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INTERVIEW

IBUKI

2021.11.19UPDATE

2021年12月号掲載

IBUKI

Interviewer:杉江 由紀

-そのせいか、全体的に「See You Again」は説得力のある仕上がりになっていますものね。また、4曲目の「Achromatic Sun」は非常にドラマチックな曲ですが、これはどのような思いを持ちながら作られたものでしたか。

この曲は結果としてサウンドは激しくなったんですが、リズムとしてはメタル的なツービートではなく8ビートの曲になってます。歌詞はギリシャ神話のイカロスがテーマで、気持ちの面では"イカロスのように溶けてしまってもいいから、太陽に近づきたい"という姿勢で書いたものですね。たとえ何しからの犠牲を払うことがあったとしても音楽活動を続けていきたい、という強い想いをここには込めました。

-その強い想いが生まれたきっかけはなんだったのですか?

私はそれまでずっと音楽だけを10年以上やってきていたんですけど、このアルバムを作り出す前の2年くらいの間は外部での活動をやりながらも、少し音楽をお休みしてまったく他のことをやってみた時間もあったんですね。例えば、キャンプに行ってみたり、あとは鳥カフェに行くのにも結構ハマっちゃったり(笑)。結局、自分でもインコを飼うようになったくらいなんです。

-そうした経験は、人間としての視野が拡がりそうですね。

それは自分でもすごく感じました。世の中には音楽以外にもいろんな楽しみがあって、いろんな人がいて、いろんな価値観があって、いろんな素晴らしいことがあるんだということを知れたことで、人間的に成長できたところが結構あったみたいで、アルバムに向けての曲を作り出したときに、そのことが自然と反映されたんじゃないかと思います。リリースの期間としては3年空いてしまったんですが、ここまで過ごしてきた時間は、自分にとって必要なものだったんだなと改めて感じてもいるんです。

-「Eternal Rain」はエッジ感のあるハード・チューンですが、この曲を作っていくうえでの狙いはなんでしたか。

これは、私の中の90年代ポップスが好きという部分が出た曲ですね。2017年に出したIBUKIとしての1stシングル(『Rise / We are No.1』)に入っていた「Rise」も、まさに90年代+メタルという感じの曲だったんですけど、これはその延長線上でできた曲になってますね。ある意味、今回のアルバムの中では最も"THE IBUKI"なものに仕上がっていると思います。シンセの入れ方や、ルーブの入れ方に90年代っぽさを漂わせているんですよ。

-なおかつ、この「Eternal Rain」には派手めのギター・ソロも入っておりますね。前のアルバムでは、意図してギター・ソロは省いたと解説されていた曲もありましたけれど、今作ではこの曲を筆頭に各曲でギター・ソロが導入されているという点でもメタル的です。

まさに、メタルとしての音を作っていくうえでギター・ソロは重要なところでした。今回のアルバムでは、歌以外にもギター・ソロで見せ場をしっかり作っていく必要性を感じていましたし、特に「Eternal Rain」は、構成上ソロを長めにしたほうが次に繋がりやすかったというのもあって、わりと派手な展開になりました。

-「Ancient Engagement」はコーラス・ワークが特徴的な曲になっておりますが、IBUKIさんがこの曲の中で大事にされたのはどのようなことでしたか。

これも90年代っぽい匂いのする曲にしたくて、イメージしていたのはアニソンでしたね。そんなに詳しくはないんですけど、イントロ部分なんかは特に、"ガンダム"シリーズのアニメとかに似合いそうな感じだな、と自分で作りながら感じてました(笑)。たぶん、闘いっていう部分で、この曲の激しさとロボット・アニメには繋がりがあったのかもしれないです。コーラス・ワークは普通の3度ハモりとかではなく、それこそ90年代に広瀬香美さんが「promise」でやっていたような、独特のハモり方をリスペクトしたかたちで入れてみました。曲調自体はまったく違いますけど、手法を取り入れたという感じですね。

-かくして、今作『Storm of Emotion』は、ここまでメタル・チューンが連打されてきたことになるのですけれど、それでいて最後を締めくくるのはなんと演歌歌手である坂本冬美さんがフォーク・グループ、ビリー・バンバンのカバーをしたことでヒットした「また君に恋してる」で、ここではIBUKIさんがギターとして小林信一さんを迎えつつ、さらに新たなかたちでカバーされております。そもそもこの曲を歌うことにしたのはなぜだったのですか?

これはIBUKIとして初のカバーになるんですが、カバーというのはヴォーカリストとしての技量が問われるものであるだけに、ここで今までになかった挑戦をしちゃいたかったんです。私は以前から坂本冬美さんが大好きで、この曲も坂本冬美さんがカバーされているのを聴いて初めて知ったんですよね。初めて自分がカバーをするなら絶対にこの曲しかない! っていう気持ちで決めたのがこの曲でした。

-大好きな先輩歌手の持ち曲をカバーするのにあたり、IBUKIさんはプレッシャーを感じたりはしませんでした?

この曲を選んで歌う以上、どうやっても先輩と比べられるのは間違いないことなので、どうアプローチすればいいのかな? という点ではちょっと考えました。少なくとも"やっぱりあっちのほうがいいよね"となってしまったらダメなわけですし、私としては"こっちもいいよね"と感じていただけるところに持っていきたくて、最初はそれこそ自分の個性であるハイトーンや、パワーを前面に出していこうかなと思ったんですが、試しに歌ってみたらそれでは太刀打ちできなかったんですね。それで、歌詞やニュアンスを大事にした歌い方をしていくことで、なんとか自分なりの「また君に恋してる」をかたちにすることができました。

-随所で"こぶし"が回っているところが素敵ですよ。

ありがとうございます。こぶしは意図して回しました。個人的に演歌は好きで坂本冬美さんだけではなく、石川さゆりさんとかも歌うので、こぶしを回すのは意外と慣れてたりするんです(笑)。

-初めてのカバーを経験されて、得られたことがあるとするとそれはなんですか?

メタル・ヴォーカルの域を超えたところで、本当の意味での歌の上手さを追求していくにはどうしたらいいのか? という勉強ができましたね。いちヴォーカリストとして、1段ステップアップすることができたんじゃないかと思います。

-さて。それだけ丹精込めて仕上げた今作に、IBUKIさんは"Storm of Emotion"というアルバム・タイトルを冠されました。ここに込めた想いについても、ぜひ解説をいただけますでしょうか。

これは感情の嵐という意味のアルバム・タイトルなんですが、今回の作品には曲にも詞にも歌にも、自分の気持ちや感情がものすごくぎっしりと詰まったものになったんですね。それで、このタイトルを付けました。

-なんでも、今作『Storm of Emotion』は、12月17日に英国のSetsuzoku Recordsから海外盤もリリースされるそうですし、このアルバムは、聴いてくださるいろいろな方たちの感情をも揺さぶる作品になったのではないでしょうか?

だとしたら嬉しいです。歌って歌う側の感情がこもるものだし、歌そのものが歌う人間の生き様として伝わるものだとも思うんですが、もちろんみなさんのハートをいかに揺さぶれるか? ということも私にとっては大事なテーマです。

-12月6日にはライヴ(渋谷SPACE ODDにて開催する"IBUKI 2nd Album Release LIVE 「Storm of Emotion」")もあるそうですから、そちらでもIBUKIさんのエモーショナルな歌をぜひ堪能させてください。

はい。アルバム自体が約3年ぶりなだけに、今回はみなさんとお会いできる機会も作りたいなと思ってライヴも予定しているので、久々にライヴの場でみなさんと大事な時間を共有できたらいいなと考えてます。一緒に楽しみましょう!