INTERVIEW
Slingshot Million2
2021.02.01UPDATE
Member:Yui(Vo) Jun(Gt/Vo) Yahman(Gt) Taso(Ba) Henma(Dr)
Interviewer:山口 智男
男女ツイン・ヴォーカルの5人組、Slingshot Million2がついに1stフル・アルバム『広がれ!HAPPYPUNK!』を完成させた。数々のメンバー・チェンジを経て、最強と自ら語る現在の5人が揃い、自分たちの音楽を定義するコンセプトとして、タイトルでも謳っている"HAPPYPUNK"を打ち出すまでにはそれなりに時間はかかったものの、これまでの試行錯誤と新たな挑戦が全13曲収録の充実作に結実。コロナ禍の中で、明日を笑顔に変える音楽を自分たちは作れるのか!? という葛藤もあったようだが、涙を流しながらの制作を通して、5人が掴んだのは、自分たちの音楽に対する自信と確信だった。
-Slingshot Million2(以下:スリミリ)として再スタートしてから約5年。ついに1stフル・アルバム『広がれ!HAPPYPUNK!』をリリースする現在の心境からまず教えてください。
Jun:やりきりました! もちろん、できあがりもいいです。
Yui:CDとしては3枚目なんですけど、フル・アルバムは初めてなんです。やっとこのメンバーで、こうやったらこんな面白いものが作れるという流れをひとつ掴めました。作りながら13曲をレコーディングするってこんなに大変なんだって思いましたけど(笑)、そこが掴めたのはほんと良かったです。
Taso:いろいろなジャンルを取り入れた曲がたくさん入っています。スリミリに入る前にはやったことがない曲調を、ベースで表現するのが大変でした。
Henma:13曲という曲数をレコーディングするのは初めてだったので、気合を入れて臨みました。練習はつらかったけど、本番は楽しかったです。最初に僕がレコーディングしたドラムに、みんなが音を乗せていって、曲が段々完成されていく過程にはすごくワクワクしました。
Yahman:みんな、のんびり屋なので、2019年に3曲入りのシングル『ORANGE』をリリースしたときもめっちゃ大変で。3曲だけでも苦労したのに13曲なんて録れるんだろうかと不安になったんですけど、プリプロをしっかりやったうえで、みんなで汗かきながらなんとか完成させました。夏休みの宿題みたいにギリギリなんとかなったぜという盤って意味で思い出深い作品になりました(笑)。
Jun:なんか、暗くね(笑)!? 文章になったときのことを考えると、すげぇ心配なんだけど。
Yahman:いや、楽しかったよ。楽しかったけど、大変だったねっていう(笑)。
-それぐらい必死になって作ったということですよね。
Yui:そう、笑顔だけじゃできないから、ね。いいの、聴いてくれた人たちが笑顔になれば。
-さて、そんなスリミリはもともと、2008年にSlingshot Millionとしてスタートしているそうですが、その頃の話は聞いても大丈夫ですか(笑)?
Jun:大丈夫ですけど、結構黒歴史なんで(笑)。その時代にめっちゃ試行錯誤していたんですよ。
-オリジナルのメンバーはJunさんとYuiさんのふたりなんですよね。当時は、"面白いのにカッコいいコミカルコア"と謳っていたそうですね。
Jun:あぁ~、そんなふうに言っていましたね。
Yui:恥ずかしい! 何、コミカルコアって(笑)?
Jun:もともとは僕の趣味バンドから始まっているんです。僕はその前に3ピースのメロコア・バンドをやっていたんですけど、僕が喉を痛めて終わっちゃったんです。でも、音楽は続けたいと思ったので、どうせやるならまったく知らない奴らと新しいことをやりたいと思っていたところにYuiが来たんです。女の子ヴォーカルのバンドはやったことがなかったけど、趣味でやるならいいかなぐらいの気持ちで始めたんですけど、やっているうちにYuiも僕も一生懸命やりたいとなっていったんです。そこからメンバーが入れ替わっていくうちにメンバーの半分が消えて、そのタイミングでYuiに"やめる?"と聞いたら、"やめるという選択肢はない"と言ったので、また1からメンバーを探し始めたんですけど、"バンドの半分が入れ替わっているってもう違うバンドじゃん"ってなったので、"じゃあ「2」にしたらいいんじゃない?"となりました。
-なぜ、そんなにメンバーが入れ替わったんですか?
Yui:リーダーが怖いからじゃないですか(笑)。
Jun:おい、こらっ。たしかに怖かったかもしれないけど。
Yui:今は丸くなりましたけど、その頃はトガっていたんですよ。私も最初の1年間ぐらいは、ほんとに話したくなかった(笑)。
-他のメンバーに求めるものが多かったということですか?
