INTERVIEW
TABOO
2022.09.08UPDATE
2022年09月号掲載
Member:Christoffer Stjerne(Vo)
Interviewer:菅谷 透
北欧デンマークを代表するハード・ロック・バンド PRETTY MAIDSの結成メンバーとして知られるギタリストのKen Hammerと、同国の新鋭で日本でも人気のロック・バンド H.E.R.O.のフロントマンでもあるヴォーカリストのChristoffer Stjerneが、新ユニット"TABOO"を結成! このたびリリースされるデビュー・アルバムは、モダンさと懐かしさを併せ持ったサウンドを軸とした、世代を超えて親しめる普遍的ハード・ロック作品に仕上がっている。本ユニットの成り立ちや作品について、Chrisに語ってもらった。
俺たちは世代が違うし、それぞれの人生で今まで聴いてきた音楽も違う――でもハード・ロックとメタルという共通の土壌があったんだ
-H.E.R.O.では何度か取材していますが、今回はTABOOとしてのインタビューということで、まず本ユニットの成り立ちからうかがえればと思います。PRETTY MAIDSを初めて知ったのはいつごろのことなのでしょうか? 子供時代に聴いたりしていましたか。
実は、子供時代はそんなにPRETTY MAIDSを聴いていなかったんだ。もちろんPRETTY MAIDSはデンマークでビッグな、ハード・ロックの名物だから、「Please Don't Leave Me」(1992年リリースの4thアルバム『Sin-Decade』収録曲/John Sykesのカバー)なんかはデンマークじゃ人生で必ず通る曲なんだ。よそでもたぶんそうだと思うけどね。ただ、俺自身が初めて彼らに会ったのは日本だったんだ。
-彼らが来日していたころ、H.E.R.O.も別のイベント(2018年の"HOKUO LOUD NIGHT")で来日していたそうですね。
そう、俺たちは東京でショーケースに出ていた。俺はPRETTY MAIDSのベーシスト(Rene Shades)とちょっと知り合いなんだけど、彼からテキスト・メッセージが来て"ライヴを観られなくて申しわけない"って書いてくれていたんだ。"俺たちは今東京にいるから、あなたが来ることはもともと想定外だったよ"と返事したら、"俺たちも東京にいるから観においで"と言ってくれた。たしかCLUB CITTA'だったと思う。それで観に行ったショー("Back To The Future World -30th Special Maid In Japan-")が、俺にとって初めて観たPRETTY MAIDSのライヴだったんだ。
-初めてが日本だったんですね!
ああ、日本だったんだよ!
-コンサートを観てどうでしたか? 日本のファンも盛り上がっていたと思いますが。
ぶっ飛んだよ。それまでPRETTY MAIDSは控えめに言って......昔の......"恐竜みたいなバンド"という印象だったんだ(笑)。
-(笑)大ベテランですからね。
そうなんだよ。だから会場に着いても、どんなライヴになるのか見当もつかなかったんだ。だけど演奏が始まったら"ワオ!"という感じだったよ。最高に素晴らしかった。本当にすごくて、なんてショーだ! と思ったね。今でも思い出すよ。
-そのときすでにKen(Hammer/Gt)には注目していたのでしょうか?
いや、全然。当時は知り合いじゃなかったしね。楽屋で挨拶したけど、一緒に過ごした時間は正直言ってベーシストのReneのほうが長かった。彼とは知り合いだからね。まぁ、そんな感じでPRETTY MAIDSと初めて出会ったんだ。
-ではどういういきさつで、今回Kenとプロジェクトを結成することになったのでしょうか。
たしかFacebookのメッセージ機能か何かで、共通の友人から連絡が来たんだ。その人はコペンハーゲン在住のソングライターでプロデューサーでもあるんだけど、"やぁChris! Ken Hammerに君の電話番号を渡していいかい?"と聞かれた。"ぜひ"と返事したらKenから電話がかかってきて、"曲を作りたいんだけど何かやる気ある?"って聞かれたんだよね。それで会って、一緒に曲を書き始めたんだ。でも、何に使う曲なのかその時点で俺はわかっていなかった。Kenが自分のソロか何かで俺をソングライターとして使いたいのかな? なんて思っていたんだ。でもわりとすぐに3、4曲できて、だったらバンドみたいな感じでやってもいいんじゃないかという話になった。そんな感じで始まったんだ。
-アプローチはKenからだったんですね。もしかしたら彼のほうが、日本で出会ったときにあなたに目をつけていたのかもしれませんね。
それはわからないけど......でもお互い日本から戻ってそう経たないうちに、コペンハーゲンで結構大きなイベントがあって、H.E.R.O.がPRETTY MAIDSの前座を務めたんだ。もしかしたらそのとき目をつけてくれたのかもしれないな(笑)。
-そしてTABOOを結成しました。ユニークな名前ですが、どのようにして決まったのでしょうか?
