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INTERVIEW

IBUKI

2021.11.19UPDATE

2021年12月号掲載

IBUKI

インタビュアー:杉江 由紀

機が熟したということだろう。今年6月に、先行シングル「夢限像-MUGENZOU-」をオリコン"インディーズシングルランキング"ウィークリー初登場6 位に送り込んだIBUKIが、前作『ExMyself』から約3年ぶりとなるアルバム『Storm of Emotion』を、いよいよここに完成させたのだ。12月17日には英国のSetsuzoku Recordsから海外盤もリリースされる予定の今作は、改めてIBUKIが"メタル"というものと正面から向き合った内容となるが、その一方では坂本冬美嬢が歌ったことでヒットした名曲「また君に恋してる」を、小林信一(地獄カルテット)の弾くギターをバックにカバーするという新機軸に挑戦しているところも、実に興味深い。


人というよりはもはや鳥のような音波を発しております(笑)


-ご無沙汰しておりました。このたびは、前作『ExMyself』(2018年リリースの1stフル・アルバム)から約3年ぶりに、新しいアルバム『Storm of Emotion』が発表されることになりましたが、IBUKIさんが今作の制作に着手されたのはいつのことだったのでしょうか?

それがですね。この3年でいうと、実は前半2年くらいずっとあまり制作意欲が湧かない状態だっんたんですよ。

-それには何か理由があったのですか?

2017年にソロになって以降ここまでにはいろんなことをやらせていただいたんですけど、私としてはソロ以外での活動というんですかね。FATE GEARのサポート・ヴォーカリストとして、2019年の秋にロンドンで行われた"Metal Matsuri"に出演したり、小林信一(地獄カルテット/Gt)さんのソロ・アルバム『科学者の真実~Galileo Galilei~』や、ギタリスト MIYUさんのソロ・アルバム『Meta-Loid』で、ゲスト・ヴォーカルとして歌わせていただいたり、あとは舞台"魔界"のアルバムでの「鬼哭の章」と「魔界第二章 我絶唱せり」ですとか、東方メタル・サークル SOUTH OF HEAVENの作品にも参加させていただいたんです。そうした外部での経験がいずれも自分にとって新鮮だったり楽しかったりでして、もしかしたらそれでソロとしての曲を作りたい! という気持ちがちょっと落ち着いてしまっていたところがあったのかもしれないですね。

-ここまでの3年のうち前半2年がそのような状態だったとすると、おそらくソロに向けてのギアが入ったのは1年くらい前だったことになるかと思います。その際、何か具体的なきっかけのようなものはあったのでしょうか?

ソロ以外での様々な経験をさせていただいたうえで、自分のヴォーカリストとしての個性というものを、改めて見つめ直していくことができたときに、やっぱり"ソロの曲が作りたいな"となったんですよね。明確なきっかけはそこだったと思いますし、今年の1月にはデモ音源も次々にダーッとできていくことになりました。

-今年6月には、結果的にアルバムの先行シングルとなった「夢限像-MUGENZOU-」が発表されていましたけれど、あの時点ですでにアルバム自体も制作されていたわけですね。ちなみに、あのタイミングで、久々の音源としてまず「夢限像-MUGENZOU-」を世に放った理由についても今さらですが、教えていただけますと嬉しいです。

年末にはアルバムも出したいという気持ちで制作を続けていたなかで、あの「夢限像-MUGENZOU-」に関しては久しぶりのソロ音源であるだけに、ここからのIBUKIにとっての代表曲になっていくようなインパクトのあるものを、シングルで打ち出したい、という思いが強くあったんですね。それで、あの曲では、意図的にIBUKIにとっての武器であり個性であるハイトーンを、前面に打ち出していたんですよ。

-IBUKIさんは"4オクターブのパワフル・ヴォイス"とも言われていますけれど、たしかに「夢限像-MUGENZOU-」は、そのポテンシャルをいかんなく発揮されている楽曲ですものね。あの声の高さには本当に驚きます。

ありがとうございます。人というよりはもはや鳥のような音波を発しております(笑)。

-あはは(笑)。IBUKIさんからしてみると、同業者に対して、"ここまで歌えるものなら歌ってみろ"くらいの気持ちも実はあったりして!?

