグになった。ここでは俺たちは受け入れられているし、俺たちは全員極めてアメリカ的なアメリカ人だからね。この国は本当にメチャクチャになった。単にパンデミックだけのせいじゃない。パンデミックはこの国の憎しみに火をつけて、民主党と共和党、黒人と白人に分断した。トランプ前はすべて良かったのにだ。ドナルド・トランプがこの国の大統領になった。俺はそれが良かったとも悪かったとも言わない。俺たちは政治的なバンドじゃないし、「Red White & Blue」は政治的な曲じゃない。この曲のポイントは、どんなやつがこの国を治めていようとも、進歩はしているものの同じ過ちを何度も何度も繰り返しているということ。俺たちには選挙で1票を投じる以外どうすることもできないけど、やつらが何をしようとも、大統領が大っ嫌いでも、俺たちはこの国を支持するってこと。彼(Sully)は、政治的にならずに愛国心を示そうとしたんだ。
-「Truth」はピアノやストリングスを用いた壮大なバラードで、ライヴでも新たなハイライトとなりそうな楽曲ですね。
これは、彼が経験した失恋についてだ。フレッシュでリアルで、彼が歌ったくだりの一部を聴いて俺は、"Wow! お前、みんなに全部ぶちまける気かよ!"って思ったね。こんなふうに失恋の気持ちを世間に向けて吐き出すことを恥ずかしいと思わずにやることが、ヒット曲を生むんだと俺は思う。"彼は作り話をしているんじゃないから、あの感情は本物だ"って思えるんだ。