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INTERVIEW

特撮

2021.05.11UPDATE

2021年05月号掲載

特撮

メンバー:大槻 ケンヂ(Vo)

インタビュアー:石角 友香

-ところでこのアルバムって、曲同士の中で出てくるワードが作用しあってて。「電気くらげ」で登場したヴォネガットは「ウクライナー」で"猫のゆりかご"という小説名も出てきます。

出てきますね。その頃ちょうど読んでたんですよ。

-全部読んじゃったんですね(笑)。

持ってるものはってことですけどね。ヴォネガットは多作なので全部は読みきれないです。

-カート・ヴォネガットって80年代90年代のサブカル文学少年少女にはマストなアメリカ文学だったと思いますが。

らしいですね。僕は高校の頃にハヤカワ文庫SFの1冊として"猫のゆりかご"を読んだんですね。それで、その頃カート・ヴォネガットJr.が世界でどういう位置にあるかも知らなくて、SFのひとつとして読んで。それでその後、話は全部忘れてたんだけど、その頃「猫のゆりかご」って曲を作って。で、どんな曲か忘れちゃったんですけど、猫のゆりかごってバンドと、新・猫のゆりかごってバンドをやってたらしいんですよ。

-覚えてないんですね(笑)。

だからよほど、影響を受けたんだろうな、その頃は。そのあとに僕、いろいろ歌詞のワードで宗教が出てくる歌詞を何曲か書いていたんですけど、それもたぶん、カート・ヴォネガットJr.の"猫のゆりかご"に出てくるボコノン教っていう架空の宗教、そういう宗教遊びっていうのかな、そこらへんから来てんだなって、この頃再読して気がついたんですね。

-ヴォネガットのSFの世界ってディストピア小説とかと違って、日常に近い皮肉な感じしますね。

うん、そうですね。そう思います。僕はそんなにたくさん読んだわけではないんだけど。ちなみに「果しなき流れの果へ」は小松左京の"果しなき流れの果に"をやっぱりこの頃読んでたからで。

-面白いです。もしみなさん、気になったら読んでほしいなと思いましたよ。今、Twitterでカート・ヴォネガットのbotとかあって。

ありますよね。いいこと言ってますよね。

-人生って割り切れたりしないみたいなことが書いてありますね。そして「電気くらげ」のアレンジ、これがまためちゃくちゃ面白くて。

面白いですよね。最初、間奏が長いから切ろうって話があって。でもナッキーがちょっとここにソロを乗せてみるって言って、完成してから聴いてみると非常に面白いエフェクトがかかったギター・ソロで、まさに電気くらげ感が出ていて。最初の曲が始まる前の民族的な楽器の音色もいいですね。アレなんだったんだろう? スタジオに持ってきてたんだけど、不思議な楽器でした。

-この曲は、1番はぼんやりした音像で、2番でくっきりしてくるというか。

うん。ナッキーのミキシングっていうか、いい感じでトランジスタな感じというか、くぐもった感じというか、特撮においてはあるような気がするんですよね。それがひとつ、バンドのカラーになってるなと思って。かっこいいですね。

-「電気くらげ」は、内容はアフター・コロナ的ですね。

うん。アフター・コロナで"さぁ、もう一度始めよう"っていうね。だから発売時期はそんなムードになってるかなと思ったんですけど(苦笑)。ね? "緊急事態宣言をさぁもう一度始めよう"、そんなムードで。

-めちゃめちゃ皮肉ですよね。この1年って何? って感じがしますよ。

でも、スタジオ作業のほうで集中できたから、悪いことばっかりでもなかったようにはしてますけどね。アーリー(ARIMATSU/Dr)もいっぱい歌ってくれたし。プリプロでも1曲歌ってたんだよな。「ネタバレの世界で生きてくための方法」は、アーリーは自分で歌って、仮ヴォーカル乗せてくれたんだよな。各メンバーのヴォーカル・スタイルが全然異なるので、次のアルバムなんかではもっと歌ってほしいなと思いました。

-(笑)人の声がいっぱい入ってるのは群像劇感が出ますね。

わりとそういうのが好きですよ、僕は。KISSとか、THE BEATLESもだけど全員が歌ったじゃないですか。なんかああいうのいいですよね。

-超オーセンティックな王道なバンドの例えが出てきましたけど(笑)。でもみなさんのキャラクターが立ってるし。

それはそう思いました。ほとんどNARASAKIが作った曲なんですけど、そこに三柴、ARIMATSUの作った曲が入って、それがすごくいいポイントになってるなと思って。

-最初におっしゃったようにコロナであんまり人と会わない開放感っておっしゃってましたが、やはりバンド・メンバーとなると違いますか?