まぁ、そういう挑戦的な気持ちもまったくないわけではないですね(笑)。自分にしか歌えない歌を表現したいという思いは常に持っていますので。

-では、今回そうした気持ちもありつつアルバムを制作されていった際に、IBUKIさんが今作の中に詰め込みたいと考えていらしたのはどのような要素でした?

シングルが約2年半ぶりで、アルバムは約3年ぶりだったので、当然アルバムもIBUKIらしさをはっきりと体現するものじゃないといけないと考えていましたね。そして、その軸になる要素として重視していたのは"メタル"でした。ヴォーカリスト、IBUKIのソロ・アルバムであると同時に、メタルのアルバムとしてヤバいものを作りたかったです。

-前作『ExMyself』と今作『Storm of Emotion』の大きな違いは、やはりそこですよね。前作はバンド時代の経験を踏まえつつも、ソロ・ヴォーカリストとしての可能性を追求した内容となっておりましたが、今作はある意味でどの曲も先祖返りしたかのようにメタメタしいものが揃っている印象です。

そこはここまでの時間でいろいろと考えたことが反映されている部分で、結局あの2年くらいの間に様々な活動をさせていただいたことにより、客観的な視点から"自分に求められているのは、ハイトーンや激しさなんだな"ということに気づけたのが大きいんです。だから、この約3年ぶりのアルバムでは何よりも一番に、リスナーさんが求めてくださっているIBUKIの歌を提供しようと考えました。

-なるほど、そういうことでしたか。ただ、それは少し穿った見方をすると今作『Storm of Emotion』では、"自分自身がやりたいことよりも、ユーザー・ニーズを優先した"ということにもなるように思えます。その点においては、曲作りなどの面で難しいところがあったりはしませんでしたか。

実際、そこはちょっと葛藤というか不安を感じたところもありましたね。もちろん、メタルも自分にとってはやりたいことのひとつではあるんですけど、前作『ExMyself』でやったような、90年代っぽい匂いのするポップスもすごく好きなものなので、自分がメタルに振り切った曲作りというのを果たしてどこまでやれるのか? という部分での心配はちょっとあったんです。ただ、そこはメタラー歴もそれなりに長くて、メタル・ヴォーカリストとしてのキャリアもあるわけなので(笑)、今回は自分にとってのメタルというものをできるだけかたちにしていくようにしました。

-ただですね。その"自分にとってのメタル"というキーワードが出てくると、人によってはデス・メタルこそメタルだと言う人もいれば、メロスピこそメタルと主張する人もいるわけで、何をもってメタルとするのかは千差万別でもあると思うのですよ。IBUKIさんにとってのメタルに欠かせないファクターとは何になりますか。

メタルの定義は本当にいろいろあると思うんですけど、自分がやるってなったときに大切にしたかったのは、ハイトーンやシャウトがあるもの、激しさや疾走感を持ったものというところでしたね。

-とはいえ、今作にはハイトーンが素晴らしい「夢限像-MUGENZOU-」のようなタイプの曲だけではなく、3曲目の「悪魔のロンド」のように、一転してロー・ヴォイスを生かしたものも収録されております。このあたりの芸幅の広さもさすがですね。

「悪魔のロンド」にも終盤にはハイトーンのシャウトが入っているんですけど、やっぱりメタルを意識したアルバムとは言っても、全体的に一本調子になってしまうことは避けたかったので、中にはちょっと毛色の違う曲も入れたかったんですよ。

-なお、今作におけるリード・チューンは1曲目の「See You Again」となるそうですが、今回この曲をこのようなかたちでピックアップした理由についても教えてください。

この「See You Again」は、今回のアルバムにおけるメタルというテーマを、一番わかりやすく表現した王道的メロスピ曲だからです。

-メロディからワビサビを感じられるところはジャパメタ的でもありますね。ただ、歌詞に関しては「夢限像-MUGENZOU-」などはカッコいい言葉が並んでいるのに対し、こちらの「See You Again」は内容的にあまりメタル風ではないというか、どこかJ-POP的な雰囲気も感じられる仕上がりになっている印象なのですが、この音にこうした歌詞が乗ることになったのはなぜだったのでしょう?

それはこの曲のメロディ自体に対してのインスピレーションで歌詞を書いていった、というのがかなり大きいです。サウンド自体は確かにメタルなんですけど、メロディそのものはきれいなものになっているので、そこから物語としては別れというものを描いていこうと思ったことで、こんな歌詞になりました。自分にとっては、プライベートで起きた出来事をモチーフにした詞でもあります。