Jun:そうです。
Yui:リーダーが怖かったことはさておき、音楽以外のところに気を取られて、メンバーの気持ちがまとまらなかったっていうところはあるんじゃないかな。
Jun:そうだね。肝心な音楽よりも集客とか、どう宣伝するかとか、そっちばかり気にしていたんですよ。それに加えて、趣味バンドから始めているんで、演奏技術が低かった(苦笑)。だから、活動のレベルが上がってくると、ついてこられなくなっちゃうメンバーもいて。で、入れ替わりに腕のいい子たちが入ってきて、ちょっとずつ成長してきたんですけど、"1"のときに一番考えていたのは売り方とか見せ方とかで。そう言えば、Yuiはコスプレしていた時期もありましたね(笑)。
Yui:あれは血迷ってた(苦笑)。
Jun:そのときはいろいろ考えていたんですよ。どういう音楽性でやっていくとか、こんなのやってみよう、あんなのやってみようとか、いろいろなことを繰り返しながら、見せ方やパフォーマンスもこうしたらいいんじゃないかとか、チャレンジしては失敗して、チャレンジしては失敗してを繰り返しているんで。
Yui:お笑い芸人とコラボしたこともありましたね。
Jun:そんなふうに試行錯誤して、1周回って"2"になって、やっぱ音楽でしょってところに落ち着いたという(笑)。だから"2"になってからは余計なことはしていない。
-そのとき、どんな音楽をやっていこう、あるいは、やっていったらいいとなったんですか?
Jun:特になかったです。思考から始まっていると言うよりは、やりながら、"あぁ、これこれ。これだよね"って収まっている感じです。"スリミリってこういうバンドだから、こういう曲を作ろう"ではなく、メンバーみんなで"こういう曲を作ろうぜ"ってなったら自然に、いいところに落ち着くって形です。特に今の5人になってからは、それが強い。
-だから、ジャンルとしてはメロコアと謳いつつも、ミクスチャーと言ってもいいぐらい曲が多彩なんですね。
Jun:ジャンルという意味では、今回のタイトルにもある"HAPPYPUNK"を打ち出していこうと考えています。だから、"メロコアですか?"と言われたら、"いいえ、HAPPYPUNKです"って言っていこうと思っています。
-"HAPPYPUNK"ってジャンルというか、ある意味バンドのテーマはいつ頃、考えたんですか?
Jun:2~3年前ぐらいですね。自分たちではパンクだと思っていたんですけど、お客さんから"スリミリを聴いていると、ハッピーになれるよね"、"ハッピーになりたいからライヴに来ました"と言われるようになって、"そうなんだ。じゃあHAPPYPUNKなんじゃない?"。"HAPPYPUNKなんてジャンルはないけど、だったら作ればいいんじゃない?"って、そこからメンバーで"HAPPYPUNKってなんなの? どんなのがHAPPYPUNKなの?"みたいな話をいっぱいして、メンバーでそれを共有したうえで、"スリミリはHAPPYPUNKだ"って打ち出していこうってなったんです。
―お客さんから言われる前から、ハッピーになれる音楽をやっていたわけですね。
Jun:そうですね。やっぱり楽しいが一番ですから。前からライヴをやったあと、"かっこ良かった"と言われるより、"楽しかった"と言われるほうが自分たちはいいと思っていたので、"楽しかったよ"と言わせることに全力で取り組んできたんです。そういう意味では、最初からそっちに向いていたのかもしれないですね。
-ところで、メンバー5人の音楽的なバックグラウンドというと?
Jun:Yuiと僕は割と似ているかもしれないけど、バラバラです。
-JunさんとYuiさんはメロコアですか?
Jun:僕はストレートにHi-STANDARDです。
Yui:私はlocofrankからパンクに入りました。それからいろいろ聴いていきましたけど、バンドをやろうと思ったきっかけは10-FEET。あんな楽しいバンド、他にいないと憧れたんです。
Taso:私はバンドを好きになったきっかけはhideでした。パンクではLONGMANが好きです。
Henma:僕は音楽の入りがSTRAY CATSだったんです。そこから遡って、高校時代はElvis Presley、Eddie Cochran、Buddy Hollyを聴いてました。バンドをやる前はリーゼントにして、革ジャンを着て、ツイストを踊っていたんです(笑)。そこからCAROLとか、THE MACKSHOWとか、ロックンロールに行ってからのメロコアです。
Yahman:僕はB'zからロックを聴くようになったんですけど、大阪にいる頃、GALNERYUSってバンドのSYUさんからギターを教わって、メタラーに調教されました(笑)。今回のアルバムにもその要素は結構入っていると思います。一番好きなギタリストは、元DANGER DANGERのAndy Timmons。他にもEddie Van Halenとか、Ritchie Blackmoreとか、好きなギタリストはいっぱいいます。