うーん、バンド・メンバーが音を出したときに変わるっていうのかな。うん。"あぁ、やっぱいつものだな"と思うというか。会ってだべってる間よりも、みんなせーのでバーン! ってやったときに"あぁ、なるほどな"と。"こんなだった"という。やっぱり素晴らしいプレーヤーなので、なんかいい音でしたよ。僕は音楽のことは詳しくないけれど(笑)。

-前作よりもいろんなものが突き抜けたロック・アルバムだなと思いました。

そうですね。あぁ、そう。あと、今、月蝕會議ってバンドをやってるBilly君が、ほんとはギタリストなんだけど、サックスを吹きに来てくれたりとかして。彼とはすごい昔にバンドをやってたので、久しぶりに会えて嬉しかったな。あと、XOXO EXTREMEっていうプログレ・アイドルのお嬢さんたちが来てくださって、コーラスを入れてくれて、いい感じでした。でもみんなこういう時期だからほとんどマスクをしていたので、ただでさえ、若い女の子の顔認識機能が落ちてきてるので(笑)、あとでネットとかで"あ、今日来てくれたのはこの子だったんだ"とか、チェックして。

-(笑)「ミステリーナイト」も最初は教会を燃やしたかったのに、間違ってお寺を燃やしちゃったとか、ちょっと"金閣寺"? みたいな(笑)。

あぁ、"金閣寺"か。ある意味"金閣寺"ですけどね。彼の場合はちょっと似た悲しみがありますよね(笑)。結構、文学的ですよね、彼の悲しみは。アンチ・クライストで悪魔崇拝者になったのに、間違ってお寺を燃やしてしまうという(笑)。で、朝が明けてライヴハウスに行こうと思ったら、そういえばライヴハウスも燃やしてしまっていたのであった、マル。で終わるとすごく文学っぽくなりますよね(笑)。

-なりますなります(笑)。大槻さんの歌詞なので深読みしてしまうんですけど、でも笑えます。そして最初、デモが最初は1分だったのに長くなってしまったという「歌劇「空飛ぶゾルバ」より「夢」」のめくるめく展開。

この歌はね、架空のロック・ミュージカルの中の1曲ということなので、そのロック・ミュージカル自体の全体像を僕はまだ知らないんです。架空だから考えてないんですよ。ロック・ミュージカルそのものを作る前に、その中からの1曲を作った。いや、この歌、どうしようかなって最初に迷いましたね。"バック・トゥ・ザ・フューチャー"みたいな、時空を駆け巡るもの、並行同時世界のものにしたらいいかとか、巨大ロボットもので、エヴァンゲリオンで行けばいいかとか、いやでも結局これは寺山修司だなとか、昔のTHE WHOがやった『Tommy』みたいなことかな、とか、これは悩んで作りましたね。

-結局、ひとりの人が今生ではダメだったことを転生してまた違う国や時代に行ったりして。なんだけど後半にものすごく真理が出てくるというか。

うん。昔、夏の魔物ってグループに8展開して一度も主メロに戻らないっていう、ロック・ミュージカルみたいな曲「コンプレクサー狂想組曲」って曲を書いたことがあるんですよ。それも大変だったんだよな。そのときは枠があったのというか、夏の魔物から"こんな曲にしてくれ"ってオファーがあったからできたのかもしれないけど、今回はその、展開やなんやらだけあって、作詞はお願いしますって感じだったから(笑)、これは最後に書きました。

-大槻さんとしてはこの曲はどう着地したと思いますか? それともこれはこういう物語?

