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INTERVIEW

THREE DAYS GRACE

2022.05.06UPDATE

2022年05月号掲載

THREE DAYS GRACE

Member:Matt Walst(Vo)

Interviewer:菅谷 透

-今回は喪失がテーマの楽曲がふたつありますね。まず「Lifetime」です。つい先日公開されたMVは竜巻の被害にあった米ケンタッキー州メイフィールドの人々に捧げられています。とても心が痛むシーンがたくさんありましたが、最後に犬が飼い主と再会できたりなど、希望も感じさせる内容でした。

実はBarryが現場から2~3時間行ったところに住んでいるんだ。竜巻のことはあいつから聞いて知った。あの町から、住民の持っていた写真がたくさん飛んできて、あいつの家の裏庭にも何枚も落ちてきたらしい。あの町で起こったことが、この曲の内容に合っている気がしてね。今は情報がすぐに流れていってしまう。ああいう小さい町の出来事だと特にね。だからこの歌で町に光を当てたいと思ったんだ。現地では今も復興活動が続いているし、助けが必要だから、話題にして光を当てたいと考えた。

-カナダのバンドがケンタッキーの竜巻を話題にしているのでどうしてだろうと思っていましたが、Barryがあの方面に住んでいるんですね。

ああ。

-彼は無事だったんでしょうか?

無事だったよ。3時間くらいのところだから、竜巻が直撃したわけじゃないんだ。

-現地の人々から何か反応はありましたか。

ああ、現地でたくさんの人に会ったよ。家や仕事を失くしてしまった人たち。みんな未来に希望を持っていて、復興を頑張っている。命があってありがたいと言っていたよ。たしか80人くらい亡くなってしまったしね。彼らが建てた家とか、何年もあったレストランとか、ずっとあったものもなくなってしまった。悲しいことだよ。でも間一髪で命が助かった人も多かったんだ。地下室に逃げ込んで九死に一生を得たとかね。なかなかクレイジーな状態だったらしい。

-あのビデオは他の場所で天災や残虐行為に遭ってしまった人々にとっても希望の見える内容だと思います。日本でも東日本大震災などの復興活動が続いていますし、今のウクライナの現状を考えても、最後に希望を残して終わるビデオというのはとても大きな意義があるのではないでしょうか。

そうだね。それに曲自体も普遍的な内容だと思う。一生自分とともにあると思っていた人やものを失くした経験は誰にでもあるからね。MVにも本当にたくさんコメントがついたよ。"2年前に母を亡くしました"とか。そういう感情をみんなから引き出しているような感じだね。嬉しさと悲しさがないまぜになったような気分というのかな。泣いているんだけど、感情を出せたから心は満たされる、みたいな。そういう曲は他もあるよね。俺はMY CHEMICAL ROMANCEの「The Ghost Of You」を聴くとそういう気分になる。あのビデオを観ると......ちなみにあのビデオに彼らは100万ドルくらい費やしたらしいけどね(笑)。

-(笑)

それはともかく(笑)、あのビデオを観ると、曲の中の苦しみが伝わってくるんだ。

-続く「A Scar Is Born」も喪失がテーマになっていますが、こちらは自らを奮い立たせ、前へと進んでいくかのようなパワフルな楽曲で、「Lifetime」と好対照を成しているように感じました。

そうだね。こっちは自分の心が壊れてしまったときの感触を忘れないでおこう、という感じかな。人生の中で一番辛い時期を振り返っているんだ。

-「Redemption」は優しく奏でられるアコースティック・ギターのイントロからドラマチックな展開を聴かせる楽曲で、個人的にアルバムのハイライトのひとつだと感じました。

新しい希望を見いだして、より良い人間を目指して未来に向かって進んでいく内容の曲だね。時にはどん底に落ちることもあるけど、しっかり自分を持って、新しい生き甲斐を見つけなければいけないことがある。

-この曲の展開の仕方は、その立ち直りの軌跡のようなものを表しているのでしょうか。

それは間違いないね。

-マイケル・ジョーダンのドキュメンタリー("マイケル・ジョーダン: ラストダンス")にインスパイアされたという「Champion」は、バンドにとっても新機軸だったのではないかと思います。まさに試合前の高揚感を表すような、ラテン・ビートをフィーチャーした楽曲になっていますね。

そんな感じのアンセムを書きたいと思ったんだ。間違いなくそれが狙いだったね。あのドキュメンタリーを観た翌日は頭の中で"チャンピオン"、"チャンピオン"と言葉がぐるぐる回っていた。ああいう選手も俺たちと同じで、努力しないと欲しいものを手に入れることができない。いろんなやつらが引きずり降ろそうとしてきてもとにかく前進し続けないといけないんだ。

-例えば、バスケットボール繋がりでトロント・ラプターズ(※NBAのチーム)が試合前にこの曲を流したらどう思います?