実はまったく覚えていないんだ(苦笑)。Kenがどこかの時点でTABOOという名前をふと出してきたような気がするんだけど......クールな響きがすると思ったらしい。"TABOO"という単語には、ソングライティングのネタになりそうなことがいっぱい詰まっている気がするんだ。いろんな題材やテーマがあるからね。今回そうできたというわけではないけど、この先もしかしたら世の中の様々な"タブー"を掘り下げる、なんてこともできるかもしれない。響きも字面もクールだし、実際書いてもみて、いいじゃないかと思ったよ(笑)。
-ちなみにKenからはいつ連絡があってプロジェクトが始動したのでしょうか。
電話があったのは、デンマークでコロナ禍のロックダウンがあった......(2020年の)6月だったかな。始動したのはたぶん2020年の秋ぐらいだ。
-ということはH.E.R.O.の『Alternate Realities』(2022年3月リリースの3rdアルバム)と並行していたのでしょうか。
そうだね。同時進行で曲を書いていた時期はあったよ。ただ、TABOOのほうはデッドラインがなかったから、時間ができたときに落ち合って曲を作っていたんだ。それが最終的にフル・アルバムになった。
-最初はプロジェクトに発展するかわからなかったんですよね。
そう、Kenがひとりで何かやるのかなと思っていたからね。自分はその手伝いをしているだけだと。
-そうしてできた本作では、懐かしさとモダンさを併せ持ったようなハード・ロック・サウンドが展開されています。この音楽性は、もとから決まっていたのですか? それともセッションの中で徐々に定まっていったのでしょうか?
うーん......なんだか、初めから"そこにあった"ような気がするんだよね。Kenは自分らしいことをやっていたしね。俺たちは世代が違うし、それぞれの人生で今まで聴いてきた音楽も違う。でもハード・ロックとメタルという共通の土壌があったんだ。だからハード・ロックのギター・リフを考えてそこから曲を書いていく、というのがすごく楽にできた。お互い相手のアイディアに対して超オープンだったし、すごく楽だったよ。
-Kenとは結構歳が離れていることになりますが、すぐに打ち解けられましたか?
そうだね。Kenはいわゆる"心が若い"人なんだ。まぁ、俺もものすごい若者ってわけじゃないけど(笑)、すごく楽になれる人なんだ。歳の話なんてしたこともなかったね。"じゃあ、(曲作りを)やるか"みたいな感じで。
-自然な流れで制作が進んでいったんですね。
そうだね。お互いに挑戦するとかそういうことは一切なかった。ただKenが再三言っていたのは、"PRETTY MAIDSみたいに聞こえる曲は作りたくない"ということだったね。おかげで俺も自分らしさを発揮することができたよ。俺はPRETTY MAIDSタイプのソングライターじゃないからね。
-彼にとってはあなたの非ハード・ロックな面が貴重だったのかもしれないですね。どうしてあなたに声を掛けたかとか、どういうところが気に入っているかなど言われたことはありましたか?
H.E.R.O.の大ファンだということは初めから言ってくれていたね。曲、プロダクション、あと全体のサウンドがいいって。まぁ、それが俺の得意なところだからね。というか、それ以外何もできないし(笑)。彼の持ち味である80年代風のソングライティングに、ニュースクールな感じのロック......キーボードを多用したり、ポップなメロディを重ねたり、そういうのを組み合わせたかったんじゃないかな。すごく楽にできたし、ストレートなアプローチだったよ。
-実際にKenと共作を行ってみて、どんな気分でしたか? 楽だったとのことですが、いい雰囲気で進んだのでしょうか?
もちろん! というか、Kenと楽しい時間を過ごせない人なんてこの世の中にはいないと思うね。俺の知り合いの中でも最高にいい人で、面白い人でもあるから、一緒にスタジオに入ってギターを鳴らしてそこから何ができるか様子を見る、というのがすごく気楽にできたんだ。こういうリフがあるけどどう発展できるかやってみよう、みたいな感じにね。こっちからの提案も気楽だった。本当にナチュラルだったよ。思うんだけど、特に何か目論見やゴールがあるわけじゃなくてただアイディアを投げ合っているときって、曲を作るのがそんなに難しいことにならないんじゃないかな。
-作詞はご自身が担当したとのことですが、歌詞にはどのようなストーリーを込めましたか?
前回『Alternate Realities』で話したときは(※2022年3月号掲載)、俺が言いたいことがたくさんあったというような話をしたと思うんだけど。今回のTABOOのアルバムではそうじゃなかった。もっと普遍的なテーマで、主に人間関係について、別れとかそういうのについて書いていたね。人生の中で経験する愛の厳しさとか。
-それはすべてご自身のアイディアでしたか?
俺のアイディアだね。自分で書いたものを彼に歌って聴かせて、"いいね。これやろう"なんて言ってもらったりしていたよ。
-気楽なプロセスで良かったですね。
そうだね、すごく楽にやれたよ。まぁ、失恋したときの気持ちってそんなにイジれるものでもないしね(笑)。みんな経験してきたことだし。