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INTERVIEW

特撮

2021.05.11UPDATE

2021年05月号掲載

特撮

メンバー:大槻 ケンヂ(Vo)

インタビュアー:石角 友香

コロナ禍に突入する直前に書かれた曲を発端に"こんな時代もあった"と振り返るはずが、リリースの時期を迎えてもまったく収束の見込みがない現在。どんな表現者もこのパンデミックの影響から逃れられない表現を打ち出しているが、さすがにそこは演奏やアレンジ、そして大槻ケンヂのストーリーテリングを誇る特撮。この未曾有の経験をバンド史上最もストレートなロックンロールに昇華したり、プログレ・マナーを自在に操ったり、あくまでも音楽的に着地する。間違いなく大作であり、時に素直に泣ける曲もある特撮というバンドの特異性も示唆していると言える本作について大槻にじっくり話を訊いた。

頑張れロックにならないように、いかに人を励まし、励ます曲によって自分も励まされるか? っていうのをずっと考えていて


-前作『ウインカー』(2016年リリースのアルバム)には指1本で右でも左にでも行けてしまう人生の選択の危うさのような諸行無常感がテーマにありましたが、今回は現実がSFのような時代を迎えていて。大槻さんとしてはどんな気持ちで暮らしてらっしゃいますか?

どんな気持ちか......やはり"困ったな"という部分と、妙な開放感もなくはないですけど。人と接するとやはりいいことばかりじゃないと思うんですよ。というときに、人と会わなくなったというのはなんとなく開放された気持ちもなくはないですね。だから閉鎖感と開放感が入り混じったような感じです。

-前作の時点で、すごく2010年代らしい特撮にしかできないことをやってらっしゃったので、5年3ヶ月も空いた気がしないんですよ。

そうですね。で、今回どんな内容になるのかなと。『ウインカー』の1曲目の「荒井田メルの上昇」っていう、ちょっと落ち着いたトーンの曲があるんですけど。ああいう曲ばかりを集めたらどうかということを特撮Zoomミーティングで言ったんですけども、それも踏まえて、とりあえずデモ・テープ出しをしようと言ったときに結構な数の曲が集まって。それが面白かったですね、意表を突く曲が多かったな。「喫茶店トーク」ってのは、こういう曲は1曲あるだろうなと思ったんだけど、それ以外の曲は"あぁ、こんな曲を!"っていう。どの曲もデモ・テープの段階から驚きに満ちてましたね。それを2月にプリプロダクションで、4~5日で煮詰めてって感じでしたけど、思ったよりもデモ・テープ通りになったような気が僕はしますね。アレンジ以外はデモ・テープのときからわりと完成されてたような気がするな。

-完成したものを聴かせていただくと、ある種のロック・オペラ的なものを感じるんですけども。

今、アルバムで聴くってことがあんまりないっていうじゃないですか。CDそのものがなかったりするから、そういえば僕も最近CDというものを――こんなこと言うとアレだけど(笑)、買ってないなって。だいたいSpotifyで、シャッフルで聴いてるなと思ったんですけども。それでもまだアルバムでコンセプトをまとめてやってみたいなと。でも、コンセプトは作りながら考えてた感じですね。

-なるほど。アルバム収録曲の中にはすでに去年リリースされたCD+Blu-ray作品『ブルー・スリー』に入っていた「オーバー・ザ・レインボー~僕らは日常を取り戻す」も入ってますね。

うん。この曲に関してはコロナ禍の直前、去年の2月に書いたんですけども。そのとき、まだ新型のウイルスっていうのは、ちょっと言われ始めた頃で。そしたらなんかその後の世界、日本を預言したかのようなことになってしまったんですけども。たまに僕は預言めいた曲を書くんですね。自分の書いた言葉通りに世界が動いてしまう、恐ろしい預言者めいたところもあるんですけど、ただその「オーバー・ザ・レインボー~僕らは日常を取り戻す」に関しては僕らが日常を取り戻すという曲で。この『エレクトリック ジェリーフィッシュ』を出す頃にはもうコロナが収束して、"あぁ、これはコロナ禍の頃の、ステイ・ホームの頃の気分の歌だね"と、書いた時期が1年前だから、やっぱりちょっとネタ的に古くなったねってなるかな? と思ったんですけど、現在進行中になりましたね。もうリアルの曲になったなと。そこは僕も預言できませんでした(苦笑)。

-この曲って"オズの魔法使い"がモチーフになっていたりするんでしょうか。

そうです。まさに"オズの魔法使い"です。"オズの魔法使い"とか"不思議の国のアリス"とかを子供たちが、と言っても10代かな。子供たちが演劇したのとかが結構YouTubeに転がってるんですよね。それで、"オズの魔法使い"は竜巻とか、犬のトトとかをどういうふうにやるか、あと、アリスで大きくなったり小さくなったりをどう表現するか。

-お芝居で。

すると、子供たちの学校とか劇団によってみんな違う。それが面白いなと思って、一時期よく見てて。"オズの魔法使い"はかかとを3つ鳴らすとドロシーが日常に戻るって話ですよね。で、"お家が一番"ってテーマもあったので、ステイ・ホームの頃に"オズの魔法使い"っていうのはちょっと再評価されたところがあったと僕は思うんですね。それで書いた歌詞だったような気がします。

-みなさんはさんは自由にデモを作ってきたんですか?