そうなったら最高だね! あと俺たちはアイスホッケーが大好きだから、トロント・メープルリーフス(※NHLのチーム)が使ってくれるのも嬉しいな。

-記事に書いておけば、誰か英語に翻訳して関係者に伝えてくれるかもしれませんね(笑)。

(笑)俺はUFC(※アメリカの総合格闘技)の大ファンでもあるんだ。実はこの曲を書いたときもUFCのファイターたちのことが頭にあってね。勝つまでの間にどんなことを経ているんだろうなんて考えていたんだ。

-控室のウォームアップのときに聴いてくれるかもしれないですね。

そうだといいね。

-「Chain Of Abuse」はご自身にとってパーソナルな楽曲とのことですが、この楽曲の制作背景についてうかがえますか?

あれはたしか......2014年くらいに書いたのかな?

-結構歴史のある曲なんですね。

そうなんだよ。ガールフレンドがそのころにいろいろあってね。それで"You think that everybody hates you but I don't(君は、みんなが君のことを嫌っていると思っている。でも俺はそうじゃない)"と言ってあげたいと思って作った曲なんだ。だからもう心配しなくていいよ、ということだね。

-ご自身がいじめを受けたですとか、そういった過去にまつわる話なのかと思っていました。

まぁ、似た経験をしてしまうことってあるよね。そういう人を身近に見つけたら慰めずにはいられないんだ。その人に寄り添ってあげないとね。

-「Someone To Talk To」ではAPOCALYPTICAを伴奏に迎えています。自身の内面を吐露するようなヴォーカルも印象的ですね。

コーラス部分は俺の兄貴のBrad(Walst/Ba)が思いついたんだ。誰だって話し相手(someone to talk to)が必要だよね。でも秘密を打ち明けられるくらい信用できる相手を見つけることは難しい。

-特に感情を"爆発"させたいと思ったら、そうできる相手を探すのは至難の業ですよね。

ああ。感情の一番深いところを表現できる相手を探すのはね。

-「Explosions」は本当に爆発しているというか、多彩な表情を見せてきた本作のラストに相応しい、壮大なカタルシスを生む楽曲です。最後のサビで変化する部分など、歌詞も非常に興味深い内容でしたが、この楽曲についてもうかがえますか?

これはララバイ(子守唄)みたいな曲なんだよね。

-ララバイですか。

自分らしく生きない理由なんてないってことを説明している歌なんだけど......ほら、俺たちはカオスの中に生まれるだろう? このクレイジーな世の中に生まれるから、せめてこの世にいる間は思い切って楽しもうぜ、みたいな感じかな。

-資料には、あなたに息子さんが生まれたときに最初に歌って聞かせたのがこの曲だとありましたが、本当でしょうか?

本当だよ(笑)。

-歌い掛けながらどんなことを考えていたんでしょうか。その時点でこの曲はすでに完成していたんでしょうか。

ああ、完成したばかりだったよ。それもあってずっと俺の頭の中にロックインされていたんだ。ヘヴィなララバイって感じかな。人生とはこういうことだ、なんて説明しているんだ。

-息子さんにはいいお手本が身近にいるってことですね(笑)。

あはは、そうだといいね。そうだといいな(※微笑む)。

-"自分らしく生きなさい"というような。

そうだね。そうしちゃいけない理由なんてないからね。

-日本盤にはボーナス・トラックとしてGOTYEの「Somebody That I Used To Know」のカバーが収録されています。あの曲がこんなにヘヴィになるとは、と驚きました。カバー自体は2020年に発表されていますが、なぜ同曲をカバーしたのでしょうか?

あの曲が出たときすごく気に入ってね。アコースティック・ギターを手に取るたびにあのフレーズを爪弾いていたんだ。で、ロックダウンになったときに自宅のスタジオに入って自分のバージョンを録音してメンバーに送ったんだ。単なる遊びでね。そうしたらみんな気に入ってくれて、フルのカバーをやろうって盛り上がったんだ。

-GOTYE本人から何かリアクションはありましたか。

本人に音は送ったよ。彼がアプルーヴしてくれたおかげで俺たちもビデオが録れたんだ。

-4月19日からアメリカ・ツアーが予定されています(※取材は4月中旬)。GODSMACK、MOTIONLESS IN WHITE、BLACK VEIL BRIDESなどバラエティ豊かなラインナップになっていますが、ツアーの意気込みを教えていただけますか?

エキサイティングなものになるよ! 今もここのスタジオでリハーサル中なんだ。セットリストをまとめながらね。久しぶりだし、またパフォーマンスができて嬉しいよ。きっといいツアーになると思う。

-パンデミック以来初めてのツアーなんですね。

2019年12月以来だよ!

-アメリカ、北米のあとはたしか9月にヨーロッパですよね。他にも日程が出てきているんでしょうか。

ああ、ツアーし続けるつもりだよ。どこでも行きたいね。

-ちなみに来日はたしかこれまで一度だけでしたよね。

そうなんだよ。本当は2015年に行けるはずだったんだけど、何か事情があって立ち消えになってしまったんだ。でも今度こそはどこかのタイミングでそっちに行きたいね。きっと楽しいツアーになるよ。

-最後に、日本のファンへのメッセージをお願いいたします。

いつも注目してくれてありがとう。できるだけ早くそっちに行って、またみんなに会えることを願っているよ。ずっと応援してくれてありがとう!