もう架空の、でも今まで僕が見聞きしてきたプログレッシヴ・ロックだとか、寺山修司だとか、いろんなものの集大成みたいな曲です。プログレの詞を書くのは大変だと思いましたね。例えばこの曲、途中でウエスタンになるじゃないですか。ウエスタンだとやっぱりウエスタン調の詞が乗るんですよね。ということは最終的に展開する曲って、展開した先で曲調が変わることによって、だいたい世界漫遊ものになるんですよ。各世界の音楽を見て回ることになるから。そこをなんでいろんな世界に行くのか、なんで時空を移動するのか? っていう理由を探すのが難しいんですよね、こういう詞を書くときは。で、"空飛ぶゾルバ"っていう架空のミュージカルを設定して、なんとかかんとかってことですかね。

-ゾルバがいろんな人生に転生していくことによって、結局、終盤のこの寝てるときと目が覚めてるときに世界の描写がリアリティを持ってくるというか。

うん。ちょっとそれが繋がるかどうかわからないんだけど、久しぶりにレコーディングをして、やっぱりバンドって音を出して合わせるまではただの人の集いなんですよね。そのただの人の集いが音を出すことによって、バンドってものに変化するっていうのが、それこそ同じ人間なのに寝てるときと覚醒してるときで、大いにその人生は異なるっていうのかな。その人の見る世界は異なるっていうのは......なかなか繋がらないですけど、僕は今回この曲を書いて、特撮で演奏して思いましたね。

-すごく今回も聴きごたえがあり――悲しいですけど、世の中に遅れることがない内容になって。

リアルですね。でも、リアルに今の時代のことを歌ってるけど、なんか今のこの不穏な雰囲気から『エレクトリック ジェリーフィッシュ』を聴いてる間だけはなんか離れてもらえたらと思いますね。

-なかなか若いときにそう思えるかわからないですけど、人間誰しもいずれ死んでしまう、この「ネタバレの世界で生きてくための方法」で描かれてる"ネタバレ"って大槻さんにとってはなんなんですか。

やっぱり、アレですよ。すべてのものは、いずれはなくなってしまうということですよね。そういうことですよ。ネタはバレてる、最後はみんななくなっちゃう、なのになぜこう、明日もわからぬ日々を送ってるのかっていうね。

-哲学的な課題ですね。

よく僕の歌詞が文学的だとかおっしゃってくださる方がいて、"いやいや、そんな文学なんて読んだことないですよ。そんな高尚なもんじゃないよ"って言ったんですけど、川端康成を読みますとね、大槻ケンヂの書く歌詞は文学的ですね(笑)。文学っていうのは高尚な、哲学的な美しいことを言うんじゃなくて、もっと人間のダメな弱い部分をどういうふうに言葉に乗せるか? っていう。手法においてはできがいいか悪いかは別にして、"文学的だな、この人"と思いましたもん(笑)。

-ご自分を(笑)。すごい情けない、大丈夫か? ってことを明治、大正の文豪もたくさん書いてますからね。

うん。ひどいもんですよ。読むと。

-あらゆるものは終わりに向かってるんだけど、コロナ禍でそういうことを普段考えない人も考えるようになったじゃないですか。

僕思ったのが、みんなここで思うことが違うじゃないですか。こういう事態になって、それぞれ言うこと、思うことが違う。分断の時代なんて言って。なんて言うんだろうな、持ち場が違うって言うかね。でも利害的なことは抜きにして、ご購入された方にはただただ楽しんでいただきたいという気持ちですね。

-「ヘイ!バディー」なんてめちゃくちゃ秀逸で、励まされます。バディは人間じゃなくても動物でもいいし、なんなら靴でもいいしっていう。

これ、キャリアを顧みて、わりと爽やかなJ-POPなロックで、シングルっぽく短くまとまってるって曲をリードで出すのは初めてじゃないかな。なんかそれぐらい、ちょっと新境地ですね。

-ちなみに今日の大槻さんのバディはなんですか?

今日はなぁ......最近、すごくよく車に乗るようになって、今までスタッフの車に乗せてもらったり、電車に乗ったり、タクシー乗ったりしてたんだけど、なんか最近、すごく運転するようになって。今日も運転してここまで来たので、今日のバディは車かなぁ。

-延期されてたツアーも状況が整えば実現できるかなというところでしょうか。

そうですね。もうどういう状況になっても、僕は練習を始めようとしてて。

-ライヴに向けての気持ちの持っていきようが難しい時代じゃないですか?

でももう腰を据えて、有観客でも無観客でも、お客様が発声OKでもNGでも、やるしかないですけどね。常にやる方向でいるのが重要なんだろうなと、今、思います。お客さんにはただただ痺れていただければいいと思いますね。