自由でしたね。記憶の相違があるんですけど(笑)、昨日別のZoomのインタビューで"あれ、そうだっけ"って話になったんですけど、僕の記憶では8分ある「歌劇「空飛ぶゾルバ」より「夢」」って曲は最初1分位のナッキー(NARASAKI/Gt)のストレートな曲のデモの一片しかなかったんですよ。で、1曲ぐらいこういうストレートなパンクの曲があったら面白いねって言ったら、ナッキーが"いや、実はこの曲はプログレなんです"って、翌日になって8分で何度も展開する壮大な曲の全部を作ってきて、僕はもうびっくりしたっていう。でもナッキーは"最初から言ってある"って言ってたな、昨日。

-(笑)

結果的に8分間ある壮大な曲になりましたよね。さらに特撮のメンバーが全員で歌いまわすっていう。

-これは8分の長尺だったから歌いまわすことになり、大槻さんの歌詞もこういう、ほんとにお芝居みたいな内容になったのかな? と。

あぁ、そうですね。8分間の曲を聴いてもらうっていうのはいろんな、あれやこれやをしないといけないんですね。で、それでメンバーにもちょっとした語りであるとか、歌ってもらったりしたんですけど、エディ(三柴 理/Pf)が、芝居がうまいですね。

-最初に歌詞がついた曲はどれですか?

最初についたのは「喫茶店トーク」です。2月の26日から詞を書き始めて、27日に「フィギュア化したいぜ」をもう書いていて、3月1日に「ミステリーナイト」、2日に「果しなき流れの果へ」を書いて、ちょっと飛んで、7日に「ウクライナー」、8日に「電気くらげ」か。今回歌詞書くのがほんと早かったですね。それは曲や演奏がいいからだと思うんですね。そこで引っ張られるものがあるというか。

-「喫茶店トーク」って、いわば「荒井田メルの上昇」的なAORっぽいところがありますね。

ちょうどここ1~2年、AORブームがきてますよね。日本のAORというか。ていうかね、僕思ったんだけど、ステイ・ホームの最中に僕はほぼ毎晩、月~木で夜の10時から12時ぐらいまで聴いてるラジオ番組があるんですよ。それが基本AORとかR&Bとか、ちょっと懐かしいオシャレなのばかり流すんですよね。それをずっと聴いてたから洗脳されたかなっていうところもあるんですけどね(笑)。

-(笑)世間的には海外で松原みきさんの「真夜中のドア~stay with me」が......。

あ、「真夜中のドア~stay with me」ね! えっとこのラジオ......ちょっといいですか(調べる)。"大西貴文のTHE NITE"って番組で、この番組が面白くて。大西貴文さんが体調を崩されて、今、尾道のほうで静養してるんですけど、番組は去年のものをずーっと順繰りに流してるんですよ。だから今がね、5月ぐらいのことを言ってるんですけど、曲と曲の間に"ステイ・ホームがね"みたいなことを言ってて、ちょっとリアルタイムマシーンみたいな。

-へー。約1年前の話なんですね。

11ヶ月前ぐらいなのかな。それはそれとして、僕は小坂 忠さんの『ほうろう』ってアルバムとか、落ち着いた大人の洒落たロックみたいなものをやってみたい気持ちがあったんですよね。それが一番出たのが「喫茶店トーク」かもしれない。この「喫茶店トーク」っていうのはその昔、"週刊ファイト"というプロレス新聞がありまして、そこに井上義啓編集長の"I編集長の喫茶店トーク"っていう、昭和プロレスファンの目線で平成プロレスを語る面白いコラムがありまして、その中でI編集長がプロレスを通して、"底が丸見えの底なし沼"っておっしゃったんです。だからまったくこの曲は"週刊ファイト"なんです。

-おぉ、そんなところにネタが......そしてアルバムの曲調は実に様々で。

僕はこの「フィギュア化したいぜ」っていうのはわりと気に入ってますね。

-この曲は泣けますね。

泣けますね。「フィギュア化したいぜ」は最初"ソフビ化したいぜ"だったんですけれども、立ち上がる姿を歌うんですが、立ち上がる姿ってあんまりソフビになってないんで。だから、"そうだな"と思ってフィギュアにしたんですね。

-この曲はシンプルでアンセミックなハード・ロックですね。

アメリカン・スタジアム・ヘヴィ・メタル、スタジアム・ロックですよね。あのミドル・テンポな感じとか。だからデモの段階とか、スタジオで作った段階では、Sammy Hagarがいた頃のVAN HALENじゃないけど、そういう感じだったんですけどね。

-いや~、フィギュア化することで称えたいっていう表現で、なかなか歌えない気がして。

あぁ、だからロックに限らずですけど、音楽には人を励ます、勇気を与える効力っていうのがあると思うんですよね。まぁ、まさにそのことを歌ってる曲も世の中にたくさんあるんですけども、僕はやさぐれた80年代パンク/ニュー・ウェーヴ育ちなので、しかもナゴム(レコード)だったので、人を励ます歌っていうのもその頃、そういうのを歌ったらもう死に値するみたいのあったんですよ(笑)。でもやはり人を励ましたいし、励ます曲によって自分も励まされたい、応援されたいっていう気持ちがあって、そういう曲をどうやって、いわゆる頑張れロックにならないようにできるかな? っていうのをずっと考えていて。何度も試みて。「フィギュア化したいぜ」はそのうちのひとつで、その中でも、とても我ながら"これ、よくできたな"と